友達出来ました!
教室で腫れ物扱いされているレオン。
ミリアがいなければ完全なぼっち――そんな彼のもとに、珍しく人がやってきた。
「……ちょっといいか?」
低く太い声。
振り向くと、がっしりした体格の男子生徒が立っていた。肩幅が広く、いかにも前線に立つ戦士といった雰囲気だ。だが、レオンには見覚えがない。
「俺は戦士学部のバルガスだ」
「……で?」
「お前に頼みがある!」
レオンは面倒くさそうに眉をひそめた。
「先に言っとくけどな。
“お前が狙ってる女の好きな男を去勢してくれ”とかなら断るぞ」
「違う!!」
バルガスは思いきり否定した。
「そんなクズみたいな事、言うか!」
「じゃあ何だよ」
バルガスは隣に立っていた人物の肩を掴んだ。
「コイツのことだ」
レオンは視線を向ける。
そこにいたのは――女の子、にしか見えない人物だった。
小柄で華奢。顔立ちも整っていて、可愛い部類に入る。だが制服を見ると男子用だ。
つまり、男。
「僕は錬金学部のアリス。よろしくね」
柔らかい声でぺこりと頭を下げる。
……名前まで男女どっちかわからない。
レオンは軽く頭をかきながらバルガスを見た。
「それで、頼みって?」
バルガスは真剣な顔で言った。
「コイツを、お前の魔法で女にしてくれ!」
「……は?」
教室の空気が一瞬止まった。
レオンの思考が高速で回る。
(あー……なるほど)
きっとアリスは昔から女になりたいタイプなんだろう。
見た目も女っぽいし、勇気が出なくて言い出せない。だから幼馴染が代わりに頼みに来た――
そう結論づけ、レオンはゆっくりアリスを見る。
だが。
アリスは――
目を見開いて固まっていた。
完全に「初耳です」という顔だ。
「……おい」
レオンはバルガスを睨む。
「アリスが驚いてるんだが?」
「ああ、言ってない」
「は?」
「でも俺は、アリスが女であって欲しいんだ!」
バルガスは拳を握りしめた。
「俺、コイツのこと好きなんだ!!」
教室の空気がさらに冷えた。
ドン引きである。
レオンはもちろん、アリスもドン引きしていた。
幼馴染(同性)が自分に惚れていた。
しかも同性愛ではなく、女にして恋人にしようとしていた。
「どクズじゃねーか!」
レオンは即座に言った。
そして淡々と続ける。
「ちなみに俺の魔法、女には出来ないぞ」
「え?」
「取るだけだから」
バルガスの顔が青ざめた。
「……」
「……」
「……」
数秒の沈黙。
「ちょっと本気で無理」
アリスが小さく言った。
その一言がトドメだった。
バルガスはその場で崩れ落ちそうなほどショックを受ける。
レオンは呆れながら言った。
「……何で受け入れてもらえると思ったんだよ」
アリスはため息をついた。
「ごめんね、クズ連れてきちゃって」
かなりはっきり言った。
幼馴染に対して容赦がない。
「いや、アリスは連れてこられたんだろ。完全に被害者じゃん」
「ほんと最低だよね。僕の性別、勝手に否定するとか」
アリスはふっと笑った。
「でもレオン君って、意外といい人なんだね」
「……は?」
「噂と全然違うや」
そして少し身を乗り出して言った。
「友達になってくれない?」
レオンは目をぱちぱちさせた。
「え?怖くないの?」
「全然」
アリスはあっさり言う。
「レオン君、僕に魔法使わないでしょ?」
「当たり前だろ!」
「だったら大丈夫!」
にこっと笑う。
レオンは少し照れくさそうに頬をかいた。
「……そっか。なら、よろしく」
「ありがとう!」
アリスは嬉しそうに笑った。
「じゃ、今日はもう行くね。学部戻らないと」
くるりと背を向けて歩き出す。
そして小さくつぶやいた。
「やっぱり男どうしじゃないとね」
レオンには――
しっかり聞こえていた。
「……え?」
首を傾げる。
「どういう意味?」




