表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/39

天空のバザール 空の海賊団

●第二の試練:空の海賊団

荒れ狂う嵐を何とか脱出した直後、テフサワ号の前に現れたものは、安息ではなく二番目の試練の不遜な影であった。

天を舞う無頼漢、空の海賊団「スカイレイダーズ」が、翼のごとき帆を広げ、風を操り、またたく間に船を包囲した。その先頭に立つリーダー格の男は、太陽の光を凶悪に照り返す曲刀シミターを突きつけ、朗々と――しかし明らかに酒焼けした野太い声で吠えた。

「よお、運のいい迷い子共! ここは我が団の制空権だ。命の重さと、懐の金貨の重さを天秤にかける用意はできているか? 通行料を置いていけ、さもなくば雲の藻屑だ!」

一触即発の緊迫感が甲板を支配し、若き冒険者たちは震える手で剣の柄を握りしめた。しかし、その殺気立つ狂騒の中、一人だけあくびでも出そうなほど平然としている男がいた。魔導書を片手に、契約の深淵を覗く男、ドラキチである。

「おやおや、野蛮な徴税ですな。しかし、通行料というからには、そこには『交渉の余地』という名の甘美な隙間が存在するはずだ……そうだろう?」

ドラキチは、おもむろに指を鳴らした。瞬時にして、虚空から銀色の鎖が絡み合うような消費者契約魔法の陣が展開される。

「親愛なる略奪者諸君。金貨などという味気ない金属よりも、もっと魂を震わせる対価を提案しよう。我が特約に基づき、あなた方に『天空特製・神鳴り酒セット』を提供したい。これは酒神が二日酔いのあまり涙したと伝わる伝説の逸品だ。……どうだ、金貨よりも価値があるとは思わないかね?」

海賊リーダーは、突如現れた消費者契約魔法の光と、その突拍子もない提案に毒気を抜かれた。しかし、ドラキチは追撃の手を緩めない。契約書の末尾に輝く文字を付け加えた。

「さらに、これぞ我が慈悲の極み。今この瞬間に契約を締結するならば、契約特典として『初回限定:樽二倍キャンペーン』を適用しよう。つまり、あなた方は今の二倍、天上の快楽に酔いしれる権利を得るわけだ」

「……二倍だと?」

リーダーの表情に、強欲よりもさらに抗いがたい「酒飲み」としての本能が浮かび上がった。差し出された芳醇な香りを放つ酒樽をひとたび目にすると、彼は先ほどまでの殺意を綺麗さっぱり雲の彼方へと投げ捨てた。

「ガハハ! 金貨なんて噛んでも硬いだけだが、酒は喉を通るたびに俺を王様にしてくれるからな! 商談成立だ、賢い坊主!」

歓喜の雄叫びを上げる海賊たちは、獲物であるはずの船を追い越して、空の果てへと意気揚々と消えていった。

残された冒険者たちは、抜いた剣を鞘に戻すタイミングすら失い、唖然として空を見上げるばかりであった。その沈黙を破ったのは、腹を抱えて甲板を転げ回るテフチンの爆笑であった。

「傑作だ! ドラキチ、お前というやつは! 勇者の剣より、お前のその『初回限定』という言葉のほうが、よっぽど世界を平和にするんじゃないか?」

こうして、伝説に残るはずだった激闘は、二倍の酒樽という極めて世俗的かつ平和的な対価によって、歴史の裏側にひっそりと片付けられたのである。


●第三の試練:青銅と鋼鉄のガーディアン

ついに雲の切れ間から、太陽の光を浴びて白亜に輝く「天空の島々」が見えてきた。だが、その入り口を塞ぐように、巨大な翼を持つ青銅のガーディアンが立ち塞がる。

冒険者たちが戦おうとする中、ドラキチは慌てて制止した。

「ちょっと待って!戦わなくても方法があるかもしれない!」

ドラキチは契約魔法を発動し、ガーディアンの「交渉可能性」を確認。どうやら、ドガーディアンはハチミツが大好物らしい。そこでドラキチはハチミツ瓶に消費者契約魔法をかけ、特典「香り強化」「三倍増量」を追加する。ガーディアンにハチミツ瓶を差し出すと、満足げにそれを食べた。

「これで試練クリアだね。」

冒険者たちは驚きを通り越して感動し始めた。

「お前、本当に平和的すぎるだろ!」


続いて鋼鉄のガーディアンが立ち塞がった。

「定命の者よ。天空のバザールは、真の価値を知る者のみに開かれる。貴殿がこの世で最も価値があると思うものを差し出せ。さもなくば、墜落の洗礼を授けよう」

テフチンは青ざめた。

「おい、ドラキチ。俺の大事なテフサワ号を差し出すなんて言うなよ……?」

ドラキチは悠然と一歩前へ出ると、バッグの底から一通の、少し汚れた「ただの領収書」を取り出した。

「価値があるもの、だと? だったらこれだ。俺がこれまでに出会い、交渉し、時にはだまされ、そして手に入れてきた『縁』の総計。この一枚一枚が、俺という消費者の歴史そのものさ。……文句があるなら、アンタの全財産と競り(オークション)にかけてみるか?」

ガーディアンは、ドラキチの瞳に宿る、底知れぬ誇りの輝きをじっと見つめた。やがて、鋼鉄の翼がゆっくりと開かれる。

『……よかろう。無機質な黄金よりも重き「執念」を確認した。通るがいい、清廉なる消費者よ』


●天空のバザールへ到着

「ふぅ、手厳しい歓迎だったな」

ドラキチは汗を拭い、ようやく見えてきたバザールの喧騒に目を細めた。そこは、宙に浮かぶ島々に橋がかけられ、魔法と技術が融合した市場だった。輝くクリスタルや空を舞うアイテム、見たこともない魔法ガジェットが並び、訪れた者たちを魅了していた。

「さあ!試練のご褒美を、市場の果てまで探しに行こうじゃないか!」


次回予告

天空のバザールで思わぬ出会いを果たすドラキチ。その相手は「天空の守護者」を名乗る人物だった。彼らが語る、バザールの隠された秘密とは――!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ