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お嬢様、拒絶中


(これはもう逃げれそうにないわね…)


国の宰相を務める侯爵家の娘でしかない私には、なんの力もない。


その私が、王子の誘いを断ってしまうと悪者になるのは目に見えている。


下手をすれば家族に迷惑がかかってしまう事になる。


(それだけは絶対にダメだもの。)


覚悟を決めて私は、王子の手を取った。



「お誘いありがとうございます、殿下。」


「僕と君は婚約者なんだ。

当然の事をしただけだよ。」



私の答えに満足したようで、私の手を強く握ると王子は歩幅大きく歩き出した。


王子につれられ廊下を歩く途中、私はエリアスを見た。


私達の数歩後を歩いていたエリアスは、私の目を見ると小さく頷き胸に手を当て軽くお辞儀をしてくれた。


(そうよね…。これは仕方のない事だわ。)


私達の婚約は、親同士がお互いの権力維持のために決まった政略結婚だったりする。


婚約するまで私は、彼と数回夜会で顔を合わせただけ。


婚約した後もあまり話した事は無い。


私が彼について知っている事は、目立ちたがり屋で、わがまま。


頭は腐ってても王族なので悪くは無いけれど、極度の努力嫌いな為賢いとまではいかない。


そういうわけで、運動神経や、剣術、魔力量に関しても人並み以上ではある。


ただ…全てにおいて、私に比べると足元にも及ばない。


(…私は努力、嫌いじゃないもの。)


今日お昼に誘われた原因は、光魔法の授業で間違い無いわね。


目立ちたがり屋の彼の事だ、 大方噂で私の話を聞いたのだと思う。



「さあ、青薔薇姫。

僕達のテラスに着いたよ。」



一人で色々考えていたら、いつのまにか目的地に着いていた。



「君をここに招いたのは初めてだね。

どうかな?僕達、生徒会専用テラスは?」



どうやら、生徒会の持つ特別な温室に招かれたみたい。


感想を述べる為、慌てて辺りを見渡す。



「とても素敵な場所ですわ。

太陽の光がほんのりと濡れた葉に当たってキラキラと輝いて、机を囲むように流れる小川から聞こえる水の音は涼しく、地面に生えている芝は手入れが行き届いていて柔らかい。

このような素敵な場所に出入り出来るなんて、生徒会の皆様が羨ましいですわ。」



目に見える全ての物を良く聞こえるように述べる。


(お父様、キーラは頑張りました‼︎

瞬時に判断して、最高の言葉で褒める。

これも貴族としての力ですものね。)



「そんなに喜んで貰えるとは…。

君を連れてきて本当に良かったよ。

早速だけど、昼食にしようか。

なにか食べたい物はあるかな?」


「連れてきて下さってありがとうございます、殿下。

私の食べたい物は、殿下の好きな物ですわ。」



(誰があんたの好きな食べ物を食べたいなんて思うものですか‼︎

私が食べたい物は、サンドイッチよ‼︎

だいたい、あんたが生徒会にいるなんて初めて聞いたわよ。

バカ王子‼︎‼︎)


と、答えながらも頭の中では全く違う事を言っていた。


私の心の中の声が聞こえていたのだろうか、エリアスは肩を震わせて必死に声が出ないように笑っていた。



「殿下、そろそろ昼食を始めましょう。

素敵な婚約者様とのお話が楽しいのはわかりますが、このままでは昼食時間が終わってしまいます。」



王子の取り巻きの一人が、私達の間に入り昼食を促して来た。


王子との話は全く楽しくは無いけれど、昼食の時間がなくなってしまうのは困る。



「つい嬉しくてお話に夢中になってしまいましたわ。

止めて下さってありがとうございます。

昼食楽しみですわ。」


「本当だ。

止めてくれてありがとう、ブルド。」



王子にエスコートされて、席に着く。



「君の執事も借りていいかな?

僕達の執事よりも君の好きな食事を用意できるだろう。」



王子がエリアスを私の給仕に使ってもいいかと聞いてきた。


他の知らない執事に給仕されるよりもエリアスの方が気も楽なので、迷わずに了承する。



「もちろんですわ。

私の為などではなく、使っていただいて構いません。

… エリアス。」


「ここに。」


「あなたも他の方の執事と一緒に給仕にまわりなさい。」


「かしこまりました、お嬢様。

失礼致します。 」



頭を下げ、エリアスはその場を離れた。



「話はまとまったようだね。

それじゃあ、始めようか。」



チリンチリンッ



そう言って、王子はテーブルの上に置いてあるベルを鳴らした。



「ご用でしょうか、王子」



呼び鈴に、王子の執事が応える、



「これから、昼食を始める。

用意を頼めるか?」


「御意のままに。

ご昼食のメニューはいかがなされますか?」



執事の問いに王子は、一瞬考えるそぶりを見せたが続けた。


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