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天空のバザール 闇の契約商人との対峙

調査を進める中、ドラキチとボールはついに「闇の契約」を持ち込んでいる商人と対峙する。闇の契約商人は深淵を思わせる漆黒のマントを身につけ、その顔はフードの影に隠された謎めいた男だった。彼の周囲には、まるで生きたかのように契約書が舞い、その一枚一枚からかすかな絶望の囁きが聞こえてくるようであった。

「ほう……君たちは私の商売を邪魔しに来たのか。愚かな……」

男の声は、古びた羊皮紙が擦れる音のように乾いており、ドラキチとボールは互いに顔を見合わせた。これがまごうことなき「闇の契約商人」であると、彼らの直感が告げていた。

ドラキチは一歩前へ進み出ると、右手を高く掲げ、静かに詠唱を始めた。彼の指先から放たれた光の筋は、商人の全身を包み込み、その存在の本質を暴き出す。

「消費者契約魔法、真理の眼!」

眩い光が収まった時、驚くべき真実が明らかになった。商人の肉体は幻影であり、その真の姿は、契約そのものから具現化したかのような「契約精霊」だった! 彼は、人々との間に不当な契約を成立させることで、その絶望を糧に力を蓄えていた。


契約聖霊は、遥か古の時代、まだ世界が混沌としていた頃に生み出された。この世のあらゆる約束と取り決めを司る存在であった。当時は、神々との誓い、人間同士の盟約、妖精との秘密の約束など、契約そのものが純粋な形で存在し、彼はその秩序を保つために尽力していた。

しかし、時が流れるにつれて、人間たちは己の欲望のために契約を歪め、欺瞞や裏切りが横行するようになる。人々は甘言を弄し、真実を隠蔽し、不公平な取引を繰り広げた。契約精霊は、次第にその醜悪な現実に心を痛め、失望を深めていく。

特に彼を蝕んだものは、小さな村で起きたある出来事であった。誠実な農夫が、口約束を信じたために、豊かな土地を狡猾な商人に奪われた。その契約書は、一見すると公平に見えたが、魔法のインクで書かれた小さな文字で、農夫には理解できない不利益な条項が隠されていた。この不正義を目の当たりにした契約聖霊は、自らが守ろうとした契約という概念そのものに疑問を抱き始めた。

「秩序とは一体何なのだ? この欺瞞こそが、人の世の真実というのか?」

彼は深い絶望と共に、自らが守護する契約の真の姿が、もはや純粋ではありえないことを悟った。そして、彼は決意した。誰もが望む強欲な契約を、最も有利な形で成立させることで、人間社会の闇を徹底的に暴き出すことを。そして、その過程で生まれる絶望を糧に、新たな秩序を築くことこそが、自らの使命であると信じるようになった。

かつての清らかな存在であった契約聖霊は、この瞬間に闇へと堕ち、「闇の契約商人」へと変貌した。彼は自らの名を捨て、誰にも知られることのない存在となることを選び、それ以降、その真の名前を知る者はいなくなった。彼は、姿なき存在として暗躍することを喜びとした。


●契約魔法対決

「君の消費者契約魔法、なかなか興味深いな。だが私の契約に抗えるかな?」

契約精霊がそのか細い手をかざすと、空間が歪み、無数の契約書が激しい嵐のように宙を舞い、彼らを取り囲んだ。それらはまるで飢えた獣のように、ドラキチとボールに襲いかからんとしていた。ドラキチもまた、消費者契約魔法を最大出力で発動し、嵐の渦中に飛び込んだ。彼の魔法の力は、舞い踊る契約書の一枚一枚を解析し、その隠された条項を白日の下に晒していく。

「むぅ、これは……!」

ドラキチの目が鋭く見開かれた。精霊の契約書には、「一度契約が成立すれば、その後の条件変更は全て一方的に行われる」という、あまりにも危険な約款が紛れ込んでいた。さらに恐ろしいことに、これらの契約書自体が、契約者の「魔力」を少しずつ吸い取る性質を持っていることが判明した。

「こんなものにサインしたら、それこそ魂まで縛られるじゃないか!」

ボールが声を荒げた。一見すると無害に見える、美しい飾り文字で書かれた契約書も、その本質は悪しき魔法に満ちていた。

ドラキチは間髪入れずに、懐から一本のペンを取り出した。それは消費者契約魔法でお得に購入した「契約解除のペン」である。通常のペンではない。このペンには、古の魔法使いが施した特別な加護が宿っており、その恩恵により「いかなる偽りの契約も即座に無効化する」という、絶大な力が付与されていた。

「これで終わりだ、闇の精霊め!」

ドラキチがペンを振り下ろすと、その切っ先が宙を舞う契約書の一枚、また一枚と触れていった。ペンが触れる度に、契約書はまるで砂のように崩れ落ち、闇の精霊の魔力は爆発的に失われていく。精霊は苦悶の声を上げ、その黒いマントがみるみるうちに色あせていった。彼の闇の力は、消費者契約魔法によって暴かれた真実の前には、なす術もなかった。


●天空のバザールの平和

闇の契約商人を退けたことで、闇の契約という忌まわしき呪縛は、まるで朝露が陽光に溶けるように跡形もなく消え去った。市場は再び安全を取り戻し、安寧の鐘が鳴り響いた。色とりどりの露店からは、喜びと感謝の声がこだました。


「君のおかげで天空のバザールは救われた。この恩は忘れない」

ボールは満足げに頷き、ドラキチに礼を述べた。その言葉には、永らくバザールを覆っていた重い空気が一掃された清々しさが宿っていた。そしてボールは、ドラキチに伝承に伝わる特別な宝物、「天空の契約リング」を授けた。それは、魔法の効果範囲を無限に広げるという、まさに奇跡の遺物である。

「これでまた、とびきりお得な契約ができるってもんだ!」

その瞬間、天空のバザールは奇跡のような夕暮れの光に包まれた。空に浮かぶ雲は、まるで金色の絵の具で描かれたように鮮やかに染まり、下界の露店に並べられた品々も、その柔らかな光を浴びて、一つ一つが宝石のようにまばゆく輝き始めた。それは、平和と繁栄が再びこの地に訪れたことを告げる、荘厳なる祝祭の始まりを告げるかのようであった。


次回予告

天空のバザールでの活躍を終えたドラキチの次の冒険は、伝説の「竜の市場」。そこには、ドラゴンたちが守る超レアなアイテムが眠っているという――!?

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