(6)
結局、私は何も言わずにお茶会を後にした。
アデル嬢は何も言ってこない私を見て勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
しかし、私がお茶会で何もしなかったのには理由がある。
お城のお茶会から帰った私は早速行動に移すことにした。
「おとうさま〜〜!」
と泣きながらお父様が仕事をしている執務室に入る。
勝手に部屋に入るのは令嬢として、してはいけない事だが私はまだ4歳なのだ。子供のすることと許してくれるだろう。
お父様は、あまりお話ししないし、いつも眉間に皺を寄せて難しい顔をしているが、実はいつも少し離れたところから私の様子を見ているぐらい気にかけてくれているのだ。
お父様の足に泣きながらしがみついていると、狼狽えていることがよく分かる。
「何があったんだ、ユリア。」
「わたし、もうおしろに、いきたくないです!りょうちにいきたいです!」
「りょうち?あぁ、領地のことか。王都から離れて南に行きたいということか?」
そう、いつストーリーに巻き込まれるか分からない王城の近くにいるよりも、南にある領地で引きこもって過ごしたほうが確実なのだ。
私は、対応を変えるより物語と全く関係ないところで生きていきます!
「一体何があったんだ。泣いてないで話しなさい。」
理由なんて絶対に言わない!
お父様が問題を解決して、王都から離れられなくなってしまうもの。
それは、絶対に避けなければいけない。
何も言わずに、お父様の足にしがみついていると、
「分かった。ユリアも一度、領地を見てみないといけないからな。」と困ったようにいった。
やったわ!
これで、王子にも会わないし主人公にも会わなくてすむわ!
にやけそうになる顔を父の足で隠すユリアだった。