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雨に踊るオブザーバ  作者: 山佐タツヨシ
第一章 戦場の住民
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レイニーリポート(2)

 あの〈事件〉をどこから語り始めるかと聞かれれば、私は迷いなく2017年7月28日の中東、アルドリカーネを選ぶ。


 事の遠因はさらに三十年前のソヴィエト共和国によるヤマト皇国侵攻へ遡る必要があるが、それを語るにはさらにその前から、そして終いには人類史を初めから全て語ることになってしまいかねない。だから、遡ることを諦めて、どこかを『始まり』としなければならない。

 『選ぶ』と書いたのはそういう意味だ。


 この日の最も特異な点に〈事件〉の主要な関係者が居合わせたという事が挙げられる。アナトリア国王を初めとする国元を離れることの出来ない要人を除いた全員が、である。


 そう。この日、全てが動き出したのだ。

 連綿と続く人類史、科学と魔法の転換点を彩る最後の魔法大戦。それまでの歴史全てが〈事件〉のための準備に過ぎなかったのだとしたら、その結実はまさしくこの日だった。

 全世界の人間、組織、全ての事象が堰を切られた濁流となって結末へと向かう。その喜劇の幕は、この日切って落とされたのだ。


 さて、『あの日』を語り始める前に、ひとつ前置きをしておこう。


 この連載は、現在ある種の決着を見た〈世界同時多発魔素暴走事件〉について、その真相を追ってゆくものである。

 しかし私はこの連載を単なる記事の枠に収めるつもりはない。この事件は壮大な物語だ。ならば、私が望むと望まざるとに関わらず、この記事もまたひとつの物語を綴ったものとなるに違いない。

 だが、記事を執筆している今現在になっても、決めかねていることがある。物語ならば必須とも言える主人公、あるいは狂言回し。それが決まっていないのだ。


 そこで私は、この決定を読者諸君に委ねる事を考えている。

 心配する必要はない。なぜならば、それに相応しい人物は、これから語る場に居合わせていないはずがないからだ。


(『レイニーリポート』初回より抜粋)

AMF - [Armored Magic Frame]


前線での大規模魔法の使用を主目的として運用される機動兵器。

世界各地の特定の場所で発掘される純魔法物質『素体』に外装・武装を施したもの。現代AMFにはさらにコンピュータを筆頭とした電装類が装備される。


四肢を持ち人間の動きを模倣するが、純粋な魔法媒体である素体の本来の機能は『杖』としての魔法の増幅である。

操作には特殊な術式が刻み込まれた遺物アーティファクトが必要であるが、その術式や構造は完全に秘匿されており、また、生産元・供給元共に明らかにされていない。


運用条件が魔素濃度が一定以上に達した雨中のみと非常に限定的な兵器であるものの、条件下においては実質無制限のエネルギーを以て、他の兵器の追随を許さない圧倒的な機動力・制圧力を発揮する。

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