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3/4

2.理由。

ざまぁ回は次かな?

応援よろしくお願いします。








「本当に、魔王軍に入ってよかったのかな……」



 アクロはギルガドの申し出を受けてから、一人そう思い悩んでいた。

 たしかに、あの魔王と呼ばれる青年の瞳には力がある。そして、言っていることも決して嘘ではないのだろう。そう思わされた。

 しかしながら、あくまで自分は人間。

 それも先日まで勇者として敵対していた立場だった。



「あぁ、アクロさん。ここにいたのですか」

「えっと、ディールさん?」

「はい、そうです」



 魔王城の中庭。

 そこの花壇に腰かけていると、有翼魔族の少年ディールが声をかけてきた。幼い見た目の中性的な顔立ちをした彼は、にこやかにアクロの前に立つ。

 ギルガドの側近。右腕という話であったが、どこか頼りない印象を受けた。もっとも思ったとしても、アクロはそれを口にしないが。


 ディールはそんな少年の気持ちを知らずに、どこか人懐っこい笑みで言う。



「最初、ボクもアクロさんを仲間にするって聞いた時は驚きましたよ」

「やっぱり反対、だったんだね」



 そうして出てきた言葉に、アクロは思わずネガティブなことを想像した。

 しかし、ディールは静かにこう続ける。



「それはもう、反対でした。しかし、アクロさんの境遇を訊いて分かったんです」

「俺の、境遇……?」



 ピクリ、少しだけ眉を動かすアクロ。

 そんな彼の顔を見ながら、ディールは少しだけ翼をはためかせつつ言った。



「はい。貴方は昔、魔物に育てられていたのですね」――と。



 それは、アクロにとって隠したい過去。

 人間側にいた時は、決して誰にも伝えなかった話だった。それなのに、どうしてこの魔族は自分の過去を知っているのだろうか。

 アクロは少しだけ緊張しながら、無言を貫いた。

 すると、そんな彼の感情を察したらしい。



「あはは。すみません、魔王様から聞いたのです」

「え、ギルガド――さんが?」

「……はい」



 そう、少しだけ申し訳なさそうに告げた。

 そして同時に与えられた情報に、さらにアクロは混乱する。ますます意味が分からない。どうして、彼は自分のことにそこまで詳しいのか。

 そんな風に考えていると、ディールがこう語り始めた。



「魔王様には、遠見の力と共に過去を知る力があると云われています。きっと、アクロさんを見た時に自身の生い立ちを重ねたのかと」

「ギルガドさんの、生い立ち……?」



 アクロが首を傾げると、ディールが頷く。

 そして、こう告げられた。




「魔王様も似た境遇なのです。あの方は、人間に育てられましたから」

「え……?」




 それはあまりに意外な内容。

 アクロは息を呑み、すぐにこう思った。



「そっか、だから――」



 あの魔王は、自分に居場所をくれたのか――と。


 同情のつもりなのだろうか。

 それとも――。



「あぁ、でも勘違いしないでくださいね?」



 そこまで考えたところで、ディールが遮るようにこう言った。



「魔王様は決して、一時の感情に流されるような方ではないですから!」



 そして、真っすぐにアクロを見て。

 有翼魔族は笑った。



「きっと、アクロさんの力を心の底から信じていると思います!」



 疑いようのない程、澄み切った表情で。

 アクロはそんなディールの顔を見て、ハッとした。




 そして、思うのだ。

 きっとこの場所にいる者はみな、あの魔王を慕っているのだ、と。

 それでなければ、このような表情はできない。


 それを感じ取ってアクロは、ほんの少しだけ迷いを断ち切れた。




「そっか、それなら――」




 だから、空を見上げて。

 頷き、こう口にした。





「俺も少しだけ、信じてみようかな」――と。




 


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