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それは愛



檻の中で、オークはじっとガレスを見つめていた。


その視線に、ガレスの背中を冷たい汗が伝う。


「……おい」


思わず声が漏れる。


オークは何も答えない。ただ静かに立ち上がり、巨体を揺らしながらゆっくりとガレスへ近づいてくる。


檻の床が、ぎしりと鳴った。


ガレスは反射的に後ずさる。


「襲わないって言ったのは嘘か……?」


相手はオークだ。


武器もなく、逃げ場もない。


緊張で喉が乾く。


オークはガレスの目の前まで来ると、ゆっくりと腕を伸ばした。


「……は?」


次の瞬間、ガレスの服を掴む。


布が乱暴に引き裂かれた。


「ちょ、待て!」


抵抗する間もなく、服は次々と剥ぎ取られていく。


あっという間にガレスは身軽な格好にされてしまった。


「アーヴィン!」


檻の外へ向かって叫ぶ。


「襲わないってのは嘘か!」


「助けてくれ!!」


しかし外で見ているアーヴィンは、目を輝かせてその様子を観察しているだけだった。

完全に研究者の顔である。


「くそが……!」


ガレスが悪態をついた瞬間。


オークの大きな手が、ガレスの腹の下あたりを探るように触れた。


その瞬間だった。


ズキンッ!!


鋭い痛みが、ガレスの体を貫いた。


「ぐっ……!」


思わず体を折る。


そこには、もう何もないはずだった。


すでに失った場所。


それでもまるで、そこにまだ何かがあるかのように痛みが走る。


幻肢痛だった。


存在しないはずのものが、強く圧迫されたような感覚。


「っ……!」


視界がぐらりと揺れる。


その様子を見て、オークはじっとガレスを観察していた。


そして――


どこか嬉しそうに鼻を鳴らす。


次の瞬間、オークはガレスの手を掴んだ。


「……?」


何をするつもりだ。


そう思う間もなく、その手を自分の腹の下へと押し当てる。


ガレスは完全に混乱していた。


意味が分からない。


しかしその直後。


オークの体がびくりと震えた。


「ブモッ……!」


目を見開き、口から泡を吹き始める。


巨体がぐらりと揺れ、その場に崩れ落ちた。


「……は?」


ガレスは呆然と立ち尽くす。


それは――幻肢痛だった。


そこへ、檻の奥にいた残りの二匹のオークが近づいてくる。


二匹は倒れた仲間とガレスを見比べる。


そして何かに納得したように、ゆっくりと頷いた。


「……おい、待て」


嫌な予感がした。


しかし遅かった。


二匹のオークはそれぞれガレスの手を取り、自分の腹の下へと押し当てる。


「やめろって――」


ビクンッ!!

「ブモッ!!」


二匹のオークも白目をむき、口から泡を吹きながらその場に倒れた。


檻の中に静寂が落ちる。


倒れている三匹のオーク。


立ち尽くすガレス。



もう一度言うが――幻肢痛である。



基本的に、オークはバカである。


「……何がしたんだよ……」


ガレスは力なく呟いた。


檻の中では、怯えたガレスと三匹のオークが転がっている。


そして檻の外では――


アーヴィンが、目を輝かせながら猛烈な勢いでメモを書き続けていた。



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