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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第2歩 仲間を求めて

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運び屋④ 荷物の扱い

イツカの館の応接間にて――。


全員が応接間に入り、私たち全員を見回してから彼が口を開いた。

「最初から説明する。オロディア軍が退却してすぐ、こっちから遣いを出した」


「コードね?」とセレナ。

「正解だ。向こう側に行ってたからな。都合が良かった。ピエールの嫁さんとも無事合流してすぐの話だ」


ピエールがほんの少し表情を緩めた後、もう一度怪訝な眼差しをイツカに向ける。


「安心しろ。後で確認すればいい。嫁さんを危険な目には合わせてねぇ」

「続けて」とノエル。


「交渉相手は向こうの顔なじみで、軍部の人間だ。コードに伝えてもらったのはこうだ。“ウチが攻められた。どうするつもりだ?”と」

「そしたら?」


「“あれ”が送られてきた。“申し訳ない。当方には貴国との戦争の意思はない。当人と財産全てを合わせて届ける。受け取ってくれ”とな」


「それで、たまたま受け渡し場所に行ったのがアタシたちってワケ?」

「まあ…そうなるな」


「――ふざけんじゃないわよ!」

机を叩きつけイツカを睨みつけるノエル。


「危険はなかったはずだが?」とイツカ。


「たしかにね。危険はなかった。ファニーたちと無事合流できたのも“そのおかげ”ってことにする気かしら?」

今度はセレナが問い詰めた。

気付いてなかったけど、彼女も実は怒っていたみたい。


「そこは少し予定外だった。コードが向こう側の()()()()()()()()のは知らなかったからよ。ただ、理由を聞いてそれなら一緒に帰って来い。と指示を出した。国を出るまでは軍部が目を光らせてるし、その方が安全だしな」


「軍部?国境まで護衛に来たのは盗賊ですが…」

「知らねぇのか?あそこは表向きは盗賊、本当は軍の諜報部隊だよ」


「――なっ!そんな話は…」

「こっちの見張り兼魔物の侵入阻止と裏取引の検挙が任務だな」


――!!


「おかしいと思ったことねぇか?盗賊だったとしたら普通あの規模なら軍から討伐部隊が出るだろ?国としちゃあ、ほっとくわけには行かねぇからな」


「…確かに」と納得するピエール。


レイブの佇まいにも納得がいった。盗賊とは思えないほどの威厳と、時折見せる優しい表情。軍人さんだったんだ。


「非公式だがこっちとの取り引きの場でもある」

「それはいいの!アンタたちがコソコソ何しようが、中身が何だろうが、そんなのどうでもいい。説明なしでアタシたちを使った落とし前、どうつけんのよ?」


「ウチの人間に適任者がいなかった。使えそうな奴らは今ちょうど洞窟でトラブっててな。表にいるヤツらは、もし中身見ちまったらどう対応するか読めなかった」


「私たちなら見たとしても連れ帰って、こうやって問い詰められはするけれど無事持ち帰るだろうってことね?」


「そういう事だ。巻き込んだことについては謝る。この通りだ。もちろん報酬は払う。言い値を聞かせてくれ」


そう言うと私たちに向かって深々と頭を下げるイツカ。


普段は飄々(ひょうひょう)としていて、とても王様には見えない。今もまだ頭を下げたままの彼は、やっぱり想像していた王様のどれとも違う。


「…一つ、いいですか?」

私には聞かなきゃならない事がある。


「嬢ちゃん。もちろんいいぜ」

「ムタレン将軍…どうするんですか?」


「とりあえず話を聞く。何が狙いで攻めて来たのか。あとは国の身代わりの可能性について。だな」


「身代わり?」

「一応確認するだけだがな。コードの報告と、ピエールから聞いた話じゃあほぼ独断専行だが、本人の口から聞いておきたい」


「その後は?」

「どっちにしろ、殺すさ。落とし前はつけとかねぇとな。嬢ちゃんがやりてぇってんなら、構わねぇぜ?」


「…私は、そういう意味じゃなくて…ちょっと気になって…」


殺したい程憎いと言われれば、それは間違いなくそうだけど、いざそうなってみると思うように言葉が出なかった。


「ウチのコたちに教えてやったら2人は手をあげるわね」

「おっ?構わねえぞ?」


――()()スプライトクインテットの事かな?


「言わないわよ。せっかくお花畑にいんのに、なんで血生臭い話持ってく必要があるのさ!」


こういう時、ノエルは本当に優しい。普段のふざけてる姿とは違って、ちゃんと信頼できるリーダーだ。


「もう1つの財産?はどうするんですか?」


「こないだの砦にいたヤツらで分けるさ。近いうち、ギルドを通して分配する。働きに応じて…だがな。死んでいったヤツらには、残された家族に多めにな」


「デイルの家族にも…ですか?」

「ああ…働いた分はな」


「――!働いた分だけ?」

戦死したんだから、他の人たちと同じように多めじゃないの?


「嬢ちゃん。勘違いしてねぇか?」

「何を…ですか?」


「あの坊主が死んだのは戦いの中ではあるが、砦でじゃねぇ」


「何が違うんですか!」

「嬢ちゃんたちがあそこにいたのは、何でだ?」


「何でって、ギルドからの依頼を受けて…」

「そうだ。仕事として、ギルドに従い、国を守れって依頼だ」


「だったら何で。デイルは死んだのに…」

「勘違いしてんのはそこだよ。いいか?あの時、あの坊主達の仕事は見張りだ。追い打ちをかけろ。なんて指示は出してねぇだろ。持ち場を離れてたんだ。そっから先の話はあいつらの自己責任ってやつだ」


「――そんな言い方!」

今度は思わず私が食って掛かりかけたけど、すぐにセレナとノエルに止められた。


「この話はイツカが正しいわ。ソファ。アナタたちは依頼を受けたハンター。依頼内容以外は自己責任よ」

「プロなんだから。そこはコイツの言う通り。納得できないんなら、ハンターやめな!」


初めて2人から受けた否定の言葉。

私はそれ以上何も言えなくなった。


「そう言うこった。だが嬢ちゃん。お前は砦で活躍してたよな?俺も見てたし、報告も受けた。細かい報酬はギルドで聞いてくれ。恐らくそこそこの額で、嬢ちゃんの正当な報酬だ。それをどう使おうが、それも自己責任ってやつだ。誰も文句なんか言いやしねぇよ」


彼の言葉の真意に気付き、納得はできないものの、私は大人しく引き下がった。


「ちょっと疲れてきたわ。何か食べながら話さない?」

セレナがそう言うと、用意は出来てる。と別室へ移動することとなった。




「ソファ。納得した?」

「これが正しいの?私が間違ってるってノエルも思うの?」


「そうだね。今回のは、ソファが間違ってる」

「そっか。少し考えたい。後で行ってもいい?」

「待ってるからね」


今はほんの少し、頭を整理する時間が欲しかった。


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