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トロちゃんの行き先


 レオン達は騎士団に囲まれながら街を歩いていた。


 その後ろを――


 ドスン。

 ドスン。

 ドスン。


 三メートル近い巨体のトロールがついてくる。


 街の人々がざわめいた。

「トロールだ……」

「なんで街にいるんだ!?」

「おい、あれ……」

「トロール踏んでた魔導士じゃないか?」


 レオンは聞こえないふりをした。

「最悪だ……」


 ミリアが楽しそうに言う。

「もう噂になってるね」

「嬉しくない」


 トロちゃんは嬉しそうにレオンの後ろを歩いている。

 完全に保護者を見つけた子供のようだった。


 やがて一行は騎士団本部へ到着し、そのまま騎士団の訓練場へ連れて行かれた。


---


騎士団訓練場


 騎士団長は腕を組み、レオン達を見ていた。

 その後ろではトロちゃんが大人しく立っている。

 訓練していた騎士達も全員こちらを見ていた。


「つまり」


 騎士団長が言う。


「森でこのトロールと遭遇し」


「お前に懐いたと」


「……はい」


 レオンは小さく答えた。


 騎士団長はトロちゃんを見上げる。


「トロールが人間に懐くなど聞いたことがない」


「何をした」


 圧が強い。


 レオンは観念した。


「……キンタマを潰しました」


 騎士達がざわつく。


「……もう一度言え」


「キンタマを潰しました」


 騎士団長の額に青筋が浮く。


「それだけで懐くわけがない」


 レオンは説明する。


「トロールって再生能力ありますよね」


「……あるな」


「潰すと再生するんです」


 嫌な空気が流れる。


「再生した瞬間」


「また潰しました」


 騎士達の顔が引きつった。


「それを」


「再生して」


「また潰して」


 ミリアが横で言う。


「五回くらい?」


 アリスが言う。


「七回くらいじゃない?」


 訓練場が静まり返った。


 騎士の一人が呟く。


「悪魔か……」


 騎士団長は額を押さえた。


「……とにかく」


 レオンを指差す。


「このトロールが街で被害を出した場合」


「全ての責任はお前が取れ」


「え?」


「全部だ」


 レオンの顔が青くなった。


 ミリアが小声で言う。


「トロちゃん怒らせたら終わりだね」


「やめて」


 騎士団長は言った。


「騎士団では預かれない」


「どこか別の場所へ連れていけ」


---


冒険者ギルド裏訓練場


 次に向かったのは冒険者ギルドだった。


 トロちゃんは建物に入れないため、ギルド裏の訓練場に立たされている。


 噂を聞きつけた冒険者達が集まってきた。


「トロールだ……」

「マジかよ」


 やがてギルドマスターが現れた。


「……説明しろ」


 レオンは事情を説明する。


 最後まで聞いたギルドマスターは額を押さえた。


「……おい」


「はい?」


「前にも言ったよな」


 嫌な予感。


「オーク」


 レオンは固まった。


「覚えてるか?」 


「……はい」


「オークを殺さず持ってきて」


「怒られたよな?」


「はい……」


 ギルドマスターが怒鳴る。


「トドメ差してから持ってこいって言ったよな!!」


「言いました!!」


「なんで気絶すらしてないもん連れてきて…悪化してるだろ!!」


「ほら、ウルフやボアとかはちゃんと素材だけですよ」


レオンは少し言い訳をする。


 ギルドマスターはため息をついた。


「ソレを運んだのがトロールだろ、それが問題だ!」


「無理だ」


「ここにトロールは置けない」


「責任が取れない」


 レオンは肩を落とした。


「ですよね……」


---


魔法学院


 結局レオン達は学院へ戻った。


 門をくぐる。


 ドスン。


 トロちゃんも学院の敷地へ入る。


 生徒達が振り向いた。


 一瞬の沈黙。


「……トロール?」

「モンスター!?」

「誰か先生呼べ!!」


 学院は一瞬で騒ぎになった。


 その時だった。


「騒がしいですね」


 落ち着いた声が響く。


 人垣が割れた。


 学院長だ。


 学院長はトロちゃんを見上げ、レオンを見る。


「説明してもらえますか」


 レオンが必死に説明していると、トロちゃんが自分の頭を指さした。


 どうやら騎士団で頭を踏んだら理解してもらえたことを思い出して、同じことを提案しているらしい。


「えぇ~」


 レオンは嫌だと言いたいが、やるしかないと理解していた。


 トロちゃんは土下座して額をレオンにズリズリと擦り付ける。


 仕方なくレオンは頭を踏む。


---


「どうやって服従させたのですか?」


 レオンは言った。


「……キンタマを潰しました」


 空気が凍る。


「再生した瞬間」


「また潰して」


「それを何回かやったら服従しました」


 生徒達が青ざめる。


「拷問だろ……」

「トロールの方が可哀想だ……」

「再生能力が仇となってる…」

「だから土下座して許しを求めたのか…」

「そんな可哀想な奴の頭を踏みつける…」

「悪魔だ…」


 学院長は腕を組んだ。


「なるほど」


「学院としても興味がありました。」


「え?」


「あなたの魔法」


「【去勢】です」


 教師達が頷く。


「去勢魔法は希少な特殊魔法」


「研究価値が高い」


 校長は続けた。


「それに」


「あなたは以前」


「強盗団をまとめて去勢しましたね」


 生徒達がざわめく。


「やっぱりあの人か!」


「強盗団のキンタマ全部潰したって噂の!」


「【去勢のレオン】」

「【睾丸コレクター】」

「【キンタマドレイン】」


「その名で呼ぶな!」


「てか、知らないの増えてる!」


「キンタマドレインって何!?」


 レオンは泣きそうだった。


 一斉にレオンを見る。


 距離を取る生徒もいる。


「怒らせたら終わりだ」

「キンタマ潰される」

「取ったキンタマ吸収してるって」


 レオンは叫んだ。


「潰さないから!」

「吸収してない!」


 ミリアが笑う。


「説得力ないよ」


 アリスも頷いた。


「今さっき言ったばかりだし」


 レオンは頭を抱えた。


「理不尽だ……」


 校長は話を戻した。


「研究塔地下に大型モンスター用の檻があります」


「そこなら管理できます」


 レオンは深く頭を下げた。


「ありがとうございます!」


---


研究塔


 研究塔の門を通り、入口まで行くと白衣を着た研究者が待っていた。


「よく来たね!はじめまして。私はアーヴィン・クロイス、よろしくね!」


 ――俺でも知ってる有名人だ。

 サイコパス、マッド、倫理観を生まれたときに忘れてきた男。


こんな奴にトロちゃん預けていいのだろうが?


 挨拶もそこそこに、トロちゃんは研究塔地下へ連れてこられた。


「とりあえず部屋に入れないと落ち着いて話もできないしね」


 部屋というより檻だが、仕方ない。


 その時だった。


「お前は……」


 聞き覚えのある声。


 檻の中には――


 三匹のオーク。


 そして、


「お前……なんでここに……」


 ガレスだった。


 その瞬間。


 ドスン。


 トロちゃんが檻の前に立つ。


 オーク達が震えた。


「ブモッ……」


 だが次の瞬間、オーク達の視線が――

 レオンへ向いた。


 ビクッ!!


「ブモォォォ!!」


 三匹同時に檻の奥へ逃げた。


 ガレスも壁まで下がる。


「来るな!!」

「近づくな!!」

「もうやめろ!!」


 レオンは困惑した。


「え?」


 ミリアが言う。


「トロちゃんよりレオン君の方が怖いみたい」

「あの怯えかた、あの時のオークじゃない?」


 アリスも頷いた。


「まあ……やってること考えたら」


 レオンは頭を抱えた。


「理不尽だ……」


 オーク達は震えていた。


「ブモォォ……」


 研究塔地下に怯えた鳴き声が響いた。




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