なろう作家I 2
二話目です。
よろしくお願いいたします。
なろう作家I 2
「前回の失敗は、執筆にかかる時間を計算しきれなかったことだ」
翌日の同じ時間、同じ駅の同じホーム。
昨日同様、立って電車を待つ男の姿があった。
「昨日は一駅乗り過ごしたわけだから、今から書き始めればピッタリなはず……」
そう考えた男は、立ったままイヤホンを装備した、音楽を流し始める。
「やっぱ何回聞いてもいいよなぁ……。OPも挿入歌も、男のバイブルでも活躍したシンガーソングライターさんが作ってるからな。ハズレるわけがない」
音楽に合わせて歌詞を口ずさみながら、男は執筆を開始する。
「今日は三話目。タイトルは……天通流 | 皆伝と免許皆伝。これでいこう」
三話目のタイトルを決めた男は、そのまま執筆に集中する。
『□□~。□□~。お降りの際は、お忘れものなどなさりませんよう、ご注意ください』
「おっ、電車が来た来た。今日もベストポジション確保だぜッ!!」
昨日と同じ、乗り換えなしの直通電車。
男が使っている駅はローカル線なため、30分に一本しか電車が来ない。
しかも直通運転は、朝と夜のみであり、男が乗るこの電車こそが、夜の直通の最初の電車だった。
「何かのってる気がする。これなら書ききれるッ!!」
男はイヤホンから流れる音楽の音量を上げ、更なる執筆へと没入していった。
………………
…………
……
『次は○○~。○○~。お出口は右側です』
「書き上がってしまった……」
男の計算通り、駅につく前に書き上がった第三話。
しかし想定よりも早く書き上がったゆえに、男のおりる駅の前で終わってしまったのだ。
「どうするか? このまま続けて書くか? いやだがしかし、また乗り過ごしてしまったら……」
悩む男。
その間にも電車は動き、男を目的地(おりる駅)へと誘っていく。
「書いてしまうか。やる気は十分だし、途中まで書いても、明日に持ち越せばいい」
そう決めた男は、再びの執筆作業を開始する。
「タイトルは……どうするかな? 天通流無手の型 | 気力と魔力。これでいこう」
タイトルが決まり、男の執筆スピードが上がる。
「これはもしかすると、三駅で書けてしまうかも?」
男は少しにやけながら、執筆へと没入した。
………………
…………
……
『まもなく▽▽~。▽▽~。お出口は右側です』
「はっ!? まだ書き上がって無いのに着いてしまう……。ならばおりたホームの椅子で執筆だッ!!」
今日の男は、なんとか乗り過ごすことなくおりられた。
しかしその代償として、真ん中ぐらいと言う中途半端な執筆状況へと陥ってしまったのだ。
「うぅ……寒い。何でまだ秋(この当時はまだ秋の初めでした)なったばかりなのに寒いんだよ……。けど後少しだし、頑張って書くぜッ!!」
男は寒さをこらえながら、すべてを書き上げるまで駅のホームで座っていました。
………………
…………
……
「よしっ、終わった。これで変えれる……」
なんと言うことでしょう。
男は書き上げた代償として、その手を凍えさせていました。
「明日はもう少し考えないとな。まだまだ頑張ろう」
男は明日書く次の話を想像しながら、自転車で家へと帰っていきました。
「なろうコン締め切り前に、区切りの良いところまで書き上げるッ!! 頑張るぞぉぉぉ」
男の声は夜空へと、白い息とともに消えていきました。
こっちはこれで打ち止めです。
また書き上げたらアップします。