(5)
「ユリア嬢は、本当にお母様に似ていないのね。」
目の前には、ユリアよりも頭1つ分程高い身長の女の子達が、金髪縦ロールの子を中心に立っていた。
なぜ、この様なことになったのだろうか。
お城の庭に、お母様と通され目の前には大勢の煌びやかな女性とその子息、令嬢がいた。
お茶会という名の社交の場なのだ。
お母様は、すぐにご婦人方に囲まれて私を紹介した後、
「お菓子を食べて来ていいわよ。ただし、食べ過ぎには注意するのよ。」
と可愛らしくウインクして言うので私はケーキが並んでいるテーブルに行くことにする。
お母様は、お友達を作って欲しいのだろうが初めての場所で社交なのだ。勘弁してほしい。
色とりどりのケーキを幾つか取って、端の空いている席に座る。
苺がのったケーキを食べてみるが、流石お城のケーキだ。何個でも食べられそうだ。
次のケーキを食べようと皿に視線を落とすと、強めの日差しが急に遮られた。
目線を上に上げると目の前に5,6人の令嬢がおり、冒頭に戻るという訳だ。
目の前で、私が母に似ていないだの、ドレスが似合ってないだの、うるさい金髪縦ロールだ。
私が会場の隅に座ったせいで、どうやら親からは話している声が聞こえない様だ。
「ちょっと!貴女聞いているの!?」
「アデル様が聞いているのよ!」
と、私が色々考えていると痺れを切らしたのか自分語りをしていた金髪縦ロールと、その後ろにいる令嬢の1人が言ってきた。
アデルという名前には聞き覚えがある。
確か侯爵令嬢の名前だ。
このフラウドール王国には、王族の下に公爵が4家いるが現在令嬢がいる家系は私のイグニス家のみである。
今まで歳の近い令嬢の中で侯爵令嬢のアデルが1番偉かったのに突然更に上の公爵令嬢が現れたのだ。
面白いわけがない。
つまり、小さいうちに逆らえない様にしようということだろう。
小説でのユリアは、自分よりも大きくて堂々した令嬢達に囲まれて何も言い返せずに俯くばかりだった。
言い返せもせず、両親に相談もしないため小説ではユリアに対する圧はどんどん強くなっていった。
影でいじめられ続けたユリアは、6歳の時に王子であるアルフォンス・フラウドールに会う。
そして、王子に慰められ初めて優しくしてくれた王子に執着しだすのだ。
つまり、ここが物語の分岐点。
この対応次第でこれからが決まるのだ。