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ぼくはヒーロー  作者: 西岡 幸
第1章 『黒いコートの男』
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プロローグ ~いつもどおりの朝~

「いってきまーす!」

 お母さんの「いってらっしゃい」を聞く前に、ぼくは家を飛び出した。

 だって、もう7時55分!足が速くないぼくだと、全力で走ってもギリギリ遅刻しちゃうかもしれない時間だ。

 家を出てすぐの階段は3段とばしで(1回足をふみはずしそうになったけど)下りて、いつもの通学路を猛スピードでダッシュした。途中、近所の大人たちがあいさつしてくれたけど、ぼくは返事したかどうかわからない。それくらい全力で走った。

 今日遅刻しちゃったら、今週3回連続だ。あまり怒らない先生だけど、何度も同じことしてると怒る。怒ったら、学校で一番恐いかもしれない。お父さんほど恐いわけじゃないけど、やっぱり怒られるのは嫌だ。

 そんな時に限って通学路にたった一つある信号が赤で、ぼくの猛ダッシュは1分で止まらなきゃいけなかった。

 そこでソワソワしながら待っていると、いきなり腕をぶたれた。

 ぼくのうでをぶったのは、同じクラスの百花ももかだった。男子でもこいつに勝てるやつはいないくらい喧嘩が強くて、ぼくと同じくらい先生に怒られてる。お母さんたちはオテンバって言ってるけど、違うと思う。ぼくは“野生児”って言葉は百花のためにある言葉なんじゃないかって思ってる。

「痛いなぁ!なんだよ!」僕が寝起きのガラガラ声で言うと、百花はニヤニヤしながら似たようなカラカラ声でこう言った。

「今くらい走れば、運動会で一等賞だったかもね」

 ぼくがどんなに全力で走っても一等賞を取れないってことを、知っているくせにこういうことを言うんだ。でも、いちいち怒ってる場合じゃない。信号が青に変わって、ピヨピヨ鳴り始めたからだ。

「百花、そんなこといいから急ぐぞ!」車が止まっていることだけは確認して、ぼくはまた走り出した。

「ええ~、ウチおくれてもいいから走りたくな~い」と言いながら、百花もついてきた。

 横断歩道を渡りきって右へ行き、すぐ左の道へ曲がった。ここまでくれば小学校まであと200メートルくらいだ。(前にお父さんが言ってたから間違いないと思う)途中にあるバカデカい時計を見たら、まだ8時だったから、あと4分ちょっとある!それで、ちょっと気を抜いたら、百花に追い越された。

「ウチの勝ちだね~!」ニコニコして走っていく百花を、必死で追いかけるぼく。さっきとは逆になっちゃったけど、校門を通って玄関の時計を見て、二人で笑った。

「なんだ~、まだ4分もあるよ!」

 もう学校に着いたし、5年1組の教室までの時間も余裕があるのがわかったから、百花と昨日のお笑い番組の話をしながら教室へ向かった。教室に入って、みんなとおはようを言い合って朝の読書の時間。



この時は、今日もいつもどおりだって思ってたのに…

こんなことになるなら、お父さんがいつも言ってる事をちゃんと聞いておくんだった。

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