プロローグ お嬢様、過去に戻る
暗い部屋の中、人知れず扉が開いた。
扉から光が溢れ出し、中から人らしき者が現れる。
スラリと伸びた長い足、ウェーブかかった青い髪、肌の色は白く、小さな顔に大きな青い瞳の美しい少女だ。
少女は、 部屋の中をぐるりと見渡し、呟く。
「本当に過去に戻れたようね。」
少女の呟きに答えるように扉からまた1人、男が現れる。
「お嬢様、私は嘘などついておりませんよ。」
お嬢様と呼ばれた少女は、チラリと男を見て下を向く。
そして、静かに震える拳を固く握り、深く息を吐いた。
「やっと…やり直せますわ…。」
これは、1人の少女、キーラが自身の失われた人生をもう一度やり直す物語。
ーーーーーーー……
ここは、魔法や精霊、魔族、モンスターがごくごく普通にありふれた世界、ベルディナアーリエント大陸にある魔法学校、カトレア学園。
その魔法学校に通っている私は、デュバリス国の宰相ロベラティ侯爵の娘、キーラ=ロベラティ。
一見普通の侯爵令嬢な私ですが…実は一回死んでいたりします。
生前、婚約者である王子に裏切られた私は、1人の執事と共に無人島に幽閉されました。
そこで、長い年月を過ごし死んだわけなのですが…。
色々あって私は死んで、そして過去の自分へ転生したのです。
細かい話はおいおい語ることにします。
とにかく私はッ‼︎
『同じ失敗はもうしないわ‼︎
あの《バカ王子の婚約者》なんてさっさとやめて、私は《普通の侯爵令嬢》に戻るのよ。
そして、自由な令嬢ライフを楽しんでやるわ‼︎』
と、空に向かってガッツポーズを決めて宣誓致しました。
「…お嬢様、決意を新たにしているところ申し訳ありませんが、椅子に足をのせてはいけません。」
さっきまで誰もいなかったはずのテラスに男が突如現れ、私に注意する。
「謝るなら邪魔をしないでほしいわね、エリアス。」
その男の名はエリアスと言い、私専属の執事。
幼い頃から私に仕えていて、全くと言っていいほど空気を読めない上、私の言う事もあまり聞かない。
(読めないではなく読まないな気がするのだけれど…。)
長身でスラリとした体、プラチナブロンドの髪、切れ長の瞳…見た目だけいいこの男は、私の執事にして、私を転生させた男でもある。
正体はわからないのだけれど、一応私の味方ではあるみたい。
「そうはいきませんよ、お嬢様。
そろそろ登校のお時間になります。」
今の私がいる時間は、王子に裏切られる前。
裏切られるまでの数年で私は、婚約を破棄して、一人で生きていく力を身につけなければならない。
「のんびりと過ごしていたら、あっという間に卒業ね。
急がないと…。」
冷えてぬるくなった紅茶を一気に流し込み、私は寮の自室に向けて歩き出す。
「王子となるべく合わないように授業を調整しなさい。
ただし、[経営学]は被ってもいいから必ず取りなさい。」
「かしこまりました。
それですと…[光魔法][魔法基礎][経営学][召喚魔法]が本日の授業となります。」
エリアスはタブレットを取り出して、授業を決めていく。
「わかったわ。
部屋に戻り次第、用意をするわ」
「授業の用意はすでに机の上にございます。
本日のお召し物のみお選びください。」
私は少し足を早めて自室に向かった。
「ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
私、キーラお嬢様の執事エリアスと申します。」
「そして、私はキーラ=ロベラティ。
はじめの一話、楽しんでいただけたかしら?」
「「どうぞ、最後までよろしくお願いするわッ‼︎」します。」
「皆様のブックマークやしおり、ご感想などいただけましたら、作者の励みになります。
お忙しい事とは思いますが、お時間ございましたらいただけますと喜びます。」
「文書、ストーリー評価もとっても嬉しいわ。
1番嬉しいのは、楽しんで貰える事だけれど。」
「その通りです、お嬢様。
楽しんで読んでいただける事が、一番の喜びです。
物語は続いて参りますが、また皆様とお会いできる事を楽しみにしております。
それでは、失礼致します。」