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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第1歩 ~出逢い~

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精霊の力②

裂け目の奥から現れたのは、緑がかった皮膚と突き出た牙を持つ巨躯のオークだった。

血走った目を光らせ、岩壁に手をつきながらじりじりとこちらを窺っている。


シェルティは紫の尾を一度だけぱたりと揺らし、艶のある溜め息を漏らした。

「あの鼻は好かんわぁ」

興味なさげに視線を逸らし、退屈そうに爪を舐める。


――鼻?豚みたいな鼻が嫌なの?


その一方、ノエルの肩のトラヴァスは、黄金の瞳を爛々と輝かせて牙を覗かせている。

私に抱かれたヤクモも尻尾をばたばたと振り、子供のように目を輝かせていた。


丁度いいから腕比べって…

ピエールはどうするつもり?


「……力比べ、か。

 訓練ではなく実戦だぞ?」

「そういう顔しないの。ほら」

ノエルは軽く肩をすくめて笑った。


――やらせるつもりなんだ。

でも私も見てみたいかも。


「……いいだろう」

彼は短く息を吐くと、意を決したように腰の剣に手を掛けた。


後ろからセレナが彼の背に声を投げる。

「安心していいわよ。もしもの時は私が癒やす。…あなたがケガに気付くより、ずぅっと早くね」


彼は振り返らずただ顎を引いて応えた。


一歩、また一歩と地面を踏みしめ、巨体のオークへと距離を詰めていくピエール。オークの巨影は低く唸り声を上げ、じりじりと裂け目から身を乗り出してきた。


濁った瞳をぎらつかせ、雄叫びと共にピエールに向け巨腕を振り下ろした。


――危ない!

だが、彼に焦りはなかった。

拳が落ちる瞬間、冷静に逆側へと身を滑らせると、オークの拳は虚しく岩を叩いた。


「――遅い」

短く呟き、体勢を崩した巨体の首筋へ鋭い突きを突き込むと、オークはうめきとともに巨体を一歩、二歩とよろめかせて、やがて崩れ落ちる。


「……す、すごい……!」

一瞬の出来事に私は思わず息をのんだ。


ノエルが目を丸くして口笛を鳴らした。

「やるじゃない……見直したわ。

 ちゃんとした軍人だったんだねぇ」


その時、倒れたオークの胸部がぼんやりと光り始め、体の奥から火が灯るように淡い輝きが広がり、やがて一点へ収束する。


「あれが……核……?」

私は初めて目にする現象に釘付けになって尋ねた。


「触れてみなよ。魔力を持つ者相手には、核は姿を現す。どんな反応するか…見ておくべきよ」


ノエルの言葉に思わず唾を飲み込んだ。

目の前には倒れたオーク。

膝をついて巨体を覗き込んだ。


目の前で淡く脈動する紫光は、生き物の鼓動のように見え、指先を近づけると核はふわりと震え、わずかに光を強めた。


「……っ!」

咄嗟に手を引こうとしたらセレナから声がかかる。

「大丈夫よ。触れて」


――やるしかない。

私はそっと核へ指を伸ばした。

次の瞬間、核はほんの一瞬光を放ち消えていった。

「え……? 消えた……?」


「そこに転がってるわよ。」

地面に転がったのは、殻に覆われた小さな実のような核。


掌に拾い上げると、淡く光の脈動を繰り返しながらやがて落ち着いた。普通の石のようだが、紫の輝きだけが残っている。


ピエールも隣に身を屈め、指先で核に触れるとセレナが横目で核を見ながら

「核は魔力に“触れる”ことで初めて物質として残るの。市場にも出回るし、取引もされるわ」


「まぁ、魔物の種類次第で値段はピンキリよ。オーク程度なら―、一晩お腹一杯飲み食いできるぐらいの価値かな」とノエル。


「……食事、一食分?」

思わず首を傾げた。


「そういうこと。核が山ほど手に入ればまとまったお金になるけど、並のハンターだと生活費稼ぎがせいぜいね」

セレナがまとめるように言った。


そんな中、トラヴァスがぴょんと腕に飛び乗ってくると

「なぁなぁ、それちょっと貸してみ?」

私が戸惑いながら核を差し出すと、

トラヴァスは前足で抱え込み、

鋭い牙でがりっと齧りついた。


次の瞬間――硬質な核は砕け散り、

細かな光の粒となって弾ける。

砕けた破片は宙に散る間もなく、

トラヴァスの口元へ吸い込まれた。


「ぷはぁっ……!

 悪くないねぇ。おーきにな」

尻尾をひと振りしながら、満足げに喉を鳴らすトラヴァス。

その身体の輪郭が、ほんの一瞬だけ淡い稲光を帯びたように見えた。


「……食べた……の?」


「食べたっていうより、取り込んだんだよ。精霊にとっちゃ核は最高のご馳走だからね。ごめんね。トラヴァスが食べちゃって。でも次々出てくるよ。ほら」


騒ぎに反応したのか、岩の裂け目から出てきたオークの咆哮が岩場に響き渡り、姿を現した三体が一斉に突進してくる。


――無理っ!三体もいるなんて。


「じゃ、次アタシね。

 お手本を見せてあげる」


そう言ってノエルが指先を軽く振ると、突風が巻き起こり、最前の一体が風の壁に弾かれて足を取られた。


二体目は小さな竜巻に絡め取られ、宙で身動きを封じられる。


三体目は雷鳴とともに走った稲光に撃たれ、筋肉を痙攣させて膝を折った。


「――拘束の見本、ね。」

ノエルの声は余裕に満ちていた。


「次、行くわよ。」

そう言うと彼女は風の壁をさらに押し出すと、弾かれたオークの巨体が宙を舞い、岩壁へ激突して潰れる。


竜巻に囚われた一体は上空へと吹き上げられ、絶叫とともに叩き落とされ地に沈んだ。


最後の一体には、雷光が二度、三度と叩き込まれた。焼け焦げた匂いを残し、巨体は崩れ落ちて動かなくなる。


三体を一瞬で葬ったノエルは、軽く振り返ると得意げに片眉を上げて私を見た。


「……すご……」

出番ちょっとだけやん!!

…やっぱ人気ないんじゃない?


なんでや!

感想は?

…ぐぅっ…まだ足らんのか…

ブックマークは?

…んぐ…まだ足らんのか…


レビューは?

…まだ…足らんのか…。

…何とか…何とかならんのか…


次回 三度目の正直!

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