偽りの聖剣を契約解除いたします
消費者契約魔法使いドラキチは、異世界で今日も悪徳商人たちをバッタバッタと成敗していく。ドラキチの活躍により、異世界のマーケットは少しずつクリーンになっていくとか、ならないとか……。
「この『真・エクスカリバーもどき』、なんと今なら魔王討伐実績付きで破格の1000万ゴールド! さあ、勇者殿、サインを!」
薄暗い路地裏で、いかにも胡散臭げなローブを羽織った商人が、錆びた剣を勇者パーティのリーダーに押し付けていた。リーダーは目を輝かせて契約書に手を伸ばす。
「待ってください!」
そこにドラキチが颯爽と現れた。
「あなた、その契約、消費者契約法第4条『不実告知』に該当しますよ!」
ドラキチはビシッと指を突きつける。「『魔王討伐実績付き』?後ろの注意書きには『当社比』と小さく書いてあるだけじゃないですか! 優良誤認も甚だしい!」
「な、何を言う! これは正当な商行為だ!」
商人はギョッとする。
「では、こちらも正当な権利行使をさせていただきます」
ドラキチは懐からクリスタルを取り出し、高々と掲げた。
「発動! 消費者契約魔法、契約意思の無効化!」
クリスタルが淡い光を放ち、商人が差し出した契約書は瞬く間に塵となって消え去る。
「くっ、まさか消費者契約魔法使いとは……!」
商人はあんぐりと口を開けて立ち尽くす。
「勇者殿、危ないところでしたね。あの剣、試し斬りしたらすぐに折れますよ。素材はただのブリキです」
「は、はい……ありがとうございます」
勇者は感激の面持ちでドラキチの手を握る。
「いえいえ。だまし売りから皆さんを守るのが私の使命ですから」
ドラキチは爽やかに笑う。
「待て、この魔法使いを捕まえろ!」
商人が叫ぶと、路地の影から筋骨隆々のブラック騎士団が姿を現した。彼らは不当な契約書を盾に、法外なキャンセル料を徴収することで悪名高い一団だ。
「ふん、法の網を潜り抜けるのが我々の仕事だ。そのクリスタルごと叩き壊してくれる!」
騎士の一人が「不当条約」と刻まれた大剣を振り下ろす。だが、ドラキチは動じない。
「暴力で契約を強いる……。それは消費者契約の取り消し対象です!」
ドラキチが新たな呪文を唱えると、周囲の空気が一変した。
「設置魔法! 消費者安全確保領域!」
騎士の剣がドラキチに届く直前、透明な壁に阻まれて火花を散らした。壁にはびっしりと、読みやすいフォントで利用規約が印字されている。
「な、なんだこの壁は!? 攻撃が通じない!」
「無駄ですよ。あなたの攻撃には『合理的な説明責任』が欠如しています。その剣、維持費の事前説明は済んでいるのですか?」
ドラキチが指を鳴らすと、騎士たちの鎧がバラバラと崩れ落ちた。
「ええい、装備が! 呪いか!?」
「いいえ、『過量販売による契約解除』です。その重装備、明らかに一般騎士の平均的な守備力の必要範囲を超えています。適正な分量まで返品処理させていただきました」
騎士だちは丸裸同然になり、商人は腰を抜かした。
「ひ、ひえぇぇ! 賢者に相談だ!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく悪徳商団。
「ドラキチさん、あんた……何者なんだ?」
勇者は、呆然としながら尋ねた。
「私は一消費者です。消費者感覚が、この世界では最強の魔法になるなんて思いませんでしたよ」
ドラキチは肩をすくめる。
「この世界にはびこる『だまし売り』、私が消費者契約魔法で根絶やしにして差し上げます!」
その背中には、伝説の聖剣よりも頼もしい「返金保証」の文字が輝いていた。




