表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
XRay ~陽に恋う~(クロスレイ はるにこう)  作者: 紙木 一覇
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/110

第101話 ……月

 オレたちは「はい」と応えて並んで座る。燦覇(さんは)・オレ・ウェディンの順に。うむ、なんと言う座り心地。座ると言うより埋もれると言う感じであっさり夢に誘われそうだ。


「改めて自己紹介しようかしら。

 わたくしは『神赦譜術(プロミスト・)教会(リリジョン)』教皇ステイ・クラリティー。

 使用するXR(クロスリアリティ)は魔術システム【フォビドンフルート】。こちらの格付けでSSS級。まあ、トップと言う奴ね」


 魔術システム・フォビドンフルート。

 プロローグが絶望的ながらも印象的なXRゲームだ。

 確かこんな感じ。






 炎が見える。

 世界が大洪水に見舞われていると言うのに、彼の目には確かに炎が見えていた。


「……月」


 が、壊れたのは半日前。

 なにかに衝突されたのではない。

 なにかの攻撃を受けたのではない。

 突如として裂けたのだ。


「どうして……」


 ぼんやりとした頭で、彼は「……月」に続いてそんな言葉を口から漏らした。

 無理もあるまい。

 彼はただ寒い中夜空を眺めていただけだ。

 そうしているのが好きだった。

 星が好きで、けれども調べたいのではなくて、ただ綺麗なものを眺めているのが好きだった。

 冬の夜空は冴えていて、冷たくて、それでも彼の心は満たされていた。

 なのに。

 どうして月は壊れた?

 どうして世界は水に沈んでいる?

 いや、後半の理由は分かっている。

 月の内部から大量の水が溢れ地球に落ちてきたからだ。

 空が泣くように降ってきた水は海を暴王とし、大地を呑み込み、木々を流し、生命を殺し続けている。

 人の営みの象徴である街も例外ではなく。

 現代に形作られた建造物は勿論遺構も同じく。

 人々は船に乗り込み、飛行機に飛びつき、もがく、もがく、もがく。

 けれども全ての人に幸運が回ってくるのではなく、彼のようになすすべなく雪崩に喰われてしまった人もいる。


「……誰か」


 下半身と上半身の半分を雪に沈め、彼は残った気力で声を出す。

 しかし応えてくれるものはなくて。

 だから、半ば死を受け入れかけていた時だった。

 それでも()きようと最後の意志と命を燃やしていた時だった。

 彼の目に赤く光る炎が見えたのは。

 人の爪ほどの大きさだ。蛍の火よりもちょっとだけ大きいと言うくらい。

 だが。

 暖かい。

 体の芯から温もりが満ちていくようだ。

 右腕が伸びる。

 動いた。

 炎に向かって右手が向かって――触れた。

 途端。


「――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!」


 彼は炎に包まれた。

 呼吸ができない。

 炎はすでに肺に到達している。

 内からも外からも焼かれて、彼は――気を失った。

 やがて目覚めた彼は人間ではなくて。

 少しだけ、聖霊の側に傾いていた。

 体から溢れる心の力『霊光』は魂・肉体・精神に直結し色・形を変える。

 奇跡の霊光能力『アイドル』を身に着けたのだ。

 それを誰かは「禁断の木の実を食べたのだ」と言った。

 聖霊に傾いた彼は、奇跡を起こす。

 聖霊に傾いた人々は、奇跡を起こす。

 月の崩壊に隠された人の業を、まだ知らぬまま。

 聖霊こそ悪霊であると、知らぬまま――






 って感じ。

 結果から話すと月が壊れたのは人が世界に与え続けたダメージが限界を迎えたから、だった。

 けれども世界はやり直す機会を人に与えた。それが『アイドル』。

 はたして人はそれに気づけるのか。

 はたして人は奇跡をどう扱うのか。

 業を乗り越え生存し共存できるのか。

 全ての戦争の終結を目指し、人は争う――

 う~ん、重いなこうして振り返ると……。

 オレはパペットの方を選んだけれど、宗教に生きる人々の多くはこの魔術システムを選んでいる。魂・肉体・精神が神に通ずる道だと信じ、霊光能力が神からの贈り物だと信じているから。

 一方で戒めとしても選択される。力の使い方を間違えるなよ、最初の崩壊が月だったのは神に護られたからだ、次に間違えれば壊れるのは地球だぞ、と言う意味で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ