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お嬢様、驚愕


【学年試験】が始まる前の1週間を試験期間と言う。


試験期間は、通常授業は行われない。


(この7日間で、どれだけ試験に向けた勉強が出来るかで成績は変わるのよね…)


ほとんどの生徒は、授業が無く試験に向けた勉強をしているが、一部生徒には特別授業と言う名の授業がある。


特別授業を受けている生徒は、大きく2つに分けられていて、1つが成績優秀者達でもう1つは落第の可能性が高い者達。


成績優秀者達に行われる特別授業は、自由研究のようなもので学年試験の内容とは異なる。


自分で勉強したい内容を考え、教えて欲しいと思う講師に頼む。


その内容を講師が受けてくれる事で、特別授業となる。


(講師から、特別授業のお誘いを貰えることもあるのよね…)


講師も生徒も受けるか受けないかは自由なので、これがなかなかシビアで面白い。


講師と生徒がそれぞれを望まなければ、特別授業は受けられない。


一方だけが望んでもダメなのだ。


(それにしても…驚いたわ。)


私は今回、講師からお誘いを受けたて特別授業を受ける事になっている。


その為、私は少し早く起きて学年試験に向けた勉強をしようとしていた。


【学年試験】は、年に2回行われる試験の事で、一定の点数を取ると単位を貰える。


カトレア学園には、卒業に必要な年数や明確な単位数は存在しない。


一定の階級を取得する事で卒業が可能になる。


階級は、上から【特級A】【特級B】【特級C】【1級】【2級】【3級】【4級】【5級】【6級】【仮級】と全部で10。


ただ、【仮級】は、留学生や卒業後一時的に研究しに戻る学生達の事を指す階級になる為、関係はない。


卒業を認められるのが【2級】となっているが、卒業するタイミングは各自の自由だ。


後の就職先の事を考えて、殆どの生徒は【1級】もしくは【特級C】を取ってから卒業している。


私が狙っている階級は、最上級の【特A】


(取れた生徒は今までに10人居ないと、言われるほどの難関級なのだけれど…。)


王子と婚約破棄をしても生き抜くには、必要だ。


(婚約中は、恩恵を受けられるけれど、婚約破棄なんて事になれば受けた恩恵の何倍もの苦境に立たされる事になるでしょうね…)


国外で生きてくのなら、そこまで苦労はしないだろうが、私は生まれ育った国に住んでいたい。


なんにせよ、今回も優秀な成績を残したい。


(だからと言って、特別授業を疎かにする事も出来ないのよね。)


なんせ、私が受ける特別授業はそのための授業でもある。


そんなわけで、試験期間中は早く起こすように私は、エリアスに頼んでいたというわけ。



「ねぇ、エリアス。

この場合の魔法式なんだけど、どうして魔力じゃだめなの?」



ふと気になったので。エリアスに質問する。


学年試験の勉強は、エリアスに見てもらっている。


意外な事に、エリアスは、教えるのが上手い。


(腹立つヤツでは、あるけれど…。

エリアスは、優秀なのよね。)



「お嬢様…。

そのお話は、以前もさせていただいた事がございますよ。」



質問を受けたエリアスは、少し怒って答える。


だけど、私には教えられた記憶がない。



「え?そうだっけ?

覚えていないわ」



首を傾げる私に、諦めたのか呆れたのかはわからないがエリアスは、注意を促してくる。



「覚えていないで済ませては、いけません。

一度で理解出来なかった事は、ノートにとる。

しっかりと、ご自身の手でメモを取ってくださいね。

魔法は禁止ですよ。」


「チッ…。」


「舌打ちもだめです。

いいですか?

魔法に必要な条件を揃える時、魔力は便利です。

しかし、魔力に頼るという事はとても危険な事でもあります。

発動に必要な条件を理解せず、魔法を魔力で発動させてしまった場合思わぬ事故が発生してしまう事があります。」


「…思わぬ事故?」


「そうです。

魔力というものは、人の体内に巡るエネルギー。

人によって【生命力】とも言われています。

自分の持つ魔力で補えない場合、魔法はどうなるかわかりますか?お嬢様。」


「何も起こらないだけじゃない?」



エリアスの言いたい事が分からず、私は首を傾ける。


(答えだけを、教えて欲しいんだけどな…)


答えだけを教えろと言っても、この様子では教えてくれそうにない。


面倒ではあるが、聞くしか方法は無さそうなので、エリアスの方に体を向けて、サンドイッチに手を伸ばす。


(あ。きゅうりー。

やっぱり、きゅうりは美味しいわね)


私の態度に少し不満を持ったようで、エリアスは軽くため息をついて続ける。



「ハァ…。

まぁ話を聞く気になって下さったと思う事にします。

魔力不足による魔法の発動の所までお話しましたね。」


「ええ。聞いたわ。

私は、魔法が発動しないだけじゃないかと聞いた」



軽く頷き、姿勢を正すエリアス。


しかしその目は、軽く閉じられている。


その様子に少しだけ私も不安になり、同じく背筋を正してしまう。


どこか吹っ切れたように、エリアスは目を開いて続けた。



「お嬢様のおっしゃる通り…

多くの場合は、魔法は発動しません。」


「多くの場合?

他にもあるの?」


「あります。

過去にも何度か起きていますよ。

…私も実際に目にした事があります。」



そう語るエリアスの瞳は、悲しげに揺れている。


(何か、悲しい事があったのかしら?)


それ以上続けないエリアスに、私は先を促すよう声をかける。



「…エリアス?」


「いえ、失礼致しました。」



そう言ってエリアスは、ほんの一瞬見たことも無いような瞳で私を見た。


(今の視線はなんだったのかしら…?)


しかし、すぐに視線を外して続ける。




「魔力不足による魔法の発動は…

最悪の場合は 死に至ります。 」


「え…」



驚きのあまり、私は手にしていたサンドイッチを落とした。


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