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お嬢様、勉強に励む



エリアスに感じた違和感を拭えないまま2週間が過ぎた。


あれ以来、熱を出す事もなく特に大きな問題もなく、私は日々を過ごしている。


(でも、平穏無事とまではいかなかったけれど。)


体調が悪く参加出来なかった、王子との昼食会があったからだ。


相変わらず、王子のウザっぷりは変わらないし、周りの取り巻きのご機嫌伺いも変わっていなかった。


だが、事件…という程の問題も起きなかったので、平穏無事と言ってもいいのかもしれない。


(だけど、嫌いな奴と食事をしたんですもの。

平穏無事と片付けられるものでもないわ。

それに、エリアスが変だった理由も分からずじまいだし…)


しかしこの後すぐに私は、王子との昼食会も、エリアスに感じた違和感もすぐにどうでもよくなってしまう事になる。


私は、すっかり忘れていた。


学生にとっては一大イベントが、近づいていた事に…




ーーーーーーー……




窓の外から緩やかな光が差し込む。


かすかに聞こえる鳥の声が、耳に優しい。


(まだ、起きるには早いわよね…。)


少しだけ肌寒く感じる気温が気持ちよく、私は二度寝をしようとふかふかの布団にくるまる。



その時、エリアスに体を揺すられた。



「お嬢様、起きてください。」



(せっかく、気持ちよく二度寝出来そうなのに…‼︎)


心の中で、悪態をつきつつ返事をする。



「起きるのには、まだ早いでしょ。

後10分寝かせて頂戴。」


「駄目です。起きてください。」



エリアスはしつこく私の体を、揺すり起こそうとする。


拒絶の気持ちを込めて、私は答える。



「じゃあ、後一時間。」


「伸びてます‼︎早く起きてください、お嬢様‼︎」



我慢の限界なのか、エリアスは私の体を激しく揺すり起きるように言う。


しかし、私はまだ寝ていたい。


対抗するため私は、布団を頭まですっぽりと被る。



「…。」



起きたくないという私の硬い決意に折れたのか、エリアスの起こす声と体を揺する手が止まる。


(諦めたのね…。

これで後10分は寝られるわ…‼︎)


勝った‼︎と私は、体の力を抜いて布団に体を預ける。



「お嬢様…。

失礼しますよ‼︎」


「キャッ‼︎

なんなの!?」



エリアスの声と共にさっきまで被っていた布団と頭の枕が同時に消えた。


突然の事についていけない私の頭に、エリアスが丁寧に説明してくれる。



「お嬢様が、一向に起きようとなされないので失礼承知でお布団と、枕を消させていただきました。」



こうすれば、起きるしか無くなるでしょう?とエリアスは続けた。



しかし、起き抜けの私の頭には、別の部分が気になった。


「消した⁈

あの枕、気に入ってたのよ?」


「気になるところはそこですか…。

ご安心ください、ここにありますよ。」



エリアスがパチリと指を鳴らすと、布団と枕がベッドの上に現れる。



「これで、問題はありませんね。

では、お嬢様もお顔を洗ってきて下さい。」


「…わかったわよ。」



完全に目が覚めてしまった私は、洗面台に向かう。


(やっぱりいつもの起床時間より、少し早い…?)


窓から見える景色がいつもより少しだけだが、暗い気がする。


気にはなりつつも、ひとまず顔を洗い歯を磨く。


一通り終えて、寝室に戻った私は、エリアスに尋ねる事にした。



「ねぇ、エリアス。

いつもより少し、起こすのが早いと思うのだけれど…?」



エリアスに着替えを手伝って貰いながら、尋ねる。



「ええ、そうです。

お嬢様の仰りました通り、30分前にお声がけをさせていただきました。」


「?何かあった?」


「ご自身で決められたのですが、もうお忘れなのですか?」



エリアスが言うには、私が原因のようだが、全く身に覚えがない。


(何か理由があったのかしら?)


全く身に覚えがなく、首を傾げている私に、エリアスはコメカミに手を当てて伝える。



「ハァ…。

『【学年試験】1週間前になったら、起床時間を30分早くして頂戴』

と私に命じたのは、お嬢様ですよ。

お忘れになりましたか?」


「心底呆れたように言うんじゃないわよ…

って、え⁉︎

【学年試験】ですって?

なんで、それを早く言わないのよ‼︎」



先程まで、半分寝ぼけていた私の頭は一気に覚醒した。


(すっかり忘れていたわ…。

急いで勉強をしていかないと間に合わないッ)


婚約破棄後の事を考え、常に優秀な成績を残し続ける必要がある。


片手で食べられる朝食と目が覚めるミントティーの用意をエリアスに命じて、私は勉強机に向かった。




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