アリスからの相談
ミリアと一緒に昼食を食べるため、食堂へ向かって廊下を歩いていると――
「レオンく〜ん♪」
明るい声が後ろから響いた。
振り向くと、アリスが満面の笑みでこちらに走ってくる。
「今から食堂?」
「そうだけど」
「一緒に行っていい?」
「いいぞ」
「ほんと!?やった!」
アリスは嬉しそうに俺の隣に並んだ。
「そうだ、紹介する。こいつはミリア。俺の幼馴染」
「ミリアだよ。アリスのことはレオンから聞いてる」
ミリアはニヤニヤしながらアリスを見た。
「……ほんとに男の子?」
「おい!初対面でそれ言うな!」
「大丈夫だよ。よく言われるし、慣れてるから」
アリスはあっさり笑った。
メンタル強すぎだろこいつ。
三人で食堂へ入り、昼食を取る。
食べ終わって席でくつろいでいると、アリスが少し真面目な顔になった。
「実はさ」
「相談があるんだ」
嫌な予感しかしない。
俺に来る相談は、だいたい碌でもない。
「今度の休み、森に一緒に入ってほしいんだ」
「森?」
「素材採取したくて。でも一人だと危ないし」
……意外と普通だった。
「前はバルガスと行ってたんだけど……」
アリスは苦笑する。
「この前の件もあるし」
「あー……」
それはまあ、そうだろう。
あの事件のあとで、あいつと二人きりで森に入るのは嫌すぎる。
「わかった。いいぞ」
「ほんと!?」
アリスの顔がぱっと明るくなった。
「でも俺、正直弱いぞ」
「え?」
「魔法はアレしかないし、身体強化も低い。たぶんミリアより力ない」
「そうなの?」
アリスは少し驚いた顔をしたあと――
なぜか、口元がほんの少しだけ上がった。
「……へぇ」
「?」
「どうした?」
「ううん。なんでもない」
絶対なんか思っただろ今。
「ミリアも来るよな?」
「もちろん」
ミリアは楽しそうに笑った。
「森はモンスター出るしね」
「うん」
「でもさ」
ミリアは笑顔のまま続ける。
「モンスターとバルガス、どっちが襲ってくるかわからないよね」
「お前ほんと遠慮ないな!」
アリスも苦笑した。
「……でも正直、ちょっと怖いかも」
「いっそバルガスに魔法使えば?」
ミリアがさらっと言う。
「おい」
「軽く言うな」
「冗談だよ」
……目が全然冗談じゃない。
「俺は基本、人に使いたくない」
「ふーん」
ミリアは顎に手を当てて考え込む。
そして、ぽつりと言った。
「そういえば前から気になってたんだけど」
来た。
絶対ろくでもない質問。
「レオンが取った“玉”ってさ」
「言い方!!」
食堂に俺の声が響いた。
「どこに消えるの?」
「完全消滅?」
「それともレオンが吸収してるの?」
「待て待て待て!!」
「吸収とか言うな!」
「そんな能力あったら俺が一番嫌だわ!」
ミリアは真顔で言う。
「でも魔法的にはあり得るよ?」
「あり得ない!」
アリスはくすくす笑っている。
「面白いね、二人」
「面白くねぇよ!!」
結局、話はかなり脱線したが――
今度の休み、俺たちは三人で森に行くことになった。
その頃。
少し離れた席で会話を聞いていた男子生徒たち。
「……今聞いたか?」
「聞いた」
「レオン……」
一人が震えながら言う。
「取った玉、吸収してるらしい」
「は?」
「魔力に変えてるって話だ」
「なにそれ怖っ!!」
「近づいたら強くなるタイプじゃねぇか!」
こうして――
またしても、どうでもいい噂が学院中に広がっていくのだった。




