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ギルドのお得ポイント交換フェア

異世界「フォーラー」に馴染みつつあるドラキチは、いつものように冒険者ギルドに立ち寄った。マクラが彼を見つけ、声をかけた。

「ドラキチさん、今日は特別な日なんですよ。『ギルドお得ポイント交換フェア』が開催されます!」

「お得ポイント?」

ドラキチが首をかしげると、マクラは説明を始めた。

「ギルドでのクエスト達成や購入で貯まるポイントを、様々なアイテムや特典と交換できるイベントなんです。しかも今日は、いつもの2倍ポイントが付与される特別日です!」

その言葉にドラキチの目が輝いた。

「お得……だと?これは参加するしかない!」

「ふふふ、そう来ると思いました。では、こちらの特設カタログをご覧ください!」

マクラが広げたのは、魔法のインクでキラキラと輝く「交換アイテム一覧」だった。

ドラキチが身を乗り出して覗き込むと、そこには魅力的な文言が並んでいる。

『伝説の聖騎士も愛用! 切れ味10倍の聖銀包丁』

『飲むだけで筋肉がムキムキになる(10分間限定)特製ポーション』

『異世界の空気を満喫! ドラゴンタクシー1回無料券』


「……マクラさん。この『全自動・魔物自動追跡シューズ』、たったの500ポイントで交換できるのか?」

ドラキチの指差す先には、羽の生えた豪華なブーツの写真があった。通常、クエスト1回で貯まるのは10ポイント程度。50回も働けば、この夢のような装備が手に入る計算だ。しかも今日はポイント2倍。実質25回で手が届く。

「はい! 本日限定の目玉商品です。ただ、消費者契約魔法使いのドラキチさんなら、このカタログの隅にある米印マークにはお気づきですよね?」

マクラがいたずらっぽく笑い、極小の文字を指し示した。そこにはこう書かれていた。

『※商品の効果には個人差があります。また、ポイント交換後の返品・魔法解除は一切受け付けません。なお、追跡対象の魔物がいない場合は、最も近くにいる生き物を魔物と誤認して走り続ける仕様となっております。』

ドラキチはニヤリと口角を上げた。

「なるほど、不当な不利益を課す『不意打ち条項』の一歩手前だな……。だが、消費者契約魔法使いを舐めてもらっては困る。この契約には、あえて『有利な解釈』を上書きさせてもらう!」

ドラキチが手を掲げると、魔導書が宙に舞った。

「発動! 消費者契約魔法『約款・信義則の天秤』!」

まばゆい光がカタログを包み込む。ドラキチは朗々と唱えた。

「この米印の注意書きはあまりに小さく、消費者が合理的に予測できる範囲を超えている。ゆえに、このシューズの性能は『消費者の期待する標準的な品質』に固定されなければならない! すなわち、勝手に暴走する機能は欠陥とみなし、私の制御下に置くものとする!」

光が収まると、カタログの文字が書き換わっていた。暴走の注意書きが消え、代わりに『使用者の意図を100%反映する』という文言が浮かび上がっている。

「……ドラキチさん、それ、実質的に運営側のルールを書き換えちゃっていませんか?」

マクラが呆れたように呟く。

「これは正当な権利行使だ、マクラさん。さあ、まずはこの2倍キャンペーンが『先着何名まで』という制限がないか、景品表示の観点から徹底的にチェックさせてもらおうか!」

ドラキチの目は、お宝を狙うドラゴンよりも鋭く輝いていた。


ギルドのホールは、フェア目当ての冒険者たちで賑わっていた。交換リストには、冒険者たちが喉から手が出るほど欲しがるアイテムがずらりと並んでいる。

「不死鳥の羽根」全回復アイテム。

「次元ポータル石」遠くの街まで一瞬で移動可能。

「ギルド特製シルバーカード」購入時のポイントが3倍になる会員証。


ドラキチは手持ちポイントを確認しながら考えた。

「高価なアイテムもいいけど、まずは日常を快適にするものを狙いたいな」

そこで目に留まったのが、特典枠にひっそりと記載されていた「お得ルーレットの挑戦券」。わずかなポイントで挑戦でき、運が良ければ高額アイテムが手に入るらしい。

「……ギャンブルはしない主義だけど、これはお得の香りがする」

ドラキチは早速ルーレット券を購入。挑戦台に向かうと、既に冒険者たちが次々と挑んでいたが、大半がハズレや小さな景品で終わっている。


「やっぱり難しいな……」

誰かがぼやく中、ドラキチは淡々とルーレットを回した。ルーレットが回転し、ゆっくりと止まり始める。ギルドの仲間たちは「またハズレか?」と見守っていたが、針がピタリと止まった先は……

「特賞:ギルド特製シルバーカード」

場が一瞬静まり返った後、大歓声が上がる。

「おい、あいつ特賞当てたぞ!」

「くそっ、俺も挑戦しておけば……!」

ドラキチは平然とカードを受け取りながら、心の中でガッツポーズをした。

「これで次のお買い物がさらにお得になるな」

しかし、このカードを手にした瞬間、マクラが不安げに言った。

「特賞を当てるのは素晴らしいですけど……実はそのカード、次元の魔物が封印されているっていう噂があるんです」

「え?」

突然の不吉な情報にドラキチは固まる。


ドラキチがカードを手に入れて間もなく、ギルドのホールの中央に異変が起きた。空間が歪み、紫色の渦が現れる。その中から姿を現したのは……

「次元の魔物グリードラス」

長い触手を持つこの魔物は、財宝や契約を食らうと言われている。冒険者たちは一斉に武器を構えたが、ドラキチは冷静にカードを見つめた。

「これ、どうやら魔物を封印から解いちゃったっぽいな……」

ギルドの冒険者たちが「やっちまったな!」という顔で睨む中、ドラキチはある考えを思いつく。


ドラキチはいつものように消費者契約魔法を発動し、グリードラスに「交渉可能性」を確認。魔物が喋れることを知り、直接声をかけた。

「グリードラスさん、落ち着いて。お金や契約が好きなら、もっといい提案をします」

魔物は唸りながらも興味を示した。

「ほう……提案だと?どんな契約を持ちかける?」

ドラキチはギルド特製シルバーカードを掲げながら言った。

「このカードを使って、異世界中の宝物やお得な特典を集められる権利をあなたにあげます。ただし、その代わり、暴れるのは、ここだけにしてもらえますか?」

冒険者たちは唖然としたが、魔物は少し考えた後、意外にも頷いた。

「ふむ、その契約、面白そうだな。受け入れよう」

魔物はカードを取り、再び次元の渦へと戻っていった。こうしてギルドは無事に平穏を取り戻した。


事態を収めたドラキチに、ギルドマスターのテフチンが笑いながら言った。

「君は一体、冒険者なのか交渉人なのかわからないな。でも、これからは『お得王』と呼ぶことにしよう」

マクラも苦笑しながら言う。

「次から次へとトラブルを引き寄せますけど、解決もお得にこなしていきますね」

ドラキチは肩をすくめた。

「ただお得に生活したいだけなんだけどな」

ドラキチのほのぼの異世界ライフは、ますます奇想天外な方向へと広がり続ける。


次回予告

ドラキチが次に挑むのは、「異世界最大級のフリーマーケット」。契約魔法を使って掘り出し物を次々と見つける中、またしても新たなトラブルが待ち受けていた……!?


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