ゴブリンとオーガ
丘に着いた3人は、離れた時とそう変わらない位置にいるソファを見付けて、静かに腰を下ろした。
「1人で大丈夫なのか?」
「大丈夫でしょ~。
ゴブリンまで少し距離あるし、
オーガなんてもっと向こう!」
「ここからなら良く見えるし、援護も大丈夫よ。ソファがどうするのか…楽しみね」
「俺には見えないが…
見えているのか?」
「目で見えてるわけじゃないわよ」
「では魔法か?」
「どっちかって言うと精霊の力ね。
周囲が見渡せるようになるの!」
「…“目”が開いたようやねぇ」
「おぉ?こっちに気付いたなぁ」
シェルティとトラヴァスが同時に気付いた。
「ソファもヤクモと戦うみたいね!」
「楽しみ。どんな魔法が見れるのかしらね。」
3人のいる場所からは、ソファがゴブリンの群れに近付く様がよく見えた。
「あそこから狙うつもりか?
確かに奇襲が正解だとは思うが…」
――地を割るような咆哮が、森を貫いた。
轟音とともに赤黒い炎が渦を巻き、現れたのは三つの頭を持つ漆黒の獣。
左の首は青白い業火を、右の首は紅蓮を、中央の首は黒炎を纏い、三つの咆哮が重なると、大地が震え炎の奔流が四方へと迸った。
「なんだ今のは?赤い炎に青い炎に黒い炎?地獄の業火で焼き払うとかいう…伝説上の生き物じゃないか!」
「…派手にやっちゃったね」
「あら?森に被害は出てなさそうよ?」
「依頼の報告はどうするんだ?
…討伐になるのか?」
「なるっちゃなるでしょ。
ゴブリンいないもん」
「確かにそうね。あれぐらいなら木々もすぐ生まれるわ」
「…このまま見ていていいのか?」
「とりあえず様子見かなぁ」
「あ、ほら!オーガがソファに気付いたみたいよ」
遠目に見える“それ”は、
もはや戦闘ではなかった。
大地に突き刺さった氷の柱、
白銀の狼の影。
冷気が丘を越え、風が頬を刺す。
その中心で少女が息を吐く。
白い吐息が、まるで狼を模り空へ昇った。
「……氷、か
まるで……神話だな。
あれがソファなのか?」
「綺麗ねぇ…ちゃんと一人でオーガも倒しちゃったわ」
「いいじゃん。いい感じじゃん!」
氷の檻の中、オーガがまだわずかに蠢く。
――まるで、生きながら氷像に変わるように。
そして森は神聖な静けさに包まれていた。




