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プロローグ 魔王、追放された勇者を引き取る。

新作です。

応援よろしくです!








「魔王様、また勇者のことを観察しているのですか?」

「あぁ、その通りだ。奴の能力は実に面白い。我が魔王軍にも、あのような若い才能が欲しいものだ」

「お言葉ですが、あの者は敵です。それに――」

「どうしたというのだ?」



 私が訊き返すと側近のディールはため息をついた。

 そして、少しばかり言い辛そうに口にする。



「わたくしの見立てでは、そこまで有能に思えないのですが……」



 それは勇者――アクロの能力について。

 たしかに、有翼魔族のディールの言う通りだった。アクロの能力は勇者と呼ぶには物足りない。旅に出て一年が経過するというのに、四天王の一人も倒せていなかった。歴代勇者と魔王の戦いにおいて、ここまで苦戦しているのは彼が初めて。


 伝え聞く限りでは、アクロは無能だと罵られているらしい。



「あぁ、たしかに。アクロは強くはない」

「それでは、なぜ?」

「ディールよ、私は面白いと言ったのだぞ」

「と、言いますと……?」



 千里眼の水晶から視線を外して、私がそう言う。

 すると側近の魔族は、その童顔に不思議そうな色を浮かべて首を傾げた。



「おそらく、人間側は気付いていない。そしてアクロもまた、自身の価値を理解していない。その特異すぎる才能故にな」

「特異な、才能?」

「あぁ、だから私は――――む?」



 再び水晶に視線を戻す。

 そして、その才能について説明しようとした時だ。

 映し出された景色。そこで、今までにない出来事が起きたのは。



「おい、ディール。見てみろ」



 私とディールは、その光景に釘付けとなった。







「アクロ、貴様のような役立たずは勇者失格――追放だ!」

「そ、そんな……!?」



 黒髪の少年は、仲間の言葉に声を詰まらせる。

 自覚がないわけではない。それでも彼――アクロは、今まで勇者として出来得る限りの研鑽を積んできたつもりだった。

 それなのに、彼に与えられたのは無常な宣告。


 勇者失格の烙印。

 拳を震わせた少年は、静かにうつむいた。



「勇者の癖に、魔物を前にすると怯んでしまう。そのような奴に、これからの未来を任せるなんてできない!!」

「う……!!」



 ――そう。

 アクロはどういうわけか、魔物を前にすると怯み上がってしまう。

 どれだけ研鑽を積んだとして、攻撃ができなければ戦闘において役に立つことはなかった。一通りの回復、攻撃魔法も修めたが、どれもエキスパートではない。そのような人材をこれ以上、勇者と祀り上げるのは無理だった。



「荷物をまとめて、王都に帰るんだな! ――なに、心配するな。後任の勇者はすでに神の導きで選定されている」

「……そう、なんだね」

「分かったら、さっさと失せろ!!」

「…………」



 目障りだと。

 そう言わんばかりに、かつての仲間から唾を吐かれた。

 アクロは視線を向けることすら能わず。ただうつむいて、荷物を手にその場を後にするのだった。







「魔王様。今のは……?」

「これは僥倖だぞ、ディール!」

「え……!?」



 私は一部始終を確認して、側近の魔族にこう告げた。

 それは、とても突拍子のないものに聞こえたかもしれない。しかし私にとっては、千載一遇の機会だったのだ。だから――。





「魔王ギルガドが命ずる――アクロを魔王軍に迎え入れろ!!」




 高らかに、そう宣言したのだった。




 


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