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キング・スライム討伐詐欺

ドラキチの所に、一人の若い冒険者が泣きついてきた。

「ドラキチさん、助けてください!『キング・スライム討伐ギルド』に入会したんですが、初期費用で金貨100枚取られた挙げ句、もらった装備はこんにゃく製でした……。解約したいと言ったら『契約書に神の呪いがかけられているから一生奴隷だ』って脅されて……」

「なるほど。典型的な『不利益事実の不告知』、および『断定的判断の提供』による勧誘ですね。行きましょう。秒で終わらせます」


ギルドの豪華な扉を蹴破り、ドラキチは契約書を突きつけた。

「この契約の取り消しを求める!」

自称・伝説の勇者で成金趣味の鎧を着たギルドマスターが鼻で笑う。

「ハッ! 契約書には『いかなる理由でも返金不可。退会時は魂を差し出す』と血文字で書いてある。これは絶対不変の魔石契約だ!」

ドラキチの瞳が輝く。

「甘いですね。その契約は、我が詠唱の前ではただの紙屑に等しい」

ドラキチは右手を掲げ、高らかに叫んだ。

「発動! 消費者契約魔法コンシューマー・コントラクト・マジック!」

周囲の空間が数式と法文のコードで埋め尽くされる。

「まず、この装備が『キング・スライムを秒殺できる』という説明。これは不実告知に該当する。さらに、この装備がこんにゃく製であることを隠したのは『不利益事実の不告知』(同条2項)だ!」

ギルドマスターが狼狽する。

「な、何だこの光の鎖は!?」

「仕上げです。退会時に魂を奪うという条項……これは『消費者の利益を不当に害する条項』であり、無効です!」

ドラキチが指をパチンと鳴らす。

「『全額返還』!」

刹那、ギルドの金庫が爆発し、奪われた金貨が持ち主たちの元へ一斉に飛んでいった。契約書は青い炎に包まれ、塵となって消える。

「ひえええ! 訴えないでくれぇ!」

逃げ出すギルドマスターを横目に、ドラキチは依頼人の冒険者に告げた。

「いいですか。冒険の世界でも、契約は剣よりも重い。不審な勧誘を受けたら、まずは重要事項説明書を精査しなさい」


●エンカウント物件詐欺

別の新米勇者が途方に暮れていた。

「ドラキチさん、助けてください!『キング・スライム討伐ギルド』に全財産のゴールドを払ったのに、連れて行かれたのはただの緑色のブヨブヨが1匹いる空き地だったんです……」

新米勇者が差し出した契約書には、金色の文字でこう書かれていた。

『絶景!巨大王族スライムとのプライベート・エンカウント確約物件』


ドラキチは目を光らせた。

「ほう……。隣にドブ川があって、10年後には巨大なゴーレム工場が建つ予定の土地ですね。この『絶景』という表現、そして不利益事実の隠蔽……。典型的なだまし売りですな」


ドラキチと新米勇者は、キング・スライム討伐ギルドに乗り込んだ。

「ヒャッハハ!一度サインした契約は絶対だ!文句があるならドラゴンとでも戦ってから来な!」

ドラキチは冷ややかに笑った。

「ドラゴンより恐ろしいものを見せてあげましょう。……消費者契約魔法コンシューマー・プロテクション、発動!」

ドラキチが呪文を唱えると、空間が歪み、巨大な法典のページがギルドマスターを包み込む。

「な、なんだこの光は!? 体が勝手に……!」

ドラキチは淡々と読み上げる。

「第一式、不利益事実の不告知アンフェア・サイレンス!貴殿は、隣接地にゴーレム工場が建つことを意図的に隠しましたね? これは契約の取り消し事由に該当します」

「第二式、断定的判断の提供フェイク・フューチャー!『絶対にレベルが上がる』という根拠のない説明もアウトです」

ドラキチが指をパチンと鳴らすと、ギルドマスターの懐からゴールドが飛び出し、新米勇者の財布へと自動的に吸い込まれていった。

「ぎゃあああ! 俺の不当利益がああああ!」

「これにて『契約解除リセッション』完了。……秒でしたね」


●マニュアル詐欺

「へっ、また詐欺かよ!」

ドラキチは、テーブルの上のビラを鼻で笑った。そこには『キング・スライム討伐ギルド』と大書され、「未経験者でも月収100万ゴールド!」「安全確実なキング・スライム討伐法伝授!」といった謳い文句が踊っている。

「キング・スライムなんて、普通の人には手も足も出ないよ。こんなビラ、信じる人がいるの?」

隣で呆れ顔のマクラが、首をかしげた。

「いるんだな、それが! 俺の『消費者契約魔法』が火を吹くぜ!」

ドラキチはビラをひっつかんで立ち上がった。


キング・スライム討伐ギルドは、ドワーフの掘り出したばかりの金貨のようにピカピカの「冒険者募集」という看板を掲げていた。中に入ると、数十人の若者たちが目を輝かせながら、ギルドマスターの話に聞き入っている。マスターは、いかにも胡散臭い笑顔で喋りまくっている。

「諸君、我々が開発した『キング・スライム完全攻略マニュアル』は、どんな初心者のキミたちでも、あのキング・スライムを瞬殺できる究極の書だ! 今なら特別価格、たったの10万ゴールド!」


若者たちはザワついた。

「10万ゴールドか…ちょっと高いな…」

「でも、100万ゴールド稼げるなら安いもんだ!」


ドラキチはギルドマスターに近寄り、一瞥する。すると、マスターの頭上に小さな文字が浮かび上がった。

『キング・スライム完全攻略マニュアル』:通常のキング・スライムの生態とは全く異なる情報が多く含まれている。本マニュアルによって討伐されなかった場合の責任は一切負わない旨を、細かい文字で契約書に記載済み。


「詐欺だ!」

ドラキチはすかさずと叫んだ。

「なんだ、お前は!」

ギルドマスターは慌てて声を荒らげるが、ドラキチは平然と言い放った。

「お前のマニュアルは、『消費者契約魔法』に引っかかる! キング・スライム攻略の成功率に関して、重要な事実を告げず、誤解させる表示をしているだろ! そして、免責事項も小さすぎてほとんど読めない! それは『不利な事実の不告知』に当たる!」

ギルドマスターは顔面蒼白になった。ドラキチはさらに畳み掛ける。

「よし、みんな! 今結んだ契約は、俺の『契約破棄の呪文』によって無効になる! 返金だ!」

指を鳴らすと、ギルドマスターが魔法で結んだ契約書が、白い紙切れへと変わっていった。若者たちは歓声を上げ、ギルドマスターはしぶしぶと金貨を返金し始めた。

「ちくしょう、まさかこんな奴がいるとは…」

ギルドマスターは地面に膝をついた。

「ま、悪いやつはどこにでもいるもんだ。でも、俺がいる限り、詐欺師にはお天道様は見せないぜ!」



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