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Epilogue

 Epilogue

 

 

「失礼します」一礼する。

「……で、どうなった?」若旦那は豪華な部屋のソファに座っていた。煙草をふかしている。

「リオンを奪回する事はできませんでした」若旦那の眉間に皺が寄る。

「……どういう事だ」

「リオンは自分で、自分の胸を撃ち抜きました。予想外の事だったので、止める事はできませんでした」私は至極簡単に言った。

 若旦那は煙草を灰皿に押し付ける。私に聞こえるように舌打ちをした。

「……結構気に入ってたんだけどな、あいつは」若旦那は私を見た。睨んだのかもしれない。

「まあ、いいか。新しいアンドロイドを注文しておいてくれ」

「……わかりました」

「今度は普通に、絶対服従するような性格の奴がいいな。代金は親父から貰っとけ」若旦那は新しい煙草に火をつけた。

「わかりました。失礼します」私はその部屋から出た。

 廊下を歩き、「治療室」へと向かう。あの大きな銃の弾丸は、防弾着を貫通していた。人間ならば死んでいただろう。治療室に入り、服を脱ぐ。胸や腹には幾つもの弾痕が残っていた。器具を使い、その中に埋まっている弾丸を取り出していく。人間で言えば皮下脂肪に当たる特殊樹脂のところで止まっていた。これならば難無く「治療」できるだろう。

 十分後には、治療室を後にしていた。

 また、長い廊下を歩く。その間、不可解な事に思考が定まらなかった。次々といろいろな「記憶」が浮かんでくる。

 リオンは一年ほど前に、この「館」に来た。非合法に手に入れたものだったらしいが、詳しい事は聞かされていない。普通のアンドロイドと違い、人間に抵抗する性格を持っていた。私とは全く違うタイプのアンドロイドだった。

 あの男たちは自分の命をかけ、リオンを救おうとしていた。しかし、たとえそれでリオンを奪う事ができたとしても、この「館」に大きな影響を与える事は無かっただろう。若旦那にとっては、お気に入りの玩具が野良犬に盗まれたようなものだ。無くなったら無くなったで、変わりはたくさんある。リオンのようなアンドロイドは造れないかもしれないが、別にそれでもいい。若旦那にとって、リオンは単なる「少し変わった玩具」でしかなかったのだから。

 何も変わらない。この世界は何も変わらない。

 大きな河があるとする。人間が一人や二人でその中に壁を作っても、流れが止まる事は無い。流れが逆になる事もない。

 私は廊下を歩いていた。

 

 

 完


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