表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/31

森に来たよ


「今日はありがとうね。付き合ってくれて。」


アリスはにこっと笑った。


森の中は静かだった。

木漏れ日が差し込み、風で葉がさわさわ揺れている。


俺とミリアは警戒しながら歩く。


「で、何を採取するんだ?」


俺が聞くと、アリスは地面を指差した。


「これ」


そこには小さな青いキノコが群生していた。


「……キノコ?」


「うん。魔力回復ポーションの材料」


アリスは手際よくナイフで根元から切り取り、籠に入れていく。


「へぇ……錬金ってこんなのから作るのか」


「そうそう。素材集めが一番大変なんだよ」


ミリアがしゃがみ込んで観察する。


「毒は?」


「この種類は大丈夫」


「ほんと?」


「多分」


「多分!?」


俺は思わず叫んだ。


アリスは笑った。


「冗談冗談。ちゃんと調べてあるよ」


俺は少し安心する。


そのとき。


ガサッ。


近くの茂みが揺れた。


俺とミリアは同時に振り向く。


「……来るよ」


ミリアが小声で言う。


茂みから現れたのは――ゴブリン三匹だった。


緑色の小柄な魔物。


だが目がいやらしく、手には短剣を持っている。


「ギヒヒヒ」


「ギャアッ!ギャアッ!」


「ギョッ!ギョッ!」


ゴブリンの視線がアリスに向く。


アリスは少し後ろに下がった。


「……来たね」


ミリアは魔法を撃てるよう構える。


「レオン」


「わかってる」


俺は前に出る。


ゴブリンは笑っていた。


……うん。


俺は深呼吸した。


「発動――!」


魔法陣が地面に広がる。


光が三匹を包み込む。


次の瞬間。


ゴブリンたちは一斉に固まった。


「「「ギョギャア!!」」」


そして。


ドサッ。


三匹同時に泡を吹き、地面に倒れた。


静寂。


ミリアがぽつりと言う。


「……やっぱり効くんだ」


「効くんだな……」


俺も遠い目をした。


ゴブリンはぴくぴくしているが、完全に戦闘不能だ。


アリスが興味深そうに近づく。


「へぇ……」


「やめろ危ない」


「大丈夫。動けないよ」


アリスはゴブリンを観察する。


「すごいねこの魔法」


「すごくない」


「いやすごいよ」


アリスは真面目な顔で言った。


「攻撃魔法って、実戦では強い魔法が使えるかより、当てられるかの方が難しいんだよ」


「え?」


「しかも三体同時に」


ミリアが頷く。


「確かに。盗賊団の時もオークの時も、玉を取ったってインパクトが強すぎてそこに気づいてなかった」


「言い方!」


俺は思わずツッコむ。


アリスが続ける。


「僕は盗賊やオークがやられるのを見てないから、噂話を聞いたときは疑問だったんだ」


「どうやって複数の敵と戦ったんだろうって」


ミリアが俺を見る。


「魔法を撃つ時、どういう感じで狙ったの?」


俺は首をかいた。


「いや……」


「ただ三体に“あいつらに撃つぞ”って考えたら」


「いけるって何かわかった」


二人が固まった。


「……何それ」


「全然普通じゃないよ!」


ミリアとアリスがハモった。


ミリアが興奮気味に言う。


「普通魔法を撃つときは、頭の中で魔法陣を描いて、魔力を込めて、方向を決めて撃つの!」


「うーん……弓を撃つのに近いかな」


「確かに生活魔法程度ならレオンの言う通り、イメージだけでもできるけど」


俺は肩をすくめる。


「そう言われても俺……」


少し言葉に詰まる。


「火と氷、あと回復の生活魔法しか使え無いし」


「俺は去勢以外まともに出来んから、わからんかった」


言ってから、少しだけ胸の奥が重くなった。


……去勢以外まともに出来ない。


自分で言ってて、なんかちょっと落ち込む。


学院の魔法学部に通ってるのに。


俺のまともな魔法って――


去勢だけ。


ミリアがそんな俺を見て…吹き出した。


「レオン……去勢以外何も出来ないって面白すぎるんだけどっ!」


アリスは少し考え込む。


「レオン君」


「ん?」


アリスは首を傾げた。


「本当に去勢って魔法なの?」


「言い方おかしいぞ」


俺はツッコむ。


アリスは少し笑った。 


「でもさ」


「この魔法」


そして言った。


「ドラゴンとも戦えるんじゃない?」


俺は即答した。


「嫌すぎる!」


「ドラゴンなんて出会いたくない災害だよ!」


森の中に俺の叫びが響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ