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執事、奮闘中


「生徒会専用の厨房は…確かココですね。」



温室から少し離れた場所にある建物の入り口に私、エリアスは立っています。


この建物は生徒会メンバー専用の施設で、厨房などの生活に必要な設備から、プールやティーサロンといった娯楽を目的とする設備まで兼ね揃えた複合型の施設になります。


(出来たのは、つい最近の事なので私も始めて見ましたが…

流石は、ケイン殿下と言うべきでしょうか。)


学園のごく一部の生徒が使うような大きさではありません。


(お屋敷と言っても過言ではなさそうですね)


少し建物を見て回りたい気持ちはありますが、ご昼食開始まで時間はあまりありません。


入り口の横に付けられているベルを鳴らし要件を伝えます。



「殿下のご昼食の準備の手伝い任されました。」


「所属はどこですか?」



どこからとも無く、声が聞こえてきます。


(魔法のレベルもそこそこですね)


胸元につけたロベラティ家の家紋が見えるよう少し胸を張り私は、答えます。



「ロベラティ家、キーラ様の執事をしております。エリアス。」


「確認致しました。

魔法陣の上にお乗りください。

厨房へ転送致します。」



一歩先程の所に、魔法陣が現れました。


言われた通りに私は、魔法陣の上に乗ります。


(転送魔法陣での移動は、好きではないのですが…

致し方ありませんね。)


そのような事を考えているとフワリと視界が揺らぎました。


(この、乗り物酔いのような感覚が好きになれません。

帰りは自分で帰れませんかね…)


視界がはっきりした時には私は既に厨房の中にいました。



「さっそくですが、はじめましょうか。

他にも使用人の方がいらっしゃいますが、どの程度準備は進んでいるのでしょうか?」



辺りをぐるりと見渡します。


(右の方々は…魚介類の選別ですね。

左の方々は、野菜のカット…)


あちらの方々は、他の食事の準備を終えて新しく食材の下準備を始めているのでしょうか…。


私の心に大きな不安が襲いかかります。


(せめて、主食は完成していますように‼︎)


期待を胸に、私はオーブンを見ました。



「…。」



私の不安は的中したようです。


オーブンの中は、パンの姿はおろか予熱すら完了していません。


(ここの使用人の方は、何をしていたんです⁉︎

仮にも殿下のお食事ですよ?

間に合わないなんて、あってはならない事でしょう‼︎)



使用人達の動きをジッと見て回ります。



「なるほど…。

皆さん、真面目には働いていらっしゃるようですね。

しかし…」



(要領が悪すぎる‼︎

なぜ、野菜を切るのを手作業で行う必要があるのです⁉︎

パンにしても同じです‼︎)


使用人の皆さんは魔法を一切使用する事なく、全て手作業で行なっているようです。



「確かに味の微調整などは、魔法よりも手作業で行うのが望ましい事ではありますが…

全てを手作業で行うほどに時間はありません。」



(お嬢様には、目立つな。と釘を刺されてはおりますが…

仕方ありませんね。)


ご昼食に間に合わないなんてことになりますと、ロベラティ家の体裁にも関わります。


私は急ぎ、現状を把握します。


そしてスゥッと息を吸い込み大きく声を出します。



「皆さん、聞いてください。

このままでは、殿下のご昼食に間に合いません。

大方の準備は私が、します。

ですので、皆さんは私の指示に従ってください‼︎」



と、一気に言い切ります。


使用人達は、手を止めこちらを驚いた顔で見ています。


(一部、こちらを睨んでいる方もいらっしゃいますが。)


その辺りの事は気にせず、私は続けます。


さりげなく、胸を張りロベラティ家の家紋を見せながら。



「右の3人、パンをオーブンに入れれるよう急ぎ準備をして下さい。

予熱が完了していないようなので、私が調整します。」


「はいッ‼︎」


「続いて、真ん中の5人。

鍋に、水を入れ火にかけて下さい。

鍋の水が沸騰したら、ザルの中にある野菜を順に入れて下さい。

決して、鍋の中に野菜以外を入れる事はしないでください」


「わかりました‼︎

ですが、野菜はまだ全て切り終えていません。」


「大丈夫です。」



私はスッと野菜のある場所を指差し、魔法をかける。



「あッ‼︎

ザルの中に野菜が‼︎」


「これで問題ないですね。

後は頼みます。」


「はい‼︎」



「残りの方々は、食器の用意を。

食器に汚れや、曇りがあってはいけません。

全ての食器を丁寧にチェックをしながら、乾拭きして下さい。」


「わかりました‼︎」



と、そんな感じで使用人の皆さんは、快く私のいう通りに動き始めてくれました。



(いつも思いますが、貴族社会というものは理解しかねます。

何もかもが家の階級で決められ、使用人の地位もつく家の力に左右されるなんて。

こういう時、ロベラティ家の力の凄まじさを感じます。)



「さて、私もやりますか。

まずは、オーブンからですね。」



主食であるパンを作るため、私はオーブンへ向けて歩き始めた。


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