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帰れない気がする



「……今日」


「帰れるよな?」


俺がそう言った直後だった。


ドン。


ドン。


ドン。


森の奥から、重い足音が聞こえた。


三人同時に固まる。


ミリアがゆっくり振り向いた。


「……今の」


アリスが小声で言う。


「さっきのワイルドベアより重くない?」


俺も同じことを思っていた。


というか――明らかに重い。


ドン。


ドン。


ドン。


足音はゆっくり近づいてくる。


地面が微かに揺れる。


ミリアが剣を握り直した。


「レオン」


「うん」


俺は魔法を撃てるよう構える。


茂みが揺れた。


バキッ。


太い枝が折れる音。


そして――


出てきた。


巨大な影。


灰色の皮膚。


二本足で歩く巨体。


身長は三メートル以上。


腕は丸太みたいに太い。


「……トロール」


ミリアが呟いた。


俺は固まる。


「いやいやいや」


「ここ浅い森だよな?」


トロールは普通――

中層よりさらに奥にいるモンスターだ。


トロールは俺たちを見つけると、


ニヤァ……


と笑った。


「グォォ……」


唸り声。


そして――


ドンッ!!


地面を踏み鳴らす。


「来る!」


ミリアが叫んだ。


トロールが突進する。


ドゴォ!!


木を薙ぎ倒しながら走ってくる。


「発動!!」


俺は魔法を撃った。


光がトロールを包む。


一瞬。


トロールの動きが止まる。


そして――


ドォン!!


巨体が倒れた。


沈黙。


俺は息を吐いた。


「……よし」


ミリアが眉をひそめる。


「いや」


「よしじゃない」


「え?」


ミリアがトロールを指差す。


「トロールって」


「再生する」


「……え?」


その瞬間だった。


ぐちゃ。


トロールの体が動いた。


折れた腕がぐにゃりと戻る。


潰れた胸が膨らむ。


肉が再生していく。


俺は叫んだ。


「嘘だろ!?」


アリスが興奮している。


「すごい!」


「トロールだ!」


「いや研究してる場合じゃない!」


トロールがゆっくり起き上がる。


「グォォォ……」


怒ってる。


めちゃくちゃ怒ってる。


ミリアが叫ぶ。


「レオン!」


「もう一回!」


「わかった!」


俺は再び魔法を撃つ。


「発動!」


光。


トロール。


ドォン!!


また倒れる。


沈黙。


三秒。


四秒。


五秒。


ぐちゃ。


「また動いた!!」


俺は叫んだ。


ミリアが言う。


「レオン」


「うん」


「これ」


「何回やるの?」


俺は遠い目になった。


「……俺に聞くな」


起き上がったトロールは、俺たちを見た。


だが、さっきまでと表情が違う。


……恐れてる?


何度でも再生できるのに?


「なんか、あいつ様子おかしくない?」


ミリアが首をかしげる。


「ビビってるよね……多分?」


アリスが言った。


「トロールって、再生しなくなるまで何度も殺さないといけないから大変だって聞いたよ」


「それに、何度やられても恐怖を感じないみたいに襲ってくるって」


なのに。


あの反応は――明らかにビビっている。


……そうか!


俺はひらめいた。


「分かったぞ!」


「アリス、想像してみろ!」


二人がこちらを見る。


俺は言った。


「起き上がるたびにキンタマ潰されるってのを」


アリスの表情が歪む。


「拷問だよ、それ」


ミリアがぼそっと呟いた。


「……そんなにつらいんだ」



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