新たな仲間(トロールがなついた)
怯えたトロールはどうするか考えていた。
巨大な体を震わせ、本能が戦うことを拒絶している。
「どうする?」
ミリアが小声で聞く。
「去勢しても時間稼ぎにしかならないよね?」
アリスが腕を組んで言った。
「多分倒すのは無理だ」
沈黙が落ちる。
「……ちょっと試してみる」
レオンはそう言って、ゆっくりとトロールに近づいた。
手をかざす。
その瞬間――
トロールはバッと両手で股間を押さえた。
「……」
「……」
「やっぱりトラウマになってる」
ミリアが小さく呟く。
レオンはさらに一歩近づいた。
するとトロールは慌てて両手を振り回し、必死に何かをアピールしている。
「ん?」
レオンは首をかしげた。
「もしかして……降参?」
その瞬間だった。
トロールはその場にドスンと座り込み、巨大な頭を地面に擦りつけた。
ズリ……ズリ……
完全な土下座である。
アリスの目が光った。
「レオン君!」
「え?」
「それ、服従のポーズだよ!」
「え?」
「トロールの群れの中で、ボスに従う時のやつ!」
アリスは興奮気味に説明する。
「モンスター生態図鑑に書いてあった!」
「へぇ」
「だから――」
アリスは指を差した。
「トロールの頭、足で踏んでみて!」
「え?」
「踏むのが服従を受け入れる合図!」
「えぇ……」
言っていることは分かる。
分かるが――
絵面が最悪である。
レオンは恐る恐るトロールの頭に足を乗せた。
ぐっ……
トロールはピクリと震え――
そのまま安心したように力を抜いた。
「……」
「……」
「踏まれて安心するなんて」
ミリアがぼそっと言う。
「変態にしか見えないね」
「やめて」
レオンは静かに突っ込んだ。
しばらくして。
トロールは立ち上がり、レオンの後ろにピタッと立った。
「……でもさ」
ミリアが言う。
「どうする?」
「言葉通じないよ」
レオンは身振り手振りで「帰れ」と伝えてみた。
森を指差し、
「帰れ」
ジェスチャー。
トロールは頷く。
……が。
動かない。
レオン達が森から出ようと歩き出すと――
ドスン
ドスン
ドスン
後ろからついてくる。
「マジでどうしよう?」
レオンが振り返る。
トロールは忠犬のように立っていた。
「トロちゃんにさっき倒したモンスター運んでもらおうよ」
ミリアが言った。
「トロちゃん?」
レオンが聞き返す。
「うん」
ミリアはトロールを指差した。
「トロちゃん」
「……」
何か名前ついてるぞ。
アリスも言う。
「トロールにちゃん付けは可愛すぎない?」
ミリアは胸を張る。
「可愛いよ?」
「いやデカすぎるだろ」
レオンは真顔で言った。
そして一番重要な問題を口にする。
「まさか……」
「連れて帰るつもりか?」
ミリアはニコッと笑った。
「駄目かな?」
「いや無理だろ!」
レオンは即答した。
「気絶したオークでも怒られたのに!」
アリスも頷く。
「トロールが歩いて街に近づいたら――」
その瞬間。
三人の脳裏に同じ光景が浮かんだ。
城門。
騎士団。
そして――
「モンスター襲来だあああ!!」
「討伐隊出動!!」
「弓兵構え!!」
「魔導士準備!!」
ドガーン!!!
トロちゃん爆発。
「……」
「……」
「……」
三人はゆっくり振り返った。
トロちゃんは嬉しそうに尻尾……は無いけど、そんな雰囲気で立っている。
「……どうする?」
レオンが聞いた。
ミリアは言った。
「バレなきゃ大丈夫」
「絶対バレる」
レオンは断言した。




