第107話 不思議じゃない
「いやあ私の恋人ロリコンかと思った」
サアと別れ、シャワーも浴び終えてウェディンと燦覇と合流。
劇場の座席には劣るものの質の良いベンチの一つに腰を下ろしてのウェディンの第一声がこれである。
「ロリコン……」
「ロリコンだあ」
「違うからね燦覇?」
だから大きな声で言わないでくれ。何人か振り返っているから。
サアの大号泣から十分弱、シャワーから出てきたウェディンと燦覇、そこで彼女たちが目にしたのはオレにしがみつくように抱き着いていたサアの姿であった。
オレも拒絶を全くしていなかったから「ロリコンかと思った」発言に繋がるわけだ。
念を押してもう一度言うが、違う。
「それで? ほんの数分の間にずいぶん懐かれたみたいだけど、なにがあったの?」
「ああ、サアには――」
サアからは二人に話しても良いと了承をもらっている。「二人はバカにしたりしないよ」と話したら、オレの信じる人ならばと首を縦に振ってくれたのだ。
「尻尾ねぇ」
「せいぜい数センチだけどな」
首を回して船の外を眺める。
船はまだ雲の上を飛んでいて、鳥たちが飛び交っているのが見えた。
「ウェディンはどう思う?」
「ん~? 良いんじゃない?
世の中には指が六本だったり顔が二つあったりする人もいるんだから、尻尾もってる子がいても不思議はないわ。
軽い軽いなんて言わないわよ? それ言ったらサアのこれまでをバカにするだけだしね。
ただ『不思議じゃない』、私が言えるのはこれくらいかな」
「そっか……そうだな。
しっくりくる言葉だ」
それが恋人の口から聞けたのだから、満足だ。
「燦覇はどう思う?」
「マインは元より人じゃないしオールオッケー」
「ああ、そういやそうだった」
と、ちょっぴり澄んだ雰囲気になったところでアナウンスが流れた。
どうやらもうすぐアメリカ大陸に入るらしい。
オレたちの目的地であるニューヨークまではまだかかるか。
「「「おお」」」
景色が変わった。
海は消えて、大地に。
「もうちょっと海を眺めていたかったけれど」
「ま、帰りもあるからな。
その時に往路でできなかった事すれば良いさ」
「そうね」




