そして新しい季節が始まる……
チャイムが鳴った。廊下や校庭で元気よく騒いでいた子供たちがそれぞれの教室へ戻り、席に着く。が、席に着いてはみたものの、少しも大人しくしようという気はないらしく、後ろを向いて友達と夏休みのあれこれを話してみたり、隣の席の子の宿題を慌てて写していたり、夏休みの余韻をまだまだ楽しみたいという空気で教室は満ち溢れていた。
タケルは必死の形相でプリント集の最後のページを必死で埋めていた。
「お前、字、きったないなぁ。読めねーぞ?」
タケルの前の席の友達がにやにやしながらタケルをおちょくる。
「うるせー! 話しかけるな。俺は今必死なんだ!」
「あ、成田先生が来た」
「え、まじ? やっべ、あと二問だってば」
「うっそぴょ~ん」
「お前~」
思わず睨みつけるが、そんな事をしている場合ではないと気が付き、また慌ててプリントに向かい直す。その姿を見て、周囲の友人達はげらげら笑っている。
夏休みが終わった。
毎年の事ながら、最終日にねじりはちまきで宿題に取り組んだのだが、さすがに六年生ともなると宿題の量が多く、徹夜したにも関わらず全部は出来なかったのだ。
朝から母親にどやされながら、ぎんぎんに血走った眼で登校し、死に物狂いで残りを片付けているという具合だった。
トーマは教室の一番前の席で静かに座って、タケルの方を見てくすくす笑っている。トーマは毎年七月中には宿題のほとんどを片付けているので、タケルの大騒動は高見の見物だ。目標にしていた昆虫の観察も琴音のおかげで完成した。
覚醒した琴音は二日後に無事退院し、三日ほど一平の家に滞在してから東京に帰って行った。わずかの時間だったが、三人は一緒に楽しもうと約束した。弁当を持ってビオトープに行き、一日中遊んで過ごした。
それは一平のささやかな心遣いであった。警察や学校関係者には、琴音の体調がまだ安定していないと言ってくれたのだ。東京に帰れば、厳しい現実が彼女を待っている。事件の関係者として警察に事情を聞かれたり、身の回りの整理したり、過酷な日々が待っているだろう。せめて、ほんの少しでも夏休みを楽しませてあげたい。一平のそんな想いが、タケルには聞こえていた。
これから彼女がどうなっていくのか、それを考えるといてもたってもいられなくなる。が、今は全て忘れて、とにかく三人で過ごす時間を作りたかった。小学校最後の夏休みを、楽しい思い出でいっぱいにしなくては。誰も口には出さなかったが、三人の、いや、一平と竜介も含めて、想いは一緒だった。
だから最後に琴音と別れた時も「さよなら」とは言わなかった。一言、「またね」と言って、手を振りあった。
全てがいつも通りの生活に戻った。表面的にはそう見える。しかし、タケルもトーマも、夏休みの前とは何かが違っている事に気が付いている。ほんの一カ月半の時間ではあったが、二人にとっては確実に人生の何かを変える夏休みだった。
「あ、本当に先生が来たぞ、タケル!」
「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って……出来たぁ!」
タケルは鉛筆を置くと、一言叫んで机の上に突っ伏した。
「おはよう! 皆元気だったか~?」
成田先生がトレードマークの銀ぶち眼鏡とにやにや笑いで教室に入ってきた。にぎやかだった教室に少し改まった空気が流れる。
先生はぐるりと教室を見回し、満足そうにうんうんと頷いた。
「お、皆、結構日焼けしてるし? 楽しかったかぁ?」
楽しかった! つまらなかった! ハワイに行った! 塾の合宿だった! 口々に皆が大声で言い始めて、教室の中はまたにぎやかになる。
「はいはい、わかったわかった。どんな夏休みだったか、またゆっくり作文にでも書いてもらうからな~」
先生のにやにや笑いに教室からブーイングが飛ぶ。
「皆の超大作を期待してるぞぉ」
突っ伏しているタケルの頭にトーマの“声”が響く。
―ねえ、タケル。夏休みの話、書いたところで信じてもらえないだろうなぁ。きっと小説だと思われるよ。
タケルは思わずへへっと笑って顔を上げた。トーマがいたずらっ子のような目でタケルを見ていた。
淡いクリーム色で統一された広いフロアは迷路のように仕切られていて、小さな個室がいくつも用意されている。仕切りは薄くて、その向こう側に人影がなんとなく見えるので、この空間には何人もの人がいることが見て取れたが、よほど特殊な建材で作られているらしく、人の気配を感じさせないほど静かだった。
通路を一人の男が歩いている。背の高い、白いシャツ姿の男は竜介だった。静かな迷路を迷うことなく歩き、一つの部屋へと入る。
作業用のデスクとパソコンが置かれたその部屋の主は一平だった。
「何?」
パソコンに向かいキーボードの上に指を走らせていた一平は視線を上げずに、竜介に声をかけた。
「いや」
竜介は小さく肩をすくめ、一歩中に入ると一平の後ろに立ち、仕切りにもたれた。腕を組んで黙って一平のパソコンの画面を眺める。
「報告書出来た? 早く出さないとまた課長が火を噴くよ」
竜介はふふんと鼻で笑う。それについて答えるつもりはないらしい。沈黙が訪れ、一平の指がキーボードを叩くかすかな音だけが響く。
「もう夏休みも終わりだな……」
ふいに竜介が呟いた。
おや?っと言いながら、一平が手を止め、回転椅子をくるりと回して振り返った。
「珍しいね。竜介がそんなに入れ込むっていうのは」
穏やかな頬笑みを浮かべ、竜介を見る。竜介は迷惑そうに眉を潜めた。
「入れ込んでる訳じゃない。それと、俺の思考を勝手に読むなって言ってるだろう」
「仕方ないじゃない。他人の個室に入って来て、ばらばら思考をまき散らすのは竜介だよ。読むなって言う方が無理だって。聞こえるんだから」
一平は笑いながら、傍にあった丸椅子を竜介に勧めた。竜介はそれに腰を下ろす。長い手と足を面倒くさそうに組む。
「夏休み、か。盛りだくさんの夏休みだったろうね。彼らにとっては」
一平はまたパソコンに向かう。
「課長とも話してたんだけど。ねえ、竜介、彼は予想外の大物かもしれないよ」
一平は画面に映るデータに目を走らせながら呟く。
「琴音もそうだったけど、彼の家系にはテレパスと思われる人物が何代か続いているみたいだ。どうやら父方の遺伝子みたいだね。明治時代には神通力で金脈を掘り当てたなんていう山師もいるらしい」
「サイキックのサラブレッドか」
相変わらず皮肉たっぷりの口調だったが、一平はそれを受け流した。
「琴音が覚醒してから、彼と少し話した。彼の心も見せてもらったんだけど……。正直、驚いたよ。彼は火王神社の土地と空間に刻み込まれていた記憶を読み取っていた。四百年、いや、五百年近く前の記憶だよ」
「俺には今一つよくわからないんだが、誰の記憶だ?」
「龍の記憶」
「そんなもんが実際にいるはずないだろうが」
竜介が鼻で笑う。
「確かに龍はいない。あれは架空の生き物。あの村に伝わる伝説、覚えてる?」
「火龍伝説か?」
「そう。あれは結局、僕達と同類の人間、要するにサイキックの存在が生んだ悲劇だったんだ。当時、あの村に琴音のようなパイロキネシスの男がいた。彼は村人にとってはよそ者で、外から流れてきた人間だった。伝説には『海を渡って』ってあったからもしかしたら外国……大陸から来た人間だったのかもしれないね。それだけでも充分忌み嫌われる存在なのに、彼は恐ろしい能力を持っていた。村人にとっては脅威以外のなにものでもなかったろう。恐怖、偏見、対立、迫害、僕達にとってはおなじみの流れさ」
「……」
竜介は黙ったまま一平の言葉に耳を傾けている。
「そんな彼にたった一人理解者がいた。それが伝説に出てくる人身御供の娘だ。花嫁衣装をまとって龍の窟に送り込まれたって書いてあるけど、そんな綺麗な話じゃなかっただろう。パイロキネシスと恋仲になったのが運の尽き。男と村人との対立の果てに、共に追い詰められて、あの場で命を絶たれた。村人はその悲劇を伝説という形に作り変えて、その二人の魂を祀った。……まあ、そんなところだろうね」
「良心の呵責が伝説を作り上げたって事か。都合のいい罪滅ぼしだな。自分達が殺<あや>めた被害者を神様扱いにして崇<あが>めているんだから、人間なんていい加減なもんだ」
竜介はどこまでも容赦ない。一平は苦笑いするしかなかった。しかし彼の気持ちはよくわかる。龍に限らず、自分や竜介もまたサイキック故に苦い思いを舐めつくして今に至っているのだ。皮肉の一つや二つ、出て当然だ。
「その龍の無念の思いが、土地にしみついているということか?」
「そう。人の脳の活動は言ってみれば電気の活動だ。強烈な記憶や思いは強い電気エネルギーとして、その場の空間や物体に留まることがある。それが残留思念と言うやつだね。そして、あの村全体が極めて閉鎖的で昔のまんまの姿を残しているだろ。当時の記憶を刻み込まれた古い自然がそのまま残っていた。それに、なんといってもサイキックの記憶だからね。記憶自体が強いエネルギーで焼き付けられたという事もある。それにしても、四百年、五百年という時間の長さは半端じゃない。にもかかわらず、彼はその情報をいとも簡単に読み取った……。生きた人間の精神だけでなく、残留思念を読み取るサイコメトラーとしての能力も相当だよ」
竜介は無言で肩をすくめた。
「それに、琴音の覚醒だ。あのまま琴音が戻らなければ、いずれは僕がやっていたことだろうけど……」
一平は小さく首を振る。
「琴音の深層意識に入り込んで、琴音を引きずりだしてきた。それも、分裂していた琴音の人格を統合させている」
「人格の統合……」
「そう。普段の状態での琴音の能力なんて、言ってみれば、竜介がティースプーンを曲げるようなものだよ。幼い頃の火事、父親が根岸に殺された時の火事がきっかけで生まれた別の人格が彼女の中に眠っていたんだ。パイロキネシスとしての能力のほとんどを抱え込んでね。その眠りがあの儀式の最中に破られて、彼女の力がマックスで解放されてしまった……。身体も心も限界まで追い詰められた琴音は、自分の意識を全て封じ込めた」
一平は引き出しを開けて、中からチョコレートの箱を出す。銀紙に包まれた小さなチョコを竜介に無造作に放った。それを竜介はすばやく受ける。
銀色の包みを開きながら一平は呟く。
「人の心の殻を破るのは並大抵じゃない。まして深層意識に入り込んで、だよ。よほど訓練されたテレパスでも難しい。自分が帰ってこれない事もあるしね」
「お前は出来るんだろ?」
「まあね。でも、出来る事ならばしたくない。いくら僕達がダークウォーカーだからって言っても、人の心の闇ほど恐ろしいものはない……」
一平はチョコを口に入れると、ゆっくりとパソコンに向き直った。再びキーボードを叩き始める。
「彼はまだ自分の能力の大きさに気がついていない。少しは違和感を感じているようだが、自分の能力をちょっとした特技程度にしか捉えていない。笑っちゃうよ。今のところ、テレパスとしての能力よりも、サッカーの能力の方が彼にとっては十倍くらい大切みたいだからね。……いずれ彼が自分の能力の本当の凄さに直面した時、彼はどうするんだろうね。ちょっと怖いような、いや、可哀そうな気がするよ」
一平はすこし険しい表情を浮かべて黙りこんだ。キーボードの音が響く。
しばらくして竜介の頬に薄い笑みが浮かんだ。
「面白いんじゃないか。」
「?」
「新しいタイプであって、ある意味、もっとも原始的なタイプのサイキックなのかもな」
「どういう事?」
竜介はくくくっと小さく、しかし心底愉快そうに笑いだした。
「アイツ、アホだからな」
そしてゆっくりと立ち上がる。
「何も考えずに本能で動くヤツだ。難しい事は考えないだろうよ。ひたすら生きることだけを考えて、まっすぐ走り続ける野生動物だ。あいつにとってラッキーなのは、お前というテレパスと知り合えたことだ。ま、せいぜい調教してやるんだな。ライオンも調教次第で、『お手』くらいはするだろうよ。課長も喜ぶってもんだ。……邪魔して悪かったな。さて、俺も報告書書くか。どこかの龍みたいに課長が火を噴く前にな」
竜介は笑いながら出て行った。
それを見送る一平の頬にもほほ笑みが浮かぶ。
「野生動物ね……。確かにそうかも」
そして、パソコン画面に映る文字を読み返す。
モニタリング対象者リスト
No.54 川上 タケル
分類 テレパシスト
所在 高乃城市在住
監視対象優先レベル 1
報告および監視責任者 公安調査庁 第0部0課 中辻一平
十月。
夏の猛烈な暑さがいつの間にか過ぎ去って、空は宇宙が見えるくらいに澄みわたっていた。日中の日差しはまるで金色のガラスの破片のように透明で鋭い。
「スポーツの秋だよ、スポーツの秋!」
タケルは窓の外に目をやりながら満足気にうんうんと頷く。
「タケルは年がら年中スポーツばっかじゃん」
前の席の男子が振り向いてタケルに突っ込んでくる。
「何言ってんだよ、世間一般の話じゃないか。運動会もあるしさ」
「お、タケルが四字熟語でしゃべってる。世間一般だってさ」
「うるせ~よ。俺だって四字熟語くらい知ってるわい」
タケルはその男子の椅子の足を軽く蹴った。
「じゃ他は?」
うっと言葉に詰まったタケルは、やけくそのように身を乗り出して叫ぶ。
「や、焼肉定食っっっ! 他にも知ってるぞ、青椒肉絲っっっ!」
友人はかくっとずっこけた。
「それって四字熟語かぁ? 食い物ばっかじゃん。やっぱ、バカだな、タケル」
「わ~ん、いじめる、マナトがいじめる」
タケルは机に突っ伏して泣く真似をし、友人は椅子から転げ落ちそうになりながらげらげら笑い出した。
「はいはい、静かにしろよ~」
成田先生が教室の扉を半分開けて顔を覗かせる。
「朝の会を始めるぞぉ」
成田先生が大声で言いながら中に入ってくる。
いつもなら徐々に騒がしいのが静まってくるのだが、今日はまた違ったざわめきが教室に広がって行った。
突っ伏しているタケルにざわざわと波が伝わってくる。それは驚きと好奇心に満ちていた。
この時期に? 転校生??
か、かわいい……。
なに、この美人……。
美人の転校生? タケルは顔を上げて前を見た。教室の入り口に目をやり、
「なな、なに~っっっ?!」
思わず素っ頓狂な叫び声と共に立ちあがってしまう。
成田先生がびっくりしたような顔でタケルを見る。
「なんだ、タケル。座れよ。騒々しいな、お前は」
教室の扉の所に佇んでいた転校生は、びっくりするくらいの美人だ。黒くて長い髪、色白の優しい顔立ち、すらりと長い手足。まるで日本人形のような……。
窓際の一番前に座っていたトーマも弾かれたように立ちあがり、目を白黒させながら口をぱくぱくさせている。
「なんだ、トーマ、お前まで」
成田先生は怪訝そうにタケルとトーマを見比べた。
「まあ、いいや。中辻さん、入りなさい」
転校生は成田先生に促されて、歩みを進めた。教室中の視線が転校生に集中して移動していく。
先生は黒板に大きく転校生の名前を書いた。チョークが黒板に当たる硬い音が鳴り響く。先生はチョークを置くと、ぱたぱたと手をはたきながら振り向いた。
「今日から6年1組の新しい仲間だ。中辻 琴音さん。東京の学校から来た。小学校生活もあと半年ほどしかないけど、一緒にたくさん思い出を作ってください。皆、頼むぞぉ」
はあいという元気な声が教室に広がった。
タケルはキツネにつままれたような表情のまま琴音を見ている。
琴音が転校してきた? 何があったんだろう。それに、中辻? 確か琴音の苗字は真山だったはずだ。
ぐるぐると疑問が湧いては消えて行く。
唐突に、一平の顔が浮かんできた。そうだ、一平の苗字が確か中辻だ。という事は? どういう事だ?? 一平のニコニコ顔と、天然奥様、まり子の顔が交互に浮かぶ。
タケルはハテナマークをまき散らしながら茫然と転校生を見た。
琴音は成田先生に軽く背中を押されて、一歩前に出た。
「中辻琴音です。夏休みに少し高乃城にいましたが、とても素敵なところだと思いました。ここに転校してきて良かったと思っています。よろしくお願いします」
よく透る涼やかな声ではきはきと自己紹介をし、ぺこりと頭を下げた。
夏休みよりも、更に綺麗になったような気がする。なんだろうか、儚さがなくなったというか、凛としているというか……。出会った時の、不安に溢れて揺れていた琴音ではない。まるで別人のようだ。
タケルは目をぱちぱちさせながら、椅子に座る。
教室の中にほう~っという溜息が満ち溢れていた。クラス中の男子の目にハート型がきらめいているように見える。そう言えば、初めて琴音に出会った時のトーマもこんなだったっけ。タケルは吹き出しそうになった。
成田先生はぐるりと教室を見回した。
「中辻さんの席は……そうだな、今日は日直さんの後ろに……お、トーマか。色々と教えてやってくれ。席替えは今日の終わりの会でするから」
「は、はいっっ!」
トーマは「黒ひげ危機一髪」みたいにぴょんと飛び上がった。
「そんな緊張しなくても……」
成田先生が笑いながら手で座るように合図する。
琴音はトーマを見て、にこっと笑ってみせた。トーマの顔がかああああ……っと赤く上気する。その様子を見たクラスメート達の好奇のさざ波が、教室の中を駆け巡りはじめる。
あ~あ、トーマのヤツ。これからさんざんクラスメートにおちょくられっぞ、とタケルはすこし同情した。
トーマの列の生徒達が机一つ分ずつ、後ろにずれて行き、先生は教室の後ろに置いてあった空き机を持ち上げると、トーマの後ろに置く。
琴音はその席に移動すると、後ろの席の女子ににっこり笑いながら、ありがとうと声をかけた。女子は嬉しそうな笑顔で囁く。
「何でも聞いてね。トーマくん、ちょっと頼りないから」
琴音は笑いながら小さく頷き席についた。
「ほいほい、じゃあ、授業を始めるぞぉ!」
先生はパンパンと手を打って生徒たちの集中を自分へと向ける。
ざわざわしていた教室は次第に静かになっていく。
―タケルくん!
タケルの頭の中に声が届く。聞きなれたトーマの“声”ではない。
びっくりしてきょろきょろと周りを見回すと、カバンから教科書を出していた琴音が、ちらっと視線をタケルに投げてよこした。目が合う。
琴音の頬に笑みが浮かぶ。
―これからも、よろしくね。
琴音の声だった。
タケルは一瞬びっくりしたが、にやっと笑うと左手の親指をギュッと立てた。
残りの半年、楽しくなりそうだ……。
<了>
……あ~、長かった。
苦労した割にはちっとも報われないこの作品に、長らくお付き合い頂き、誠にありがとうございました。本当は竜介と一平を主人公にしたダークウォーカーを考えていたのが、何故か子供向けを書く事に……。そのうち元々のプロットでも書きたいと思っています。気が向けば……ですけど。