第10話 不安だった。心配だったの
ウェディン、ちょっとうちまで来てくれないかな? と言うメッセージを飛ばしてわずか二分後に彼女は『門』を通って僕の部屋へと現れた。現れて、ベッドに座っている。
こちらから出向ければ良かったのだけれどあいにく彼女の家の住所も彼女の傍に『門』を開く為のパーソナルアドレスも知らなかった。いつか教えてもらえるかな?
母さんにドーンとぶつかれ言われたので勢いあまってすぐメールしたのだが……ウェディン、もの凄く怪訝そうな表情である。
「ひょっとして私……誘われてる?」
「違いますが」
そんな意味で呼んだのではない。絶対に。
とは言え。
僕はウェディンの前に立ち目を閉じて深く深呼吸を二回する。
……良し。
「ウェディン」
「は、はい」
なぜか声が裏返る、ウェディン。
「僕は、ウェディンをライバルとして見ている。
誰よりも僕と対戦して、一緒にいて、並んでいると思っていた。
けれどウェディンがお姫さまだって知って正直一歩引いてしまった。
一般人の僕が一緒にいて良いのかって。
きっとウェディンの周りには性格も顔も能力も揃っている人が多いだろうと思う。恋人に相応しい人も。
その中で僕はウェディンと並び立てるのか。
不安がある。心配がある。
でもそう言うのって全部僕の問題だ。
僕は上に行くよ。ウェディンと一緒にいて誰にも文句を言わせない位置まで行くよ。
僕は――オレはウェディンのライバルでいる。友でいる。
けどそれ以上に……こ、恋人でいたい。
ウェディンに選ばれる人になる。
オレはウェディンが好きだよ」
ウェディンが動いた。一人分の重みが消えて軽く膨らむベッド。
彼女は、ウェディンは勢い良くオレを抱きしめて。
「……私、線を引かれるかと思っていた。自分の年齢と身分を明かしたら。
不安だった。心配だったの。
けれど涙覇はそれを飛び越えてくるのね。来てくれるのね。
ありがとう。
私も頑張るから。涙覇の横に並んで立てるように頑張るから。
涙覇に選ばれる人になる。
安心して。私はちゃんと他の人と比べて涙覇を選んでいるわ。
だからライバルでいて。友達でいて。
……恋人で……いて。
私も涙覇が好きよ。大好き」
少し、震えている。
ウェディンもオレも。
震える手でオレはウェディンの細い体を抱きしめ返す。
ああ、泣きそうだ。
オレはこの温もりも護れるかな。この心の暖かさを護れるかな。
いや、護って往こう。
二人で護り護られて、一歩を強く踏み出して、一日一日歩んで往こう。
未来をこの手に、二人の未来を二人の手で掴む為に。
「ウェディン」
「うん?」
「話しておきたい。
オレの綺羅の奥の手について――」
ロッケン=オーヴァー、あんたが世界を荒らすなら【治す世界】はオレが――オレたちがクリアしてみせよう。
ウェディンとオレ、互いの横にいる為に。
これがオレの戦う理由、強さを求める理由だ。