冒険者ギルドの「お得クエスト」騒動
ドラキチはいつものようにギルドに顔を出す。受付嬢マクラは、彼の顔を見るとやれやれという表情を浮かべた。
「ドラキチさん、今日もランチ目的ですか?」
「いや、今日は少し違う。ちょっと“お得”なクエストとかないかなって。」
冒険者ギルドには無数のクエストが掲示されているが、大半がモンスター討伐や危険地帯の探索だ。だがドラキチが探しているのは、もっと楽で割の良い仕事だ。マクラが困りながらも「比較的安全そうなクエスト」を紹介すると、ドラキチの目が光った。
「これなんかいいね。『野菜配達の護衛』。報酬は新鮮な野菜詰め合わせセット」
マクラが戸惑いながらもうなずく。
「そうですけど……通常は新人冒険者が練習のために受けるクエストですよ」
ドラキチは消費者契約魔法を発動し、クエストに付随する特典を確認する。「クエスト成功時、報酬野菜に地元産ジャムが追加」「初回参加者はギルドポイント2倍」と浮かび上がる文字に満足げにうなずき、そのクエストに挑むことにした。
配達クエストの依頼主は、ギルド近くの農家のおばあさんだった。依頼内容は、野菜を近隣の村まで安全に運ぶこと。しかし途中には低レベルのモンスター「プルプルスライム」が現れる可能性があるらしい。ドラキチはその情報を聞いても特に気にする様子はない。
「スライム?まぁ、なんとかなるでしょ」
だが、護衛クエストというからには何か対策が必要だ。そこで彼は契約魔法を活用して市場で「魔法防御傘」という商品を購入することにした。この傘、開くだけで小規模なバリアを張る優れものだ。契約時の特典には「二本目半額」とあったため、一本は依頼主のおばあさんにプレゼントすることに。
「ドラキチさん、準備がいいですね。」
感心するおばあさん。
道中、ドラキチとおばあさんは荷車を押しながら和やかに進んでいた。ところが森を抜けるあたりで、案の定「プルプルスライム」が群れで現れる。
冒険者らしい激しい戦いを期待していたおばあさんだったが、ドラキチは慌てる様子もなく、魔法防御傘をパッと広げる。するとスライムたちは「プルプル……?」と困惑し、その場で動きを止めた。
「傘に反応してるみたいだね。これで防げそうだ。」
さらにドラキチは契約魔法を使い、ギルドで購入した「即席モンスター忌避スプレー」をスライムのいる方向に噴射する。スライムたちはたちまち逃げ出し、戦闘はほぼゼロで終了した。
「いやー、この魔法、本当に便利だな。」
おばあさんは目を丸くしてドラキチを見た。
「若いの、冒険者としてどうなのかわからんけど……確かに助かったよ!」
無事に野菜を配達し、報酬として新鮮な野菜詰め合わせセットと特典の地元産ジャムを受け取ったドラキチ。彼は報酬を手にして満足げに微笑む。
「これで今夜の夕飯は豪華になるな。」
ギルドに戻ると、マクラが驚きながら出迎える。
「無事に終わったんですね。しかもスライム退治もせずに……」
「退治って言うか、まあ追い払っただけだけどね。」
ギルド内の冒険者たちも彼の噂を聞きつけ、「お得にクエストを攻略する男」としてますます注目を集めることになった。
次回予告
ドラキチが次に目をつけるのは、ギルドの「豪華温泉旅行クエスト」。契約魔法を駆使し、異世界の温泉でさらにお得で快適な生活を楽しむ彼の新たな冒険(?)が始まる!




