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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第2歩 仲間を求めて

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新たな旅路④ オーガ討伐

「……よし、次はオーガね。準備完了っと」


フレイル(ヤクモ)を持ち上げ≪アルゴス≫と唱えた瞬間、核の目の部分が白銀に光り始めた。


視界が前と同じく全方位に開け、慣れない視界に戸惑いながらも周囲を確認する。

――少し慣れてきたかも?


「ねえヤクモ、

 さっきから少し静かじゃない?」


『しずか~。でもね、向こうで“どーん”って感じがする!』

「どーん? それは……擬音で言われても困るんだけど……」

苦笑しながら顔を上げた。


――?

今向こうで影が動いた?


木々が揺れ、鳥が一斉に飛び立つ。


「……え、えっと。

 今の“どーん”って、もしかして――」


ズゥンッッ!!


――!!

私の方が凍りついた。


地面が揺れて風が唸ると木々が軋む。


「ヤクモ…もしかして、今の……」

『うん! “でっかいの”来た!』


低く、湿ったような、重たい唸り声が響いた。


「グゥォオオオォォ……」


思わず後ずさる。

≪アルゴス≫の視界でも確かに捉えた。


背は人の倍ほど。


肌は灰と血を混ぜたような濁色だくしょくで、

ところどころ石のように硬化している。


筋肉は生物というより、岩が無理やり動いているかのよう。


私は以前の苦い思い出とともに不安で押し潰される。


視界のオーガは、ゆっくりと首を傾けた。

その片目は濁り、もう片方は赤黒く光っている。


瞳が、“視ている”のではなく

“嗅いでいる”ような――


人間の存在を空気の流れで感じ取っているような、異様な動き。


――背中に冷たい汗が流れた。


オーガがこちらへ向け一歩、地を踏み鳴らすと重低音が腹に響き、森の空気が震え逃げ出した鳥たちが、はるか上空で悲鳴を上げた。


オーガはゆっくりと顔を上げ、赤黒い瞳が確かにこちらを見た。


そしてその口が、――笑った?


「見つかった?

 まだ距離はあるのに?」

パニックに陥りかけながらも、他の個体がいないか、逃げ道はどちらか視界を見渡した。


――オーガは1体。


オーガの脚が地を抉り、砂と岩を巻き上げながらこちらへ突進してくる。

その巨体が進むたびに森の空気が圧し潰されるように揺れている。


腰を落として両手でフレイル(ヤクモ)を握り身構える。

すぐに私の2、3倍はありそうなオーガが地を裂くように現れた。


「速いっ――!」


反射的に後方へ跳ぶと同時に、オーガの拳がすぐ目の前の地面を打ち砕き土塊が爆ぜて石が飛ぶ。


――恐怖はあった。


でも初撃を躱したことと、以前この目で()()()()()()()姿に少し冷静さを取り戻す。


――今回は前みたいにイツカさんは助けに来ない。

でも私は()とは違う。

皆も“できる”って信じてくれた。


目の前のオーガが振り返り咆哮を上げる。それは低く、鈍く、音の圧で空気が揺れる。

今度は退かずにフレイル(ヤクモ)を構えて囁いた。


「――来て、≪フェンリル≫!」


声と共に、フレイル(ヤクモ)の先端から蒼白い閃光が弾け、冷気が奔ると周囲の空気が一瞬で凍りついた。


氷片が風に舞い、霜が草を覆い、()()()()が現れた。


その体毛は月光のように淡く光り、息を吐くたび、冷気が狼煙のように立ち上る。


フェンリル――氷の聖狼。


瞬間、地面に白い紋章が走った。


氷の蔦のような文様がオーガの足元に広がり、爆ぜるように氷柱が立ち上がった。


氷柱が交差し、空を突く。


瞬く間に、オーガの巨体は氷に飲まれ、半ば崩れかけた岩のように凍りついた。


――空気が止まった?


氷が光を反射して森全体を蒼白の光に染め、冷気が風に溶けゆらりと漂う。


凍りついた空気の中心で、フェンリルはゆっくりと顔を上げた。

氷越しに見えるその瞳が、まるで()()()()()()()()()()こっちを見つめる。


やがてその瞳が細められ、わずかに揺らめく光。


胸の奥で何かがふっと温かくほどけた。

身を凍らす風が止み、氷の煌めきが一瞬、虹色に変わる。


小さな唸り声を上げた白銀の狼は白い吐息とともに姿を消した。



「…ふぅ、やったわよね?」

そう呟きながら、ぐったりと腰を下ろした。


フレイルを腰のホルスターに納めると核から出て来たヤクモが周りをクルクル回る。


氷が溶けた森の中で、白い息がほわほわと漂って肩の辺りからモフっと柔らかい感触が落ちてくる。


「うわっ!?ちょっ、ヤクモっ!」

ふわふわの塊が、頭の上で見事にバウンドした。


――まっ、いっか。


「ヤクモ。ありがとね。お利口さん」

首の周りをワシャワシャと撫で回すと目を細めうっとりした表情を浮かべるが、ヤクモの毛にはまだ氷の魔力が残っていて、抱きしめるとひんやりしてる。


「ふふ、冷たくて気持ちいいぃ……」

そのままヤクモを両手で抱き上げ、くるくると回る。


ヤクモの足は空を蹴り、尻尾がふわっと広がる。

「わ、わぁっ!とんでるとんでる!」

「ちゃんと落ちないようにしてよ?」

やがてそのまま地面に倒れ込むと、笑いが止まらなくなった。


ヤクモは私の髪をぐしゃぐしゃにしながら胸の上で丸くなり、反撃してそのふわふわを抱き枕にしながら、空を見上げる。



少しして視界に影がかかった。


「やったじゃ~ん。

 見てたよ~」

「オーガの氷の彫刻ね。

 趣味を疑うわ」

「これはこのまま置いて行くのか?」

そう口にしながら3人が氷漬けにされたオーガをマジマジと見つめる。


ヤクモを下ろして飛び上がった私はまず訊ねた。

「そっちもだけど、ゴブリンどうしよう?」


「別にいいでしょ?

 だってもうゴブリンいないもん」

「そうね。炎には驚いたけど、

 森の被害は最小限だし」

「これはこのまま置いて行くのか?」


「どうやって持ってくのよ?

 “大鹿”村に置いて来てんのよ」

「あのコ、そろそろ名前つけてあげた方がいいかしら?」


「とりあえず、カンナに報告。帰りながら他のゴブリン片付けるよ~」


村へ戻る道すがら、私たちは周辺に残っていたゴブリンの拠点を掃討していった。


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