表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第2歩 仲間を求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/29

救出作戦⑤ 温泉

山の奥深く、岩肌を削って落ちる滝。

水流のすぐ傍らに湧き出す温泉は、源泉そのままの熱を抱いて、湯面からは細やかな蒸気が立ち上っていた。

湯殿を囲む柱や板壁は新しく削られた木で組まれていて、湯気に混じって漂う木の香りが鼻をくすぐる。

甘やかで清々しい匂いは、山の湿った空気と相まって心をほどき、肌を撫でる湯の柔らかさと共に深い安らぎをもたらす。


「あぁ~。生き返るぅ~。ここに住む~」

「うわぁ~。ホント…。うあぁああ~」

「はぁ…染みるわね」


「セレナ。聞いていい?それ浮いてるの?」

「あら?気になる?下から掬ってみて」

「いいの?ちょっとごめんね。

 うわっ!…これは、ちょっと…」

「…何バカやってんの?」


柔らかいのに張りがあって、何あの重さ…!!

信じられない信じたくない。



◇◇◇◇



「部屋は2つ。男は1,女は4」


「…やっぱり寝れないよね?」

「新婚1組。余り3」


「離れてたのって数日だよね?ね?」

「元気なのはいいことじゃない。仲がいいのもね?」

「いやいやいやいや。これは…」


「1,2…3……えっと…」

「数えなくていいから!」

「今、5回目ね」

「数えなくていいっての!」


「え?確か私たちとお風呂入れ替わってからも…」

「マジ?マジなの?」



◇◇◇◇



――眠りについた妻の寝顔を見ていた。


思い返すのはイツカの呼び出しを受け館に着いた場面だ。

俺は応接間の扉に手をかける事が出来ずにいた。


あのタイミングでの呼び出しが意味するもの。

扉の前で躊躇する理由はただ1点。


生きているのか、それとも――。


どれぐらいの時間そうしていたのか。


「いつまでそうしてる気だよ?さっさと入って来いよ!」

ハッと我に返り、慌てて扉を開け中に入るとイツカが椅子に腰かけ腕を組む姿があった。


無意識に部屋の中を見回してしまった。


「まだここにはいねぇよ。お嬢ちゃんに付き合わしといて、帰って早々呼び出してすまねぇな。…とりあえずそこ座れよ」

彼が言葉とともに顎で対面の椅子をさしたので慌てて座ると彼は目を見据えて語り始めた。


「質問はなしだ。お前の嫁さんについてだ。もったいぶるつもりはねぇよ。安心しろ。生きてる。無事だよ」


慌てて聞き直そうとすると手で制し彼は続けた。


「質問はなしっつったろ。説明してやるから落ち着いて聞いとけよ」


その言葉に姿勢を正し、続きを待った。


「さっきも言ったが、嫁さんは生きてる。聞き間違いでも、お前を騙すつもりもねぇ。今この瞬間も生きて無事だよ。なんでそれが分かんのかってのは、今のお前には言うつもりはねぇ。情報源だけ教えとく。ウチのコードって男だ。知ってるよな?」


忘れるわけがない。あの時あの場にあの男が現れなければ今のこの状況はあり得なかったのだから。


「納得したみてぇだな?こっちはなんでそうなったのか知りてぇとこなんだが…まあ、今はいいか。コードからの報告はこうだ。

『赤毛のお姫さまとそっちへ向かう。

 預かったもんは確かに渡した。

 国境越えはリスクがあるから、

 まだ生きてるなら色男が迎えに来てくれ。』

だとよ。…嫁さん赤毛なのか?」


「はい。妻で間違いないです」


こうして妻の赤毛を撫でられる日がまた来るとは…。


「コードってのは見たまんま、戦闘面ではからっきしだ。ただ、こういう仕事に関してだけはウチでも相当上位だ。報告でウソをついた事は一度もねぇし、失敗もねぇ。だから、生きてるのも無事なのも、まるっきり信じていい。コードが信用できねぇなら俺が断言する。“生きて”、“無事”だ」


合流場所は予想外だったが、彼の言葉は正しかった。


「迎えに行ってやんな。それとよぉ、嬢ちゃんの“道”の帰りにそのままここに来たんだったよな?あいつら館のどっかにいやがるから、お前、顔出してあいつら追い出しといてくれ。うるせぇんだよ。あいつら。ギルドで飲んどけってんだ。話は終わったぜ。お前もとっとと行ってこい」

発言に込められた意図にはすぐ気付いた。

部屋を出て閉めた扉の取っ手から手も離せないまま、深く、深く頭を下げた。


そう言えば聞きそびれていたが、コードからの伝言の中の『姫さんに鼻折られたぞ、チクショウが。一発殴らせろ』とはどういう意味だ?


まあいい。今は少し眠ろう。




◇◇◇◇





漆黒の闇を背景に、湯面が青い燐光を放つ。

月明かりとは違う、不思議な力に照らされるように揺らめき、青の輝きが揺蕩たゆたう。まるで異界への入り口のような幻想的な風景…。


「ちょっと何これ!朝とは全然違う!私夜の方が好きかも!」

何とか眠りにつき、目が覚めた時は月明りのみが辺りを照らす真夜中だった。先に起きていたノエルに誘われ、もう一度私たちは湯殿を訪れた。


「ブッ飛ぶでしょ~?ここ来るときの楽しみは夜なんだよねぇ」とノエル。

「あら?私はカボブも大好きよ?」とセレナ。

「あれも美味しかったなぁ。また食べたいなぁ」

「レイブが来ていいって言ってたんだからまた来ればいいのよ」


思い思いの会話を続けていると湯殿の手前の間に人の気配を感じ、少し警戒する。


「ここって、他に誰が来るの?」

「客間はアタシたちが使ってたからレイブかな?」

「今は仕事中でしょう?誰かしらね?」


湯煙の向こうから姿を現したのはピエールとファニーだった。

先客に気付くと布で前を隠し咄嗟に踵を返すピエール。


「あら?いいわよ?こっちへいらっしゃいな」とセレナ。

「出たら仕事の話になるんだし、こっちで話整理しとこうよ」とノエル。

えっ?…2人ともそれでいいの?


布で前を隠し、目を潰れんばかりに瞑り、ファニーに手を引かれて彼は湯船につかった。


「えっと…昨夜?はお楽しみでしたね?」

沈黙を破った私の一言に、ある者は腹を抱え、ある者は意味ありげな笑みを浮かべる。

またある者は湯船に入ったばかりで既に真っ赤になり、ある者は勢いよく頭を湯に叩き込んだ。


真っ赤な顔の者が意を決して口を開く。

「ピエールの妻でファニーと言います。主人からお話は伺いました。本当にありがとうございます!」


その声を聞いて正気を取り戻したのか盛大な水飛沫を上げ、言葉を継ぐ者。

「本当に申し訳ない!湯殿を出た後、部屋に案内されたのだが、まさか隣とは知らず…」


「あら?隣だと分かってて再会の喜びを教えてくれたんでしょう?」

と笑みを浮かべたままの者。


「アタシ数えてみたの!!そしたら!アンタ行きにあんなけ謝ったのは先払いだったのね!」

と腹を抱えたままの者。


「それ数えてたんだ?言われてみれば同じだったかも…」

「数える訳ないじゃん!ノリで言ってんの!」


「アハハハハッ…」と違う意味で赤くなり、笑い声を上げるファニー。

「…ごめんなさい。あまりにも掛け合いが面白くて、つい…でももう一度改めて、ほんとうにありがとうございました」


「いいって。気にしてないから。でもピエール!アンタ帰ったらコードにお礼しなさいよ」


「もちろんそうするつもりだ。3人にも帰ったら改めて礼をしたいんだが…」


「あら?亡命してきて一文無しじゃなかったかしら?それとも実は仕事見つかってるの?」

「いや…それはまだこれからで…」


「アリアからまだ紹介されてないんならウチの雑用係として面倒見るよ。運転手兼、荷物持ち兼、素材剥ぎ取り係兼、見張りね」

「それって全部ノエルがやりなくないことなんじゃあ…」


「ソファ?悪い?それともアンタがやるの?」

「ピエールさん!素材は上手に剝ぎ取れば高く売れるそうです。だから、高く売って、一杯稼ぎましょう!」

「アンタも嫌なんじゃん。すぐ裏切ってさぁ」


「ハイハイ。お話はそれくらいにしましょ。とりあえず、目的の一つは無事達成したんだし、次の仕事の話をしないとね?」

セレナが手を叩いて場を鎮める。


「とりあえず、レイブの仕事の前に一つ決めるわね。この一団のリーダーはノエル。指示に従う事。いい?」

皆問題ないと頷く。


「一応なんでそうなるのか、理由聞いておいていい?」とノエル。

「私とソファを誘ったのはノエル。ピエールは依頼者兼、暫定雑用係。ファニーはその奥さん。これでいいかしら?」


「はいは~い。じゃあこのままセレナが話進めて」

「了解。遅くても夜明けにはここを出て、国へ帰れるわ。ここで問題が発生。追加で仕事の依頼が入ったわ」

一旦皆を見渡したが、誰も異論はないので続きを促す。


「断る手ももちろんあるわ。だけどそれだと帰るのにそれなりに時間がかかる。徒歩だとすると、かなり大変な道のりね」


ここで私が手を上げ聞いてみた。

「一応教えてもらってていい?徒歩だとすると、どれくらい危険なの?」


「いい質問ね。来た時の時間から考えると4日ってところね。別に徒歩で帰れないわけじゃないけど問題が一つ。前半の道のりでは水と食料が手に入らない。来る時見たでしょ?見渡す限り草原で何もないの」


「だとすると、仕事を受けて、条件に移動手段を入れるという事か?」

ピエールが情報を整理し確認する。


「それが一番妥当ね。あとはリーダーがどうするかだけど…」


「仕事についてはアタシが話すわ。内容はこうよ。『中身が不明な荷物を持って国へ持ち帰れ』国境まではここの連中の警護付き。移動手段も多分連中持ちか既に支払い済み。イツカとここの連中との取り引きで、アタシたちはその運び屋。詳しい話はこの後話があるけど、受けるしかなさそうな流れね」


お手上げだわの仕草を見せながら語るノエルに私たちは頷くしかなかった。


「決まり、ね。そろそろ出ましょうか」

セレナの一声で皆湯船から上がる…。


「あ、こらピエール」とファニー。

「あ~。やらしいんだ~」とノエル。

「あら嬉しい。見たいの我慢してたもんね?」とセレナ。

「あっち向いて最後に出てきて!」

…見られた?



…これでいい?

お願い。これでいいと言って!


ここまでしたんだから感想は忘れずに!

レビュー?レビューって何?

なんにしても絶対忘れないで!!

セレナは何アレ?

ノエルも何あの足?

ファニーもセレナ程じゃないけど…

ピエールは…何アレ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ