(9)
あれ?私、何していたっけ?
ユリアは、少しの間意識を飛ばしていたようだ。
横たわっていたので、身体を動かそうとするが身動きがとれない。
身体が何かに固定されていているようだ。
閉じていた目を恐る恐る開くと目の前に美少年がいて、こっちをじっと見つめている。
紺色の髪は、暗い色ではあるが日の光に当たってキラキラと輝いている。
長いまつ毛の奥に見える金色の瞳は宝石のようだ。
王都で沢山の洗練された美少年や美少女をみたが霞むほどである。
私も美少女だと思っていたが、彼の隣には並びたくないと思ってしまう程だ。
少年の美しさに見惚れていたが、自分を固定していたのが少年の腕と気付き、一気に顔が熱くなった。
「私、寝ていたのね。ありがとう。もう、大丈夫よ。」
と言って起きようとするが、少年の腕はしっかり固定されていて全く動けない。
「ねぇ、起きたいのだけど離してくれない?」
ふるふる。
と、少年は顔を横に振ってばかりで腕の力を緩めようとしない。
実は、先程の青い玉の水で私の服はビショビショなのだ。
早く着替えたいが、少年は腕を離してくれないし、6歳の子供が森の中を歩いたのだ。
とても疲れている。
少年は、こっちを見てくるばかりで何も言ってこないし、どうしようかと考えていると、遠くから声が聞こえてくる。
「坊ちゃーーーーん!!」
「レオンハルト様ーーー!!」
声がする方向を見ると、騎士やメイドが数人こっちに向かって走ってくる。
「レオンハルト様!今度こそは、もう駄目かと思いました!」
追いついたメイドが、私に気付いていないのか、それとも周りが見えないほど必死だったのか私ごと少年に抱きついた。
他のメイドも騎士もとうやら全員必死に走ってきたようで、息を切らしている。
しかし、よく見ると騎士もメイドも全員びしょ濡れである。
ん?レオンハルト?
そうだ!彼はレオンハルト・ネビュラ。
東の公爵家であるネビュラ家の1人息子。
しかし、小説には名前しか出てこない。
何故なら、幼い頃に死亡していると書かれているからだ。