秋葉原ヲタク白書24 今宵だけ相棒メイド
主人公は作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第24話です。
今回は、厳重警備を誇る新興宗教「洪水の化学」の電子金庫から、第5世代通信システムの中核となるチップが盗まれます。
手がかりとなる祭祀長は実はCIA。中国国家安全部の影もチラつく中、教団のメイドとコンビを組む主人公でしたが…
お楽しみいただければ幸甚です。
第1章 リンカが来た!
外階段の踊り場につぼみんがいる。
「ミユリ姉様、タイヘン!」
「どうしたの?つぼみちゃん」
「リンカさんが来てます!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんの御屋敷は、昭和通り沿いの雑居ビルの2Fにある。
つぼみんは、ミユリさんの出勤を踊り場で待っていたワケだ。
あ、つぼみんは早番のメイドさんだ。
僕は…ミユリさんと同伴出勤の途中←
「ええっ?リンカが?御屋敷に?何の用?」
「わかりません。ただ何か相談があるらしくて。姉様には貸しがあると…ホントごめんなさい、私のせいで」
「貴女が謝るコトないわ。どうせまた自分で蒔いた種でしょ。100%色恋沙汰に決まってる。あーあ」
解説しよう。
リンカさんは、ミユリさんの古いwメイド仲間の1人なんだけど、まぁ、その、恋愛体質なせいか色々あって御屋敷を転々と…
で、前回つぼみんがサイコな元カレに誘拐された時に僕達は彼女に借りが出来てしまったんだな、その時はエラい助かったんだけど。
「あらー、遅いじゃないのミユリ。お帰りなさいませ、お嬢様。なーんちゃって」
「まぁ、ビックリー。リンカなの?何か御用かしら?」
「そうなのー。実は、貴方の大事なテリィ御主人様を…貸して頂戴、私に」
歩く厄介ゴトょ。
汝の名はリンカ←
ヤタラ派手な(ハイビスカス柄w)メイド服のリンカさんと素早く着替えたミユリさん&つぼみんがカウンターを挟む美の競演!
しかし、問題は話の中身だw
「あらぁ、テリィ様に御用なのね?でも残念だわー。生憎テリィ様のスケジュールはキチキチなの。私じゃダメかしらー?」
「そうです!お2人共パンパンなのですっ!」
「うふっ。おチビちゃんはお黙んなさい。元々貴女のコトで貸しが出来たのょ。ソレに今回はミユリじゃ無理かもー。だって、御主人様のヲタク力が必要なんだから。知的力仕事なのょ」
つぼみんも加勢するがリンカさんは譲らない。
しかし、知的な力仕事って意味わかんないw
ココは御主人様の出番だ。
「"司祭キラー"のリンカさんのコトだから、どうせまた教団内の不倫でしょ?色恋案件はお受けしない主義なんで。そもそもコレで泣かした司祭は何人目?」
「6人目テヘッ。最後の司祭と別れてからもう1月経つんだけど、未だに抗うつ剤を服んでるんですって!カワイイ」←
「可哀想、だろ?少なくとも薬の服用期間中は喪中でしょ。人の道を外れてるな」
リンカさんは、今、アキバでも大流行りの新興宗教"洪水の化学"に入信している。
僕は、大教祖から内々依頼を受ける仲だがリンカさんはそんなコトを知る由も無い。
知らないと逝うよりも、ハナから聞く耳を持ってない、って感じだ。
案の定、問答無用とばかりに彼女はアッサリ決めゼリフを言い放つ。
「でも、貴方のイカれた元カノよりはマシでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんの前の僕の推し(てるメイド)であるエリスは、実は心を病んでいる。
あ、心を病んでる、の前に「絶世の美少女なんだけど」をつけ加えて欲しいぞ!
しかし、目を疑う光景が待っている。
中央通りに面した超高層ビル、通称箱舟タワーの37F「洪水の化学」本部。
リンカさん(メイド服のママだw)に奥の、そのまた奥の部屋へ案内される。
ソコは、窓のない円形ホールで真ん中に、その、まぁ、つまり「仏壇」がある。
リンカさんが「仏壇」にスタスタ歩み寄り、扉の指紋認証?に小指をつけたら…
ハレルヤ!
ホールの照明が薄暮状態に落ちるや、どこからともなく天上の音楽?が鳴り響き、レーザー光線が飛び交い、ミラーボールが回る!
70年代ディスコティックの再現だ!
あの頃は良かった(何が?)…
「うふふっ驚いた?せっかくだから踊る?sexy bus stop とか?」
「な、な、なんなのコレ?ココはダンスホール?"洪水の化学"って踊る系の宗教だったっけ?」
「いいえ。コレは"洪水の化学"の祭壇。そして、この中の"洪水の化学"の"御神体"が…実は盗まれたの」
ええっ?
確かに、リンカさんが指差す先の仏壇…じゃなかった祭壇の中は見事に空っぽだ。
ココに"御神体"があったのか?意外に小さい?ってか盗まれてもいいモノなの?
「だから、実は教団の中では大騒ぎになってるの。世間体もあるから内密にしてる。だから、このコトは私達、最高幹部しか知らないのょエッヘン」
「ええっ?リンカさんって"洪水の化学"の最高幹部だったの?いくら新興宗教とは逝えソレは神様が許さナイでしょ?バチが当たらない?愛人枠?」
「そうなの!実は、私って、見かけによらずお馬鹿キャラに見られてガチで困ってるの。だから!今回、私の手で犯人を捕まえ"御神体"を取り返し、的外れなお馬鹿キャラを返上するのょ!だから、お願い!力を貸して」
説得力がアルようなナイような変な話だ。
力を貸しても何も返って来ない気もするw
「あ、貴方は今、ヤタラと不安な気持ちになったでしょ?でも、大丈夫!ちゃーんと私しか知らない事件解決の"秘密の手がかり"を私は握ってる。ソレさえ辿れば事件解決は間違いナシ!」
「おおっ"秘密の手がかり"キター!ソレなら僕がいなくても大丈夫でしょ!いやぁ残念だな、お役に立てなくて!」
「ううん。私達はコンビ。だから、コレから"秘密の手がかり"に会いに逝くのょ、私達2人でね!」
ソコへ放課後のチャイムが鳴る。
やっと下校時刻だ…あ、電話かw
「もしもし。リンカです…あ、祭祀長!今、何処?末広町駅のホーム?OK!5分、待ってて!今、逝くから」
「え?え?あくまでヲレを巻き込むつもりか?その祭祀長さんとかに勧誘されても、ヲレ、絶対"洪水の化学"とか"自衛隊"とかには入らないから。親父の遺言なんで」
「お父様の遺言なら仕方ないわw今回は貴方は未だ面識もナイし、とりあえず、私だけで会って来マス。でも、いい?私達はコンビだから!貴方は私の相棒ょ!」
うーんミステリーだと相棒って直ぐ死ぬんだょな←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
どうやら、リンカの逝う"秘密の手がかり"って"洪水の化学"の祭祀長のコトらしい。
彼が何者で何を知っているのか知らんが、会いに逝ったリンカから、緊急メールが来る!
ええっ?祭祀長が、リンカの目の前でホームから何者かに突き落とされた?マジ?
入って来た地下鉄に轢かれかけて重体!大急ぎで丘の上の大病院に来て!大至急!
ところが、病院前でヤタラどデカイ花束を抱えたリンカと合流して、祭祀長が担ぎ込まれた病室へ駆け込むと…
「だ、誰なの?!貴女?」
「私?私ハ、ちゃいにーず耳カキめいどアルネ」
「あ、中華皇帝式の耳かき屋さんだ!何か最近スゴく流行ってるょね?」
コレは、またまた力一杯怪しい光景だ。
ベッドに寝てる祭祀長の上に中華メイド?ミニのチャイナドレスにカチューシャをつけた謎の女がのしかかっている。
そもそもICU(集中治療室)なので、全員マスクだが、ソレに加えセーラームーンみたいなお団子シニヨン、カチューシャ、額帯鏡…
あ、額帯鏡って逝うのは歯医者が額にしてる丸い凹面鏡のコトだけど、ソレも含め厨二要素満載のラブで素敵な謎女だ!萌えるゼ!
しかし、リンカはソレが気に入らない。
「ちょっとアンタ!コッチから見るとワンワンスタイルでパンツが丸見えよっ!誰だか知らないけど後にしてょ!」
「アイヤー。恥ズカシイアルヨー。コノ人、耳カキ皇帝こーすノ御予約ガ入ッテタアルネ」
「出張耳かき嬢?今時は、ICUまで出張って来るの?何処も競争が厳しいんだねぇ」
感心する僕を尻目に、パンツ丸見えのミニを素早く直して愛想笑いを残しメイドは去るw
入れ替わりにドヤドヤと入って来た団体様は万世警察の御一行で、先頭は我等が新橋鮫。
「お!早いな!さすがはテリィとメイド長の名コンビ…ってメイドが違うじゃねぇか。推し変か?」
「風評被害!物騒な噂を流さないで欲しいな。ミユリさんとはラブラブなんだから」
「あ、貴方が新橋署から異動になった新橋鮫さんね?スゴ腕なんだって?捜査には全面的に協力するわ。私はリンカ」
え、誰?って顔でポカンとしてる新橋鮫とシッカリと握手するリンカ。
ソレを見て、ハッキリ逝って何かどーでもいいやって気分が高まる僕←
ところが、新橋鮫は意外と重要情報を語る。
「何処で何を聞いたのかは知らないが、気をつけろテリィ。この件で外事(警察)が動きだした。もしかしたら、お前ら、国際的な陰謀に巻き込まれるぞ」
「ええっ?何でそうなっちゃうの?盗まれたのは、たかが新興宗教の御神体でしょ?」
「知らないのか?その御神体には5Gスマホ用に開発されたマイクロチップが隠されてる。闇のマーケットなら億の値がつく代物だ。開発に成功したのは"洪水の化学"傘下のスタートアップ」
ナ、ナ、ナントの勅令は1598年←
「アキバのヲタクだって、今、アメリカと中国が第5世代通信システムの覇権を争い、国と国が激突する騒ぎになってるコトは知ってるだろう?」
「NHKの週間こどもニュースでやってたけどウソだと思ってた」
「言ってろ。実は桜田門(警視庁)筋に拠れば、洪水教の御神体を盗んだのは中国国家安全部の精鋭らしいぞ。ソコで俺達が注目してたのが、コイツだ」
新橋鮫が、ベッドの上の祭祀長を顎で指す。
さっきまでメイドがのしかかってたんだが。
「えっ?でも彼は"洪水の化学"の祭祀長なんでしょ?」
「ソレは表の顔なんだょ」
「じゃ、裏の顔は?」
「奴は…CIAだ」
第2章 祭祀長はCIA
アキバ1安全とされる箱舟タワーで、超天才にしか破れない"洪水と化学"の鉄壁な警報システムが破られ侵入窃盗事件が発生。
盗まれた"御神体"には、次世代通信システムの中核チップが隠されており、盗んだのは中国国家安全部との情報に緊張が走る。
教団内部の犯行説も流れる中、お馬鹿キャラ返上を図るリンカとコンビを組んだテリィだが手がかりと頼む祭祀長が殺されかけ…
しかも、その祭祀長はCIAだと?
「やめて!昔から嫌いなのょCIAとかPTAとか!私とテリィたんは独自のルートで事件を探るわ!警察は邪魔しないで!」
「おっと元気なメイドさんだな。テリィってホントに誰に会っても即、尻に敷かれる運命なんだな。まぁ勝手に盛り上がってろ。警告はしたからな」
「"たん"付けはヤメてチョンマゲ」
それぞれ各自が逝いたいコトを逝い捨て病室の一幕は終了となる。
僕とリンカは、(追われるようにw)病室を(追い)出されて外に出る。
「どうする?暫く祭祀長の意識は戻らないみたいだけど。手がかりが途絶えちゃったね」
「まだまだ!お楽しみはコレからょ!祭祀長は実は私と会った後で、ある人と会う予定だったの。その人と会いましょう。何か知ってるかもしれない」
「ええっ?未だ続くの?アメリカや中国の情報機関が入り乱れて、何か滅茶苦茶ヤバそうだょ。だったら、次もリンカさん1人で逝ってくれょ。また暗殺未遂が起きそうだ」
御茶ノ水から秋葉原へと下る長い坂道をリンカさんと歩きながら恐る恐る逝ってみる。
多分彼女は聞く耳持たずズンズン前へ…と思ったら立ち止まって僕の胸に手を当てるw
「私も…ホントは怖いの。実は私、祭祀長がCIAだって知ってた。だって私は…彼のディープスロート(情報源)だったから」
「ええっ?」
「私は、アキバの前は上野でキャバ(嬢)やってたんだけど、ソコで当時は未だスリーパー(潜伏スパイ)だった祭祀長にスカウトされたの。それから、教団が経営する御屋敷で悪党どもの自慢話を盗み聞きしながら彼のための情報屋をやってた」
ええっ!情報屋と逝えば聞こえはいい…いや、悪いかwとにかく!リンカさんは、仲間をCIAに売る女と逝うコトだw
リンカさんは危険な女だ。
流れを変える必要がある。
「わかった。でも、ヲレとコンビを組みたいのなら、ココからはヲレのルールに従ってもらおう」
「あらっ!…貴方ってそんなハードボイルドな人だったの?意外だわー。そもそも貴方のルールなんてアルの?寝る前には歯を磨け、とか?」
「3つある。先ず、口説くな。ボディタッチも禁止。色目を使うな。この3つを1度でも破ればヲレは降りる」
すると、リンカさんは爆笑しそうになり…僕の眼差しに気づきフト真面目な顔になる。
「本気なの?」
「本気だ」
「わかったわ。でも、もし3つのお約束が守れたら…その時は、私を貴方の嫁にしてくれる?」
「無理」
「アキバの嫁だけど?」
「余計に無理」
「じゃ相棒」
ソレも無理と答える前に彼女は僕の胸に飛び込んで来て熱い唇を押し付けてくる。
何が何だかよくわからないまま、僕も彼女を抱きしめたんだけど、その時気づく。
その時リンカさんは、泣いていたんだょ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、ココから先は、その場に僕はいなかったので、後で常連から聞いた御屋敷の中の出来事だ。
何と、僕とリンカのキスはリアルタイムで御屋敷に中継されていたらしいw
サイバー屋のスピアが交通カメラをハッキングして僕達をモニターしてる←
「ミユリ姉様!タ、タ、タイヘンですぅ!またあの女狐メイドがテリィ様とキスを!」
「お、お、落ち着いて、つぼみん!貴女が慌ててどーするの?」
「この角度だと舌が入ってるかよくわからない!別のカメラをハッキングし直して確認するから!」
いゃ余計なコトしなくていいんだょスピアw
とにかく!ミユリさんとつぼみんがスピアのPCを挟みカウンターの内外で大騒ぎする。
さらに、3人を取り巻く常連連中はミユリさんの顔も見れずにチラ見してw声もない。
しかし、日頃から慣れてる?せいか、ミユリさんの立ち直りは意外に早い←
「と、と、とにかく、私達に出来るコトをやりましょう。スピア、リンカの元カレは見つかった?何か手がかりが欲しいの」
「え、ええ。間抜けな食べ歩きブログやってたから直ぐ見つけたわ。メアドを遡ってIP電話なら繋がるけど、どーする?」
「スピーカーにして。みなさん、お静かに」
ミユリさんがIP電話をかけると、たまたまの偶然かリンカの元カレが直ぐ出る。
彼の話では、リンカは近く大金が入るから億ションを買うとか話してたらしい。
大金が入る予定?
もしかして、リンカは何らかの手段でチップを手に入れ転売益を得るつもりだったのか?
実は、チップを盗んだのは祭祀長で、彼を地下鉄で突き落としてチップを強奪したとか?
「うーん。その線もあり得るね。いや、しかし、この度は我が教団の不祥事でお騒がせしてホント申し訳ない」
ココで御帰宅して来たのは"洪水の化学"の大教祖とその取り巻きの連中だ。
今宵は全員ネクタイのないスーツ姿でドヤドヤと入って来てミユリさんの前へ。
おい、1人1オーダーだぞw
「リンカが、テリィさんにウチの祭壇をお見せしたと聞いて、コチラにお邪魔してみたんだが」
「テリィ様は、ヲタクのリンカさんと共同捜査中です。今は、祭祀長さんのお見舞いから帰って来る途中だと思いますけど。あ、それから、2人はさっきキスしました」
「ええっ?し、しかし、リンカがチップで金儲けを狙ってるとは面白い推理だね。実は、ソレに関して、テリィ君に予め知っておいてもらいたいコトがある」
若い大教祖の細い顔が曇る。
「リンカは、目下、教団内で背任横領の疑いをかけられており、現時点で内部調査の対象だ。このため、教団傘下の御屋敷のナース長から降格異動させると共に、今後は教団破門の上、刑事訴追へと進展する可能性がある」
「ええっ?」
「しかし、今聞いた話でほ、リンカは、未だ肝心のチップを手に入れてはいないようだ。彼女は、実行犯ではないまでも、何らかの形でチップの窃盗に関わっているコトは先ず間違いナイ。テリィ君とコンビを組んだのは、仲間の誰かにチップを隠され、ソレを見つけるにはテリィ君のヲタク力(推理力?)が必要と考えたからじゃないか?」
大教祖が、珍しく意地悪な笑みを浮かべてミユリさんを見る。
しかし、立ち直った?ミユリさんは、平然と彼に微笑み返す。
「大丈夫。そんな簡単に丸め込まれちゃう方じゃないんです。テリィ様は」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アイドル通りの1本裏の路地。
「ねえねえ。いつになったら奥さんと別れてくれるの?もう、カラダが火照って、待・て・な・い」
「相変わらず悪いコだな、リンカ。お前になら何でも喋るから今宵もヲレを火傷させてくれ」
「エヘンエヘン(咳払いw)。リンカ!約束を守れ」
解説しよう。
最初は、お馴染みのリンカで早くもフェロモン全開でモーションかけてる。
続いて、ハイテク盗品の転売業者タンゴで全力でモーションかけられてる←
で、最後は僕だ。
僕の咳払いで正気に戻ったか、リンカが急にあらたまってタンゴに正面から問いかける。
明らかに面倒臭そうだが、彼女なりに努力しているのが傍目にも明らかで好感が持てる。
「えっと、タンゴ…さん。祭祀長なんだけど最後に何か逝ってなかったかしら?」
「え?え?何だょ急にあらたまって…あ!わかった。コレはプレイだな?女高校教師にイジメを密告するイケナイ高校生プレイだ!わかった。よーし…そう逝えば、奴は何かを待ってたな。えっと…確か"マスターキー"だ。奴は"マスターキー"の到着を待ってからデカいヤマを張る(大泥棒を働く)とか逝ってた。そうそう、あの鉄壁警備で有名な箱舟タワーで金庫破りがあったンだって?そりゃ"マスターキー"を手に入れたアイツの仕業に違ぇねぇ」
「そうか。ソレで十分だ。ありがとう、タンゴさん」
僕が感謝のつもりで肩を叩くと何かのプレイと勘違いしたかタンゴは大袈裟にヨロめく。
そのまま、ゴミ溜めの中に尻餅をつきゴミ塗れになるが、何故だかヤタラと楽しそうだw
僕とリンカは顔を見合わせ、逃げるようにして、その場を去ったんだけど、振り返ると、ゴミの中からタンゴが手を振っている←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「5G(第5世代)チップを盗んだのは祭祀長なんだ。CIAから"マスターキー"を取り寄せ箱舟タワーの最先端セキュリティシステムを破ったんだな」
「待って!でも、テリィたんのお友達の新橋鮫の話じゃ、確かチップを盗んだのは中国国家安全部の精鋭、じゃなかったっけ?警察情報と盗品の転売業者の話と、ねぇ、どっちを信じるの?」
「もちろん、盗品転売屋の話」
即答に、瞬間、リンカはあっけにとられたようだが、やがてゆっくりと微笑む。
「私なら…私なら絶対、貴方のにコトを他のメイドに貸したりなんかしないな。ねぇ、男に飢えてる巨乳メイドならいくらでも紹介するけど?」
「要らない。間に合ってる」
「ホント、スゴい子ばっかりなのに。さしものミユリも焦って水着にカチューシャで迫って来るかもょ?」
え?水着カチューシャ?
ソ、ソレは、ソソるな…
僕達は、転売屋のタンゴと別れ御屋敷に向け第1架道橋をくぐるトコロ。
ところが、ミユリさんの水着カチューシャ幻想を打ち砕くかのように僕のスマホがw
「スピア!ヲレが電話嫌いなのは知ってるだろ?この番号にかけて来るのは、お前だけなんだからな!」
「テリィ様。ごめんなさい、ミユリです。ちょっち emergency でスピアさんに無理逝って電話してもらったの」
「あ、あぁミユリさんか。元気?」←
ま、まさか、僕の妄想に気づいて電話してきたのかな!
何せ、ホラ、僕とミユリさんって以心伝心だからねぇ…
が、ミユリさんは珍しくテンパった声w
「テリィ様、御屋敷に戻ってはダメ。今から新橋鮫がリンカを逮捕に来る!だから、ココに戻ってはダメ!」
「えっ?もう御屋敷の前まで来ちゃったんだけど?ソレに何で鮫の旦那が出張って来んの?どーしてリンカを逮捕するのかな?容疑は?」
「容疑は…祭祀長さんが着てたライダースの背中からリンカの指紋が出たそうです。彼の背中を押してホームから突き落としたのはリンカってコトになってるみたい。だからリンカの容疑は…殺人未遂!」
ええっ!殺人?僕は思わず立ち止まる。
隣でリンカが僕を見上げ小首を傾げる。
「テリィたん、電話は誰から?」
「幸運の壺の売込みだった」
「ウソがヘタ過ぎ」
僕は、慌ててスマホの送話口(ドコだょw)を手で塞ぎ手短かにリンカに話す。
「鮫の旦那が御屋敷にリンカを逮捕に来る。容疑は殺人未遂。でも、ヲレはリンカを信じる。だから…逃げよう」
「えっ?2人で?私達、まるでアキバの Bonnie & Clyde(邦題:俺たちに明日はない)ね!素敵過ぎる!」
「あのなー映画じゃ最後に2人は射殺されルンだゼ」
「あぁ、あんな死に方をしたいわ」
ヲレを巻き込むなw
さらに、リンカは僕からスマホを奪い交通量の激しい昭和通りの只中へと放り投げるw
直後に巨大なトレーラートラックに轢かれて愛用のiPhone5Sは木っ端微塵に砕け散る←
「コレで私達のコト、誰にも追えないわ。2人で逃げるのょ!アキバの果てまで!」
「アキバの果てって上野広小路か?ってか、キスとか逃避行とか…何でいつもヲレなんだょ?」
「だから!私には友達がいないの。どんなお店でも、美貌1つで容易くNo.1になれた。でも、敵ばかり増えて友達は出来なかったの。だけど、テリィたんは、そんな私を相棒にしてくれるって!貴方は、3つの約束さえ守れば、私を相棒にしてくれるって逝ったから!」
またリンカは涙目だw
ズルいだろ、リンカ…
コレじゃ2人で逃げるしかないじゃないかw
第3章 俺たちに暇はない
「テリィ様はまだ御帰宅なさらないの?」
「実は御屋敷の前まではお見えになってマスが…またまた女狐メイドに男垂らされてて」
「あぁ!人の御主人様に手を出さないで欲しいわ。リンカ、あの泥棒メイド!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分後、ルパンを追う銭形警部よろしく新橋鮫を先頭に制服警官の1団が御屋敷前に到着…
…する直前にヤタラ派手なメイド服(ハイビスカス柄w)の女が道路に飛び出し走り出す!
「あ、リンカだ!逃がすな!追え!」
新橋鮫の命令一下、制服警官の1団が犯人?を追う様子はほとんどアニメとそっくり…
と思ったら途端に通行人やら物売りが警官隊の前を横切るわ、屋台で行く手を遮るわw
昭和通りの歩道はたちまち大混乱だ!
「なんなんだコレ?市民のみなさん、我々は今、殺人の容疑者を追跡中です!道を開けて!どいて…ん?お前らセクボ(昭和通りを仕切るストリートギャング)だな?」
「え?何のコト?すみませーん、おまわりさん!ヨドバシカメラって何処ですかー?」
「コイツら、ジュリのトコロのギャングどもだ!どけ!どけったら…全員、公務執行妨害で逮捕する!え?ヨドバシ?ソコの角を右に曲がって…髭剃り?確か4階だったかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お前ら、何を考えてるのか知らんが背伸びし過ぎだ。この件は、国と国が威信をかけて水面下で戦争してルンだ。ヘタ打てば死人が出るぞ」
「鮫の旦那、すまない。でも、ルーレットは回ってる。最後の目が出るまで勝負は降りない」
「うーんメイド長がいないか。リンカと背格好が似てて同じ貧乳と来れば…遠目にゃリンカに見えるハズだょヤラレタな」
御屋敷のバーカウンターにヘロヘロになった新橋鮫が来てつぼみんにオーダーする。
外では未だリンカを追う制服警官の1団がセク…じゃなかった無垢な市民に囲まれてるw
「こうなったら、テリィにも話しておきたいコトがある。さっきも話したが、コイツは外事(警察)が動くヤバいヤマだ。もし、命の危険を感じたら、迷わずココに電話しろ。そしてこう言うんだ。"シャツの染み抜きをお願いします"」
「え?何だょソレ?染み抜きなら地元にヤタラと上手いクリーニング屋があるんだ。間に合ってるから要らないな」
「言ってろ。あと、前に話した中国国家安全部のスパイだけど市ヶ谷(防衛省)から写真が回って来た。この顔にピンと来たら110番だ。必ず連絡しろ。凄腕らしいぞ。お前らヲタクの手には負えないからな!」
新橋鮫は"染み抜き"の電話番号を逝う。
そして、最後に重要な一言をつけ加える。
「で、奴のコードネームもわかった。奴は"マスターキー"と呼ばれてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"マスターキー"って工作員のコードネームだったのか。てっきりCIA特製の何でも開けちゃう万能キーかと思ってた」
「しかも、中国人なワケでしょ?CIAの祭祀長が何で中国の工作員を待って"御神体"を盗んだのかしら?」
「祭祀長は…CIAだけど実は中国側に寝返った裏切者なのかもしれないな」
新橋鮫が去った後、御屋敷のストレイジに隠れてたリンカが出て来て僕と頭をヒネる。
ハイビスカス柄のメイド服はミユリさんが着て逃げてるwので真っ赤なミニのメイド服だ。
「しかも、最大のサプライズはコレだょ」
「え?なぁに?あ、あああっ!」
「まさかアイツが"マスターキー"だったとはなぁw」
新橋鮫から預かった写真は、外国の街角でのスナップだが写っているのは…
祭祀長にのしかかってた耳かき嬢だ!確かに怪しいと逝えば怪しかったがw
しかし、仮にもスパイだろ?
少し目立ち過ぎじゃないかw
「静かにして!フラワー02、オープン」
「え?え?今度は何ゴト?」
「祭祀長の病室に仕掛けた花束盗聴器が作動した。誰か病室にいる」
え?リンカが持ってたお見舞いの花には盗聴器が仕込んであったのか?
人の声がすると起動しスピアのPCに音声を送ってくる仕掛けらしい。
ぎゃ!中国語だょw
そりゃそうだょな←
「誰か!中国語の話せる御主人様はいないの?つぼみん特製の愛込めカクテルおごっちゃうぞ」
「もらったー!ってか、コレ、中国語は中国語でも広東じゃねぇか。おい!広東だ!誰かわかる奴いないか!」
「ハイハイ!広東麺ヲタクの私が…でも、体質的にお酒飲めないんでカクテルじゃなくてツーチェキ(メイドとツーショットで記念撮影)でお願いしまーす!」
「合点承知ょ御主人様!もっとキワどいメイド服に着替えちゃう!だから、一言も聞き漏らさないでね!」
「御意!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ソレからは急展開だ。
祭祀長の病室を訪れたのは、やはり"マスターキー"で、ズッと昏睡状態が続いてた祭祀長の点滴に薬品を混ぜ覚醒させる。
祭祀長が目を覚ますと"マスターキー"は真っ先に5Gチップの在り処を彼に尋ねるが、彼は何と「思い出せない」と答えるw
業を煮やした"マスターキー"は、ココで恐らく自白剤的な何かを祭祀長に追加投与したようで彼は再び意識を失ってしまう。
「あ、リンカ!何処へ逝くんだ?ジッとしてろ!」
「病院へ逝くわ。このままじゃ…このままじゃ祭祀長が殺されちゃう!」
「えっ?リンカ、お前、まさか祭祀長のコト…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷を飛び出た僕とリンカは、昭和通りでツケ待ちしてるタクシーのドアを叩く。
丘の上の病院は余りに近距離で運転手は嫌がるがココは奮発して万札を握らせる。
「相手は第3庁舎(中国国家安全部)の精鋭だ。かなりヤバいぞ」
「だから、急いでるんでしょ!警察は呼べないし」
「1つだけ聞くけど、何で祭祀長のライダースにリンカの指紋がついてたんだょ?」
万札効果でヤタラとトバしてくれるタクシー車内で、僕とリンカは忙しない会話を交わす。
「アレは私からのお誕生日のプレゼント。昨日だったの。だから私の指紋ベタベタで当たり前。早速汚してくれちゃって」
「何でライダース?お前ら暴走族かょ?女なら普通は花だろ?来年は花を送れょ盗聴器も仕込めて便利だぞ」
「だから!来週、神戸までツーリングに逝く予定だったの!」
サービスウルトラ満点のタクシーは病院の夜間通用口ギリギリにつけてくれる。
リンカのウィンク1発で夜間警備員にドアを開けさせて、真っ暗な病棟に入る。
ナースステーションには爽やかに手を振り病室に飛び込むと闇に蠢く…中華メイドの影。
こんな時まで、ミニのチャイナドレスにカチューシャとは!コダワリのコスプレなのか?
もしかして筋金入りの(コスプ)レイヤー?
「御苦労様!貴方も派遣メイドさん?もしかして流行りの皇帝式の耳かきかしら?私達はフラワーメイド。お花の交換に来たのょ」
「エ、エ?オ前達、何者アルカ?夜中ニ押シカケテ来テ無茶苦茶怪シイアルヨ?」
「ソレは貴女もおんなじアルよ。とりあえず、この点滴を止めて。あ!何するの?」
強引に点滴を抜こうとするリンカは中華メイドに角手を突かれ気を失い床に崩れ落ちる。
今度は、リンカのパンツが丸見えだ…ホントこの病室って、なかなかヲレ徳な場所だな←
しかし、祭祀長を救いたい一心からか、リンカは倒れる最後の瞬間に点滴を引き抜く。
その時に飛んだ薬品の飛沫は、実は明後日の方に飛び散ったんだが僕は大騒ぎをする。
「うわぁ!お気に入りの大事なシャツにシミが!ところで、ウチの地元に染み抜きのヤタラと上手いクリーニング屋があるんだけど、急いで電話しないとシミになっちゃうから、ちょっち電話してもいいデスか?いいデスょね?じゃ電話かけますょ…あ、もしもし?」
「パニックセンター」
「シャツの染み抜きをお願いします!大至急!」
第4章 丘の上の愛
その後で起こったコトを、僕は恐らく一生忘れないだろう。
遠い救急車のサイレンがドンドン近づいて来たと思うや、ICUのドアが押し開けられ、慌しくストレッチャーで患者が担ぎ込まれる。
同時に医者やナースや救急隊員がドヤドヤ入って来て…その内の1人が僕を床に押し倒す。
次の瞬間、宇宙の始まり?と疑うほどの光の爆発が起き凄まじい光量の暴力に全身が麻痺w
その一瞬でプロ同士の対決は済んでて、床に転がる救急隊員とナース各1名を道連れに"マスターキー"は取り押さえられる。
僕は、床に伏せて目を瞑っていたのに網膜をやられて、何もかもボヤけてよく見えない。
だけど、誰かがストレッチャーの上から不思議そうに僕を見下ろしているのがボンヤリ…
あ、サリィさんだw
また会ったな…
と、恐らく向こうも思ってる笑。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
案の定、コードネーム"マスターキー"は腐女子でアキバでの任務を喜んでいたらしい。
サイバー軍として有名な61398部隊で、電子金庫破りが専門の超天才ハッカーとのコト。
祭祀長は彼女の色仕掛に転び国を裏切ったが、最後の最後になって彼女からチップを奪い、愛人と高飛びを試みる。
で、その愛人と逝うのがリンカなワケだw
結局、祭祀長は"マスターキー"に追われ、勝手に踏み外してホームから落ちたが、その前にチップを愛人に託していたんだね。
「え?私?そぉ逝えば、確かにカレからチップだって渡されたけど…でも、心づけのコトだと思ってたの!ホントょ!信じて!」
リンカが祭祀長から受け取ったのは、指先に載る小さな外国コインだが、実は表面に極めて巧妙に5Gチップがはめ込まれている。
祭祀長の自白で5Gチップの在り処を知った警察筋は直ちにリンカを保護し5Gチップを押収すると共に彼女を厳しく尋問するが…
彼女は、ホントに心づけと思っていた、と逝う結論に達する。
ソレって晴れてお馬鹿キャラとして公認されたってコトか?笑
「だって、彼からチップだょ、って渡されたんだもの。誰だって、心づけだと思うでしょ?だから、御守りがわりに大切におサイフに…」
「あのなー」
「リンカらしいわ。何だか安心しちゃう。でも鮫さん情報だと、リンカが1人で高飛びするつもりだったって、今でも疑ってる人がいるそうょ」
全てが終わった夜に御屋敷で。
リンカと僕とミユリさん。
「でも、今回はリンカとテリィ様って、アキバ最強だったカモ。リンカ&テリィ。意外に名コンビでした」
「今宵だけ、名コンビだイェー」
「今宵だけ、ありがと。でも、ミユリ。テリィたんを私なんかに預けちゃダメょ。私が巨乳だったら絶対奪ってたから」
「でも貧乳でしょ?貧乳相手じゃ負ける気がしないの」
「いつまでも油断してれば?私はテリィたんの相棒なんだから」
「ソレはね、友情なの。愛情じゃナイのょ」
ココでリンカは僕の方を向く。
「ねぇねぇ。ミユリみたいな超美人が何で貴方に惚れたのかしら。貴方ぐらいなら、私の方がお似合いだと思うけど。ねぇ。コレは貴方の目を覚ますために逝ってるのょ?」
「リンカ。君って、一見、強がりで血の気が多いように見えるけど、実は、頭が良くて繊細な…」
「ちょっと待って!わかったから!わかったから、もうヤメて。テリィたん、お話が気持ち悪い方向に脱線してる」
「ごめん」
「私の方こそ。さ、そろそろお出掛けしよっかなー」
ミユリさんが、カウンターから出て見送る。
リンカはワザとミユリさんに肩をぶつける。
「ありがと。ミユリ」
「いいのょ」
「ごきげんよう。テリィたん」
おしまい
今回は本格的ミステリーに挑戦(冗談デス)してCIAエージェントやら中国国家安全部&サイバー部隊などが登場させました。
リサーチしたネタを惜しみなく?入れ込んだ結果、結構重たい筆致になってしまい、今後の課題だと思います。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。