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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第1歩 ~出逢い~

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精霊の住処~出逢い~②

風が洞窟の奥から吹き抜け、燐晶石りんしょうせきが一斉に明滅する。


「うおっと!」ピエールが思わず顔を覆う間に、渦巻く風の中心で稲光が走った。


現れたのは、漆黒の毛並みを持つ猫。


毛先は深緑に染まり、たてがみのような部分には黄色の閃光がちらつく。

片耳が折れたその姿から黄金色の瞳がぱっと開かれ、ピエールとソファを一瞥いちべつしたかと思うと、尻尾を大きく振り払う。


「へへっ、久しぶりやなぁ。

 またお散歩いくんかぁ?」


挑発するような声と共に、ノエルの肩へ軽やかに降り立つと

「トラヴァスぅ!やっぱり派手に出てくるわねぇ」

ノエルはどこか得意げに笑みを浮かべ、頬擦りをしてくる精霊を乱暴にあやす。


――猫だ。

毛先が光を反射して雷をまとってるみたいだし、喋ってるけど、黒猫だ。

私は呆然とその光景を見つめ、ピエールは剣にかけた手を下ろせずにいた。



水の膜が再び波紋を広げ、今度は淡い紫のもやがふわりと立ち昇る。

同時にどこか懐かしい花の匂い…


「――おやおやぁ?ようやっと逢いに来てくれはったぁ思たら、こないぎょうさんで来ましたんかぁ?」

艶やかな声が洞窟に響く。


「シェルティ……」

セレナは小さく呟き、その瞳を細める。


妖艶な狐は、ゆらりと尾を揺らしながらセレナを見上げる。

「このままご無沙汰やったら、

 拗ねて二度と出ぇへんとこやったわ」


セレナは苦笑を浮かべ、小さく頭を下げた。

「怒ってへんよぉ。

 お迎えご苦労さんやなぁ」


「……な、何だこれは……!」

突如として現れた二柱の存在に、ピエールは愕然と立ち尽くす。


「――喋った……猫と、狐が……?」


――分かる。

猫の次は狐。妖しい輝きを放つ切れ長の瞳。白銀の毛並みに紫が滲み、しなやかな長い尻尾。あれは狐で間違いない。


私は胸の奥が妙にざわめくのを感じていた。

足元の水面が心臓の鼓動に合わせるかのよう震え、淡い光の輪が広がっていく。


「……え……?」

思わず声を漏らすと、背後からピエールが慌てたように声をかけてきた。

「ソファ、なにか……水が……!」

彼の声を聞きながらも、私は導かれるように自然に歩を進め、ノエルとセレナは声をかけることもなく、ただ静かに見守っていた。


彼女たちの腕に抱かれたトラヴァスは鼻先をひくつかせ、黄金の瞳を細め、シェルティは艶やかな紫の瞳を細め、しなやかな尾をゆるりと揺らし、奥の気配に細やかに耳を傾けている。


空間全体が息を呑むように静止した。

燐晶石りんしょうせきの光が一斉に揺らぎ、

空気は重くも澄み、呼吸一つで胸の奥まで浄化されるようだ。


中心から淡い光の柱が立ち上がり

水底から浮かび上がるように、柔らかな輝きが私を囲う。


遠くでノエルの声が聞こえる。

私を囲んだ光の輪が更に狭まり眩しさに目を閉じた。


目の前に、何かいる。

小さな、ふわふわとした毛並み。

灰がかった黒の毛並み。


そこからあどけない声が洞窟に響いた。

「ボク、ヤクモ! よろしくね!」


――私の前に現われたのは、あまりに人懐こい表情を浮かべる小動物いぬだった。


小さな足をぱたぱたと振り回して、私の足元をくるくる回り胸元へ飛び込んできた。

「ひゃはっ……くすぐったい!」

慌てて両腕で受け止めながら思わず笑い声を上げた。


毛並みは驚くほど柔らかく、頬にすり寄ってくる温かさが信じられないほど心地いい。


「こ、これも……精霊なのか?

 どう見ても……

 ただの……犬にしか……」

ピエールの声が聞こえた。


「…なんなのこれ……」

ノエルが吐息混じりに言葉をもらす。


「え、えっと……

 成功ってことでいいの……?」

「ここじゃ、落ち着いて話せないわね」

セレナが私の背を軽く叩いた。


「そうだね、一度出よっか」

ノエルの声に振り返ると彼女の手から光が漏れ空間を埋め尽くす。


気づけば再び泉のほとりに立っていた。

腕の中で精霊ヤクモは丸まっていたが、やがてぱちりと口を開いた。


「ねぇねぇ、何するの?おなかすいたー!」

あまりに無邪気な声に、思わず聞き返す。

「……えっ? た、食べるの?」


ヤクモは尻尾をぱたぱたと揺らし、頬をすり寄せるとノエルが吹き出してお腹を抱えながら笑ってる。


「ははっ!こりゃ傑作だわ!

 あの大袈裟な出方しといてこれ?

 ……いやー、可愛いけどさ!」


そんなに笑わなくても…

可愛いのは可愛いけど…


セレナが真剣な眼差しをヤクモに向けて呟いた

「間違いなく精霊ね。

 ――けれど、少し変わってるわね」

「変わってる?」


「……名の響きがね、

 “此方こちら”じゃないの」

「……此方こちら、じゃない?」

「ええ。名を持つ精霊には二つの系統があるの」

彼女は言葉を選ぶように続ける。


「ひとつは“此方こちらの名”。この土地に根ざした響きを持つもの。文献や伝承にも多く残されている。…一般的には伝説上の生き物、空想の存在として語られることの方が多いわね。一部の人間はそれを“精霊の名”として理解している」


「だからシェルティやトラヴァスみたいな名は、知ってる奴は結構いるんだよ。おとぎ話とか、昔話の題材になったりもするからね」

ノエルが横から補足する。


セレナは視線をヤクモに向けて

「もうひとつが“彼方かなたの名”。……遠い響き。存在しないはずの名。伝承にも記されず、“精霊の虚構”とまで呼ばれることがある。実在を疑われることも多いの」


ノエルが腕にまとわりつくトラヴァスの肉球をいじりながら、肩をすくめた。

「普通はね“精霊が応じた時点”で、その人間の属性が分かるんだよ。例えばこのトラヴァス。雷と風、二つを扱う精霊なのね」


「ふふ、私のシェルティは風と木。嵐を呼ぶか、森を芽吹かせるか……どちらの力も持つわ」

セレナは淡い笑みを浮かべ、銀紫の尾を揺らす狐を撫でる。


ピエールが問う。

「つまり、顕現した精霊を見れば……その者がどんな属性を持つか、一目で分かるということか?」


セレナは小さく頷いた。

「そう。火か、水か、風か、木か……精霊は人の魂の傾きを映す鏡のようなものだから」


ノエルが指を立てて補足した。

「それと、一応ランク付けがある。ひとつだけの属性を持つ精霊より、二つ扱える精霊の方が上位だったり会話が出来るかどうかとかね」


私は腕の中の小さな精霊を見下ろし、思わず呟いた。

「じゃあ……ヤクモは、

 どんな属性を持っているんだろ?」


なんやここ?


久しぶりに外に出れたと思ったら、

早速仕事らしぃわぁ。


レビューってなんや?

ボクへの“おうえん”だよ!


…お前誰やねん?

ボクはこの“物語の主人公”!!


なんや、レビューや感想?が欲しくてたまらんみたいやねぇ。


…次回 “俺の活躍”や!

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