お嬢様、助けを求める
「以上だ。頼んだぞ。」
「承知致しました。
それでは失礼致します。」
胸に手を当て、一礼をとると執事は消えた。
(王子の執事って優秀そうよね。
見た目、おじいちゃんだけど)
「さぁ、皆。
昼食の時間だ。遠慮せず、食べてくれ。
もちろん、君もだよキーラ。」
そう言って王子は軽く手をあげる。
すると、何も置かれていなかったテーブルの上にお皿が置かれていた。
「今日は、立食パーティーにする事にした。
その方が皆も、僕の婚約者と話す機会があるだろうからね。
向こうに食事の用意を整えさせたから、各自、自由に楽しんでくれ。」
王子がそう告げると、取り巻き達は一目散にパーティー会場に向かう。
(人望ないなー。
流石は、殿下。だわ。)
王子と食事を取りたくは無いが、お腹は空いている。
仕方なしに、自分もパーティー会場に向かおうと席を立とうとすると誰かに手を差し出された。
ゾゾッ…またもや全身に何かが走る感覚がする。
(誰かって一人しかいないけど!
でも、決め付けたくないし‼︎)
体は既に反応しているので、全く無駄な抵抗ではあるが、もしかしたら違うかも…と淡い期待を持ち顔をあげる。
「行こうか、青く美しい姫。」
(…そうだよね。
決まってるよね)
予想通り、顔を上げた先にはニコリと微笑む王子の姿があった。
「姫と呼ばれるのは、少し恥ずかしいですわ。殿下。」
さり気なく、王子に抗議を入れながら手を取る。
(意味無い事はわかってはいるけれど、姫は嫌なのよね。
王子に嫁いだみたいだし…)
王子が、そこまでの考えがあって姫と呼んでいる訳でないことは百も承知ではある。
だが、王子との婚約を破棄したい身からすると聞き流せる物ではない。
私の言葉に王子は、顎に手を当てて考える。
(見た目はいいから、様になるのよね…。中身、バカだけど。)
そして、改めてニコリと笑いかけこう言った。
「では改めて、ご同行願えるかな?
僕の可愛い婚約者殿。」
膝をつき、繋いでいた私の手の甲に口付けながら。
「……ッ!!!!」
(悪化した‼︎悪化した‼︎‼︎
そして、キモい。手を洗いたいッ‼︎)
あまりの事に、私の頭はパニックを起こし体はフリーズして動かない。
返事をしない私に、王子は不思議そうにしながらも愛おしい者を見る目で続ける。
「どうかしたのかな?
可愛い、僕の未来の妻…」
(返事を…返事をしないとッ‼︎)
何か言わないとと、焦るも体がうまく動かない。
パニックを起こした頭では、まともな考えをする事が出来ない。
(誰か…誰か…助けて。)
心の中で、この場に居るはずがない人に助けを求める。