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第01話 バトルスタ――――――――ト!

よろしくお願いします

「さあ! 綺羅(きら)めく時だ!」


 そう言って僕は天へと左腕を伸ばす。

 大きな金の星のブレスレットをつけた左腕を指の先までしっかりと伸ばし、パートナーの名を声高々に叫ぶのだ。


星伽(ほしとぎ)!」

 

 書物を読む。

 数式を解く。

 科学を試す。

 芸音を舞う。

 道徳を纏う。

 あらゆる文をこの頭に。

 

 刀を振る。

 剣を薙ぐ。

 槍を突く。

 矢を射る。

 拳を握る。

 あらゆる武をこの体に。

 

 火を燈す。

 水を流す。

 風を吹く。

 土を耕す。

 木を育て。

 あらゆる力をこの精に。

 

 政治を行う。

 金融を回す。

 祭事を催す。

 伝統を守る。

 遊戯に興ず。

 あらゆる儀をこの世に。

 

 良く笑う。

 良く喜ぶ。

 良く怒る。

 良く涙す。

 良く愛す。

 あらゆる心をこの胸に。

 

 学び、鍛え、識り、現し、想う。

 そして最後に明日へと超えて往く。

 あの人たちの子であるのを誇りに、恥じず、挫けず、驕らず、認められるよう。

 ……いや、少し違うか。

 誰かの為に。これが大切なのは分かっている。

 しかしなにより自分の為にだ。

 自分が自分にがっかりしないように。

 あの人たちを超えて、自分が描く自分すら超えて往く。

 その為に僕は――オレは、力強く綺羅めき続けるんだ。


 ☆


「さあ! 綺羅めく時だ!」

 

 そう言って僕は天へと左腕を伸ばす。

 大きな金の星のブレスレットをつけた左腕を指の先までしっかりと伸ばし、パートナーの名を声高々に叫ぶのだ。

 

「星伽!」

 

 星伽――これこそがパートナーの名。

 そして。

 

『オウ!』

 

 これこそがパートナーの声。まだ若い少年の声色と少女の声色。

 しかし姿は人のそれではなく。

 僕の伸ばした手の先、ずっと先に二つの星が輝いて、僕へと向かって降りてくる。流星となって降りてくる。

 そうして僕の頭上で落下を止めて羽ばたく姿は白。

 巨大な体を持つ煌めく白い二頭の獣。

 パッと見は獅子にも見えるが恐らく現実に該当する生物は阿吽の獣・狛犬だろう。

 たてがみは黄金の炎。

 加えて星の輝く夜空色の炎を天女の羽衣のように纏っていて。天を往く為の翼だ。

 二頭の狛犬の頭上に輝く光の王冠は桜の色。

 鋭い眼光放つ目は真紅。燃えるような真紅。

 白き夫婦獣、オスの名が(せき)でメスの名が(きょく)

 合わせて名を星伽。

 僕の『パペット』だ。





 

 今は二〇三〇年。

 世にコンピュータと言うものが出てきてどれくらい経ったのか……。

 パソコンが一世を風靡し、その牙城をスマートフォンが崩し、コンタクトレンズガジェットが後を継ぎ、脳付着チップが病を患った人中心にプレゼントされ、更に現れたのが現在も世界を席巻するフォトンコンピュータ【(はたがしら)】。

 日本人が考案し日本とイギリスの共同で造られた蒼い光。地球を表すような蒼い小さな光【(はたがしら)】だ。

 コンピュータを小さくしたのではない。それはナノマシンで限界を迎えた。

(はたがしら)】は光。『光』に様々な機構を付与したのだ。

 ごくんと呑みこむ事で人と同期し胸元に現れるは固有の模様『覇徽(はき)』。同期状態を示す徽章である。

 人体にコンピュータ機構を付与する【(はたがしら)】によって人は一つ二つと新たなステージに足を踏み入れた。

 パソコン時代から引き継がれるアプリ、インターネットはもちろん、

 機能の脳波操作

 身体拡張

 智識拡張

 防御能力

 治癒能力

 世界言語瞬時翻訳

 サポートAI

 テレパシー

 レビテーション

 XR(クロスリアリティ)

 人の夢は限りなく完成されたと誰かが言った。





 

天嬢(てんじょう)&星伽ペア! そのまましばしお待ちください!』

 

 実況のお姉さんの声がドームに響く。【パペットウォーリアドーム】に。

 お姉さんの言葉通り僕は待つ。対戦相手が出てくるのを。


「お待たせ。遅れて――はないわね、ギリで」 


 少しだけ待つと対戦相手が現れた。

 インターネットを通して現れたのは大きな金の星を右耳に飾りつけた銀髪蒼眼の一人の少女と彼女のパペット。星を喰らう者(スターリヴォア)と呼ばれる伝説だったか神話だったかそんな感じの獣がモデルのパペットだ。西洋のドラゴンと東洋の龍の中間みたいな体躯。巨大な、体躯。そしてその全身は輝く海水で構成されている。

 僕が星で相手はそれを喰らう。

 勿論喰われてやる気なんてさらさらない。

 今日までの彼女との戦績は十三戦六勝七敗。ちょっとだけ()けているけれど。

 けれど、僕にはなりたいものがある。

 超えたい人がいる。

 その為に、今は少しでも強く! 強く一歩前に!

 

『両者出揃いましたね!

 日本から天嬢 涙覇(るいは)&星伽! ユーザーレベル79! パペットレベル80!

 イギリスからウェディン・グリン&メイド・オブ・オナー! ユーザーレベル81! パペットレベル84!』

 

 因みに、ユーザーである少女の名前がウェディングだからパペットの名前がメイド・オブ・オナー(花嫁さんの付添人の中で最も花嫁さんと親しい女性の代表)なのかと聞いたら「え、当たり前でしょ?」なに言ってんのこの子って表情された過去がある。

 いや、答え合わせできるならしとこうと思っただけなんだけど……。

 

『黒髪紫眼の天嬢選手!

 銀髪蒼眼のウェディン選手!

 共に十六歳の高校一年生です! 可愛らしいですね!』

 

 可愛い……お姉さん、こちとら身も心も男です。男子です。そこはかっこいいでお願いします。

 

『ではではパペットバトル開始までのカウントダウンを始めます!』

 

 パペットバトル――その名の通りパペットシステムを用いてのバトルだ。

 パペットシステム――ある日開発提供された一つのアプリで、【(はたがしら)】内の全てのデータ、メール・ウェブ閲覧履歴・保存ファイルなどなどをスキャンして一体のパートナーAI『(バイナリーパペット)』通称パペットを創り上げるXRアプリだ。

 アプリの正式名称は【キミの(アイデンティカル)系統樹(・ツインズシステム)】。

 他のユーザーと絶対にかぶらないと言われる容姿・ちょっとだけかぶるかもしれない能力を持つパペットは一つの【(はたがしら)】につき一体だけ。死んでしまったら卵に戻り、全く別の新しいAIを搭載して再誕する。姿は同じ、でも別の個体である。同じ名すら登録できない。だから失うわけにはいかない。

 左目に【(はたがしら)】起動中を示す夜空色の日輪を燈した僕は星伽に目を向ける。ほんのり輝くパペットに。

 現在僕はパペットシステムを【オーバーレイ・ファースト】で起動している。

 この状態ではパペットはあくまで3D表示されているだけである。

 勿論と言うかなんと言うか、XRが完成に近づいた段階でこれに関する国際法もできた。表現の自由を重んじXRの使用を資格制にしない代わりにXRを利用して人を驚かせたり事故を起こさせたり事件に加担した場合はそれに見合った罰がある。軽ければ注意で済むが重ければ実刑だ。もし被害者が出た場合、専用の医者と国際警察機関が動き、必要な処置が行われ、必要な罰が法廷にて与えられる。

 が。

 それが限りなく許される場合や場所もあって。ここはその一つだ。


『カウントスタート!

 10!

 9!

 8!』

 

 相手のウェディンもオーバーレイ・ファーストだからまずはこれで良い。必要に応じて上げていく。

 

『3!

 2!

 1!

 バトルスタ――――――――ト!』

お読みいただきありがとうございます!

よろしければ! 評価をお願いします!

すっごくやる気に繋がるので!

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