1話
作中で不妊についての差別的な発言があります。不快感を覚える方はご注意ください。
全てを理解したとき感じたのは怒りと諦めだった。
簡単に説明するなら異世界トリップをしてしまったのだ。さすがにこれではあまりに端的なのでもう少し説明することにする。
私と親友の菜花が学校からの帰り道だった。生徒会の仕事で遅くなった私と手伝ってくれた菜花と話しながら歩いていた。すでに外路は真っ暗だったけど街灯や家々の明かり、それに二人ということも手伝っていつも通りの楽しい時間だった。
それがふいに破られたのはなんのことは一歩。踏み出した途端地面がなかった。あの恐怖は一生忘れないと思う。地面を踏みしめたはずの足が空を切り、それどころか地面を踏みしめていたはずの反対の足物からも何もなくなったのだから。
そのあとに体験したのはまっすぐに落下する浮遊感。内臓が浮き上がるような気持ちの悪い体験。ぐるぐると周囲全部が回っているような、自分がまっすぐなのか逆さなのかもわからない押し寄せるような不安感に視界が塗りつぶされていくようだった。
見慣れた道から暗闇に落ち、気づいた時には硬い地面の上にいた。
コンクリートや土や木ではないなめらかな感触。横たわった状態から鈍く痛む頭を押さえつつ顔を上げると、白い部屋が目に映る。
「え・・・?」
慌てて周囲を見回せばすぐ横に菜花も横たわっていた。
「菜花?!菜花!!」
「え?あれ?雪都ちゃん?」
「大丈夫?」
「うん?えっとここどこかな?」
きょろきょろと自分と同じように見回すが、言うまでもなく見覚えがない。
菜花からの質問に答えることもできず、ぐるぐるとさまざまな可能性が頭路よぎった。が、それを遮るように何人もの足音がここに近づいてくるのが聞こえた。
バンっと大きな音を立てて開かれた扉からなだれ込むように、何人もの男性が飛び込んできた。
そのあまりの異様さに知らず守るように菜花をぎゅっと抱き寄せる。
私は一目で異様と判断したのには理由がある。
どこのアニメのコスプレですかと言いたくなるような日本とは明らかに異なる文化様式の服装もさることながら、髪の色や目の色が明らかに見たことがなかった。金だって日本人からすれば緊張してもおかしくない色だというのに、銀や白どころではない。緑や赤、青としか言いようのない色の髪までいるのだ。かつらと言えればよかったが傍目にはそれが人工の色には全く見えない。
しかも何人かの腰には剣が吊るされている。しかも男たちの顔はどこか焦っていて友好的なものには到底見えなかった。