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消費者契約魔法の歴史

「ふぅ……今日のランチも最高だな!」

ドラキチは満面の笑みで、山盛りのチキンソテーを口いっぱいに頬張った。場所は、冒険者ギルドの食堂。昼時とあって賑わっている。

テーブルの向かい側では、剣士のオニイが豪快にテフ茶を飲んでいる。

「おう、ドラキチ。お前の使う消費者契約魔法ってやつ、いっつも思うんだが、全然派手さがないよな。もっとドカーンと魔力が爆発する感じじゃねーのか?」

オニイの隣で上品にスープを啜っていた魔法使いのテフコが、小さくため息をついた。

「オニイさん、魔法は派手さだけじゃないわ。ドラキチさんの魔法は、言葉と論理で悪しき契約を無効化する、非常に高度で知的な魔法体系よ。あなたには理解できないかもしれないけど」

ギルド受付嬢のマクラが、話題の中心人物であるドラキチに優しく微笑みかけた。

「ドラキチさん、いつも私たちのためにその不思議な魔法で助けてくれてありがとう。改めて聞きたいんだけど、その消費者契約魔法って、一体どこから来た魔法なの?古文書にも載ってないし」

ドラキチはドラ茶を飲み、少し得意げな顔をした。

「よし来た! 実はな、これには深い歴史があるんだ。マクラさん、オニイ、テフコ、みんな聞いてくれ」

ドラキチは異世界転移時に老人から受け取った『消費者契約魔法概論』に書かれた内容を話し始めた。

「俺の使う消費者契約魔法は、みんなが知っている自然魔法や精霊魔法とは一線を画す。そのルーツは、意外にも平和な時代の『世の不公平を正したい』っていう、純粋な願いから生まれた、ちょっと変わった学問にあったんだ」

オニイが首を傾げる。

「学問?魔法じゃなくてか?」

「ああ、そうだ。昔々、この世界のどこかに、とある賢者の国があった。そこは皆が公正な取引と契約を重んじる、堅苦しいくらい真面目な国でな。でも、そこにも言葉巧みに騙す悪い奴らが現れて、社会を混乱させてたんだ」

テフコが興味深そうに身を乗り出す。

「それで、その国の賢者たちはどうしたの?」

「彼らは考えた。『どうすれば、皆が安心して取引できる世の中になるのだろう?』ってな。そして生まれたのが、『契約学』という学問だったんだ」

「けいやくがく?」

マクラが繰り返す。

「そう。人々の交わす誓いや約束、つまり『契約』を研究し、その本質を理解しようとする学問だ。賢者たちは、言葉に込められた意図や、隠された真実を見抜くための研究を重ねた。最初はただの堅苦しい研究だったらしいが、やがて言葉の持つ力、約束の持つ魔力を解き明かしていったんだ」

ドラキチは水を一口飲み、続けた。

「その知見は、当時の主流だった自然魔法や精霊魔法とは全く異なる、新たな魔法体系へと進化していった。人々はこれを『言霊魔法ことだままほう』と呼んだのさ」

オニイが感心したような、呆れたような声を出す。

「へえ、言葉が魔法かよ。地味だな」

「地味とか言うな! この言霊魔法、実はめちゃくちゃ複雑で、習得には長い年月と高い知性が必要だった。そこらの脳筋剣士には絶対無理な代物だ」

「おいこら」

オニイが文句を言いかけるのを無視して、ドラキチは話を締めくくった。

「それでも、一部の志高い魔術師たちが、言霊魔法を応用して、悪意ある契約から人々を守るための術を開発した。それが、俺が受け継いだ『消費者契約魔法』のルーツってわけだ」

マクラが目を輝かせる。

「素敵なお話……! じゃあ、ドラキチさんがその魔法を使う時って、何が大切なの?」

ドラキチはニヤリと笑い、自分の胸を叩いた。

「消費者契約魔法の使い手には、契約に潜む巧妙な罠を見抜く『真実を見抜く眼』、言葉の裏の意図を読み解く『論理思考』、そして何よりも、困っている人を救いたいという『強い心』が大切なのさ!」

オニイが笑い飛ばす。

「結局、最後は精神論かよ!」

「おいおい、精神論だけでこの『だまし売りの魔窟』を生き抜けると思ってんのか?消費者契約魔法が光り輝くのは、相手が火を噴いた時ではない。相手が笑顔で、裏のある契約書を差し出してきた時だ。その時こそ『真実を見抜く眼』が文字の裏に隠された欠陥を暴くことになる」

「……ま、カッコいいこと言ってるけど」

オニイがニヤニヤしながら、空になったテフ茶のグラスを置いた。

「その『真実を見抜く眼』で、今日のランチの会計が微妙に上乗せされてるのも見抜けるか? さっきからマクラさんが、ドラキチの分だけデザート代を足して計算してるぜ?」

「えっ!?」

ドラキチが慌ててマクラを見ると、彼女は茶目っ気たっぷりにウインクをした。

「あら、それは『可愛い受付嬢とランチができた付加価値代』っていうオプション契約ですよ、ドラキチさん。重要事項として、今、説明しました!」

「うわあああ! 消費者契約魔法・取消権発動ッ!!」

「無駄よドラキチ。そのオプション、もうあなたの胃袋に入っちゃったんだから」

テフコが冷ややかに言い放ち、食堂には再びドッと笑い声が沸き起こった。ドラキチの戦いは、今日もごく身近な「契約」から始まっていくであった。


次回予告

ドラキチが次に目をつけたのは、ギルドで開催される「お得ポイント交換フェア」。ギルド内で巻き起こる予想外のイベントと、ドラキチの消費者契約魔法が生む新たな珍騒動に乞うご期待!


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