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お嬢様、王子に負ける





「君も喜んでくれようで良かったよ。

…席を隣にするよう頼んでおいて良かった。」


「…?すみません。最後までよく聞こえなかったのですが、もう一度お伝えいただけませんか?」



前半の言葉は聞こえたのだが、後半の言葉が小さくよく聞こえなかった。


(小さく呟くように、何かを言っていたと思うのだけれど…)



「なんでもないよ。

それよりも…前を見てごらん。

試験が始まるようだね。」



私の質問には答えず、王子は前を見るように促す。


気になりながらも、言われた通りに私は前を向く。


段々状に並べられた机の列の前方に、ステージのような場所がある。


そこに担当の講師が立ち、試験の監督や容姿を配るはずなのだが、まだその姿は見えない。


(誰もいないわよ…?)


講師の姿は見えず、試験が始まりそうにないとキョロキョロしている私。


その動作が面白かったのか、隣から王子がクスクスと笑う声が聞こえる。


(馬鹿にされてるようでムカつくわね。

バカ王子のくせに。)


心の中で悪態をつく。


イラつきが表情に出ていたのか、王子は慌てて口を開く。



「ごめんねッ。

君を馬鹿にしたわけじゃないんだ。

キョロキョロと見回す姿が、可愛らしくて…

嫌な気持ちにさせたのなら、謝るよ。」


「嫌な気持ちになんて、なっていませんわ。殿下。

ただ…少し傷つきましたわ」


「あぁ…ごめんね。僕の愛しき人。」


「…ッ‼︎

いいえ、気にしていませんわ。

それよりも、試験が始まるというのはなぜですの?」



藪から棒とはこの事だ。


謝られる事に気をよくし、更に謝らせそうとしたのが間違いだった。


(こんなキモい事を言われるぐらいなら、謝らせようとするんじゃなかったわ。)


慌てて話を逸らす。



「真ん中に置かれてある、机を見てごらん?」



王子は、前方のステージになっている部分を指差す。


私の目には、ただ机があるようにしか見えない。



「?机がなんですの?」


「気を悪くしないでね。」



ふむ…と、王子は軽く頷き私のこめかみに指を当てる。



「これでよしッと。

もう一度机を見てごらん?」



(触られた事に気を悪くはしないわ。

許さないだけよ)


心の中で悪態をつきながら、机を改めて見てみる。


(‼︎嘘。)


目に映り込んで来たのは、講師がちょうど机の上に試験用紙を並び終えるところだった。



「見えたかな?

そろそろ僕達も、話すのをやめようか。」



悪態を吐くのをやめられない私も、頷き黙った。




「これより、学年試験 座学 を始める。」



教室に鳴り響く声と共に、私の目の前に用紙が現れる。


会場内にいる生徒のほとんどは、いきなりの登場に驚いていたが、事前に知らされていた私は驚く事はない。


現れた用紙を見てみると、 xxxx年部、キーラ=ロベラティと用紙には書かれている。



「配られた用紙に書かれている名前が、違う者はいるか?」



そう言って講師は、辺りを見渡す。


どうやら、間違いは起きなかったようだ。



「いないようだな。

試験中、何か問題が起きた場合は黙って手をあげるように。」




そう言って講師は手を高く上げる。



『はじめ‼︎』



合図と共に私は、紙をめくり問題に取り掛かる。


(今回は、余裕そうね。)


問題の難易度は、決して高くなくスラスラと解く事が出来た。


ただ、私の頭の中は、引っかかっりつづけている。


理由は2つある。


(隣の子も講師が現れた時、驚いた様子はなかったわ)


1つは、先に来ていた隣に座る女の子。


もう1つは…


(王子って、こんなに優秀だったかしら…?)


私が気がつかなかった講師の存在に気がついた、王子。


度々起こる自身の王子に対する認識の違い。


それが私は、気になって仕方がなかった。



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