お嬢様、驚愕2
エリアスから聞いた話は、あまりにも衝撃的だった。
(魔力不足は、魔法が発動しないだけかと思っていたわ)
うっすらと記憶に残っているのは、魔力量を見誤ると身体への負担が凄いって話のみで、死ぬなんて事は聞いていない。
(はず…)
エリアスに以前教えられたと言われているが、記憶に無いので自信はない。
「死ぬの…?」
恐ろしくなり、おずおずとエリアスに聞く。
怯えた私に、エリアスは少しだけ微笑んだが、すぐに真剣な表情に戻してつづける。
「左様にございます。
ただ、少しだけ補足をさせていただきます。
術者が死なだけならまだいい方です。」
「それってつまり…」
「ええ。
魔法は発動せず、術者だけが死ぬ。」
「そんな…。」
エリアスに伝えられた事実に、私はショックを受ける。
(命を落としたにもかかわらず、魔法が発動しないなんて…あんまりだわ。)
鏡を見たいなので、私がどんな顔をしているのかはわからない。
(でも、いい顔をしていない事は間違いないわ…。)
私を見るエリアスの表情が、優しい。
軽く頭を人撫でして、エリアスは続けた。
「お優しいですね、お嬢様。
ですが、自身の魔力に似合わない魔法を使う人が悪いのです。
それに、強すぎる魔法は自分だけではなく他者を巻き込む事があります。」
「他者を巻き込む…?」
「そうです。
術者の命を奪い、呪いを生み出す。
魔法とは、理の中に生まれる現象で、奇跡ではありません。
理を外れた、魔力の暴走…それが呪いです。」
「呪いですって⁉︎
それに、理を外れた魔力の暴走なんて、私は知らないわよッ‼︎」
「残念ながら、これ以上のお話は出来ませんが…
これだけは、覚えておいて下さいお嬢様。
自分の力を超える魔法は、使ってはいけません。
強すぎる魔法の代償は、お嬢様の大切な者の命ですら奪ってしまうという事を…」
そう言って、エリアスは私に笑いかける。
さっきまでの真剣な表情は、消えていた。
(この話はここまで、って事ね。)
もう少し話を聞いてみたいが、聞いても教えてくれない事は分かっている。
諦めて私は、勉強を再開する事にした。
「そう。
なら、勉強するしかないわね。
私の自身のためにも。」
「そうです。
魔法式をしっかりと覚えて、少しでも確実に、安全に魔法を使えるように勉強をして下さいね。
……、いつか大いなる魔法を使わなければならい時が来るかもしれません。
その時に、私の話を思い出してくださいね。お嬢様…。」
「? 何か言った?エリアス。」
エリアスがなにかを呟いたように聞こえた。
しかし、エリアスは首を振りなにも言っていないという仕草をとる。
(おかしいわね…。
大いなる魔法とか聞こえた気がするのだけれど…。)
なにも言わず優しい笑顔を見せるエリアス。
その笑顔がなんだが、寂しく切なそうに見えて私はこれ以上なにも言えなくなった。
だけど、聞いた話は私の中に残り続けている。
(失敗したのを見た事があるって言っていたけれど、エリアスは大切な人を失った事があるのかしら?)
自分はそうならないためにも、気合いを入れ直して再び勉強に励む。
先程とは違い深く集中して勉強をしていたようで、エリアスに呼ばれるまでひたすらに勉強をしていた。
ーーーーーーー……
「お嬢様、そろそろご支度をなさいませんと遅れてしまいますよ。」
「もうそんな時間?
わかったわ。ありがとう。」
「かなり、ご集中なさっていたようですからね。
ドレスの準備も、整っております。
御髪を整えますので、こちらにおかけ下さい。」
そう言って、私の髪を触るエリアスの顔は、いつものエリアスの顔付きに戻っていた。
「ささっと済ませてね!」
その事に安心した自分が、少し照れくさくてエリアスに当たってしまったのは内緒の話。
「シリアスな雰囲気の中、失礼致します。
エリアスでございます。」
「ええほんとに。
空気の読めない執事よね、あんたわ。」
「…お嬢様も、変わらないと思いますが。」
「何?私が空気読めないって言うつもり?」
「いえ…。なんでもありません。」
(実際、その通りだと思うのですが…
言わない方が良さそうですね。)
「ここまで読んで下さいまして、ありがとうございます。
心より感謝しております。
また、ブックマークや評価ポイントいただきありがとうございます。
作者も、感謝に震えているそうです。」
「嬉しすぎて、心臓が痛いって言ってたわ。」
「…それは、初耳です。
評価ポイントや、ブックマークこれからも増えて行くと更に喜びますので、お時間ございましたらどうぞよろしくお願い致します。」
「皆様のおかげで、日間ランキング入りをさせていただきました。心から感謝致しますわ。
こうして読み続けて貰えている事が、一番の喜びですわ。」
「お嬢様…流石です…‼︎」
「当然よ‼︎
さ、エリアス締めましょう」
『それでは、またお会いしましょう‼︎』