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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第2歩 仲間を求めて

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救出作戦③ 盗賊の巣窟

――夜明け前、薄闇の中で山肌に張り付くような石の城。

砕けた塔は歪んで赤い光が漏れている。笑い声が聞こえてくるってことは、この城は眠らない盗賊たちの巣窟で間違いないみたい。


「ここって、元はお城で合ってる?」

「そうよ。私たちの国ができる前の時代にオロディアが建てたの。対魔物用の物見櫓と前線基地ってところね」

「んで、ウチができて、攻めてこないならいらないよね?ってんで捨てられたお城。今は見たまんま盗賊が占拠してるの」

私の問いにセレナとノエルが答える。


「一つだけ確認させてくれ!」

後ろから慌てて追いついてきたピエール。

「すまない。まさかとは思うが、このまま4人で正面から入るのか?中の様子を伺うとか…俺が偵察として中に入るとか…」


「なんで?」「どうして?」ノエルとセレナが2人とも不思議そうに首を傾げる。


「君たちは、女性だ。…ここは盗賊の拠点だ。…その」


「優しいよねぇ。心配してくれてるんだ?心配いらないから。ソファはビックリするかもだけどね」

「えっ?何かあるの?」

大丈夫大丈夫~と言葉を交わすうちに城門に到着した。


――朽ちた城門の内側は、穴だらけの天幕が乱立していて廃墟みたい。かと思えばその内側からは異様な熱気。焚き火を囲む盗賊たちの笑い声、略奪品の山、酒樽や金属器。荒廃と喧騒の奇妙な共存。


「うわっ!」

思わず声に出ちゃった。


「前より臭くなってる~」

「確かに匂うわね」と前を歩く2人。


((女だ、だれの戦利品だぁ?いい匂いがすんなぁ。お~ここまで匂うぜぇ))

焚火を囲む盗賊たちが、こちらに気付くとわらわらとこちらへ向かってくる。


「わぁ~、ゾンビだぁ。ソファゾンビ見たことある?」

「ない…けど、あれゾンビなの?盗賊は?」

「生き物よ。ニンゲン」軽口を交わしていると砕けた塔から声がかかる。


≪おぉ!はえ~じゃねえか!こっち上がってこいや!≫

ゾンビたちは()()()()()()()()みたいにブツブツと元居た場所に引き返す。


「今早いって言ったよね?予想通りの展開なんだけど~」肩を落とすノエル。

「上がっていいの?中に入るってこと?…あそこに?」


「あら?ソファはここが気に入ったのね?待ってる?」

「お願い!連れて行って!」

私はセレナに縋りついて追い掛ける。


盗賊の脇を抜け歩を進めると、後ろから我も我もと私たちを追ってくる盗賊たち。気付いたらピエールの姿が見えない。


((男じゃねえか!色男が女のケツ追っかけてんのかぁ?後で奢るから1人分けろよ!なっ!))

どうやら更に後ろから罵声を浴びせられながら追いかけて来ているみたい。

ごめんピエール。


城の中は外からは想像も出来ないほどに清掃が行き届いていた。


「あっ、良かった。ピエールも来たみたい」

「おっそ~い。早く上がるよ」

「凄い人気だったわね?」


ピエールも外と中の違いに声を失っていた。


「おぉ色男!生きてやがったか。こっちだこっちだ」

酒瓶を手にこちらを手招きする男は見知った顔だ。


初依頼達成の時にギルドで会ったのが最初、その後一度依頼に付いて来て貰った事もある。オロディア軍との戦闘前にこっちへの潜入任務を受けていたし、実は凄腕らしい。


「コード!こんなとこ呼び出してなんのつもり?」と問い詰めるノエルを無視し、

「セレナじゃねえか!外出んのいつぶりだ?」と近づくコード。

「相変わらずね。説明してくれるんでしょう?」とセレナ。


「そうだな。とりあえずこっち来て座っててくれ」

そのまま奥の一室へ案内し、部屋を後にしたコード。



「…広くて綺麗な部屋だね」

沈黙に耐え切れなくて誰ともなく声をかけてみた。


「男かなぁ…女かなぁ…」

ブツブツと呟いたままのノエル。


ピエールは冷静になろうとしているみたいだけど、やっぱりソワソワと落ち着かないみたい。


「…来たみたいよ」

セレナの言う通り廊下の向こう側からこちらへ近づく足音。扉が開かれ、現れたのはコードと大男だった。


テーブルを挟んで向かい側に座った大男。身なりは整い、きちんと手入れされた姿は武人にしか見えない。


「久しぶりだな。ノエル、それにセレナ。また会えるとは思わなかった」

「久しぶり~。元気してた?」小声で返すノエル。

「そうね。私もまた会うとは思わなかったわ。元気そうね?」

セレナの返事に少し嬉しそうに微笑む大男。


「こっちの嬢ちゃんは新顔だな。名前聞いていいかい?」

「はい、ソファといいます」

見た目とは違って優しい笑顔と優しい声。


「いい子じゃないか。すまない。こちらから名乗るべきだったな。名はレイブという。ここの頭領をやっている。気は進まないだろうがよろしく頼む」

丁寧に頭まで下げてくれたので戸惑っていると彼は構わず続けた。


「あんたがピエールかい?」

「はい。私がピエールです」

しっかりとレイブの目を見据えピエールは答えた。


暫くピエールを品定めするように眺めてから軽く目で微笑む。


「安心しな。奥さんは無事だ。すぐに会わせる」

目を閉じ安堵の息を吐くピエール。


「コードが伝言を飛ばしたのは昨夜だが、夜通し駆けて来たのか?」

「はい。私がイツカ殿より伝言を受け、3人に頼みこちらへ」


「そう固くなるな。ここは軍じゃねぇんだ。悪いがまず情報の整理をさせてくれ。奥さんに会うのはその後になるが、いいか?」

問われたピエールは頷くしかなかった。


「着いたばかりだろ?今飲み物と軽食を用意させてる」


「助かるわぁ。喉カラッカラだったの」

「私も頂いていいですか?」

「せっかくだから、カボブがいいわ。贅沢かしら?」


「セレナがいると聞いたからな。用意させてる。すぐ持ってくるはずだ。このまま話していいか?」

私たち全員が頷いたのを確認し、レイブは話を進めた。


「こないだこっちのムタレン将軍の軍が、そっちへ攻め入った。国境を少し越えた辺りで反撃にあい、こっちへ逃げ帰ってきた。ここまでは間違いないな?」


「間違いない、です。私たちもいましたから」


「先陣を率いたのは私です。私は祖国を裏切ってしまいましたが…」


「ただの情報の擦り合わせだ。他意はない。続けるぞ。それからこっち、この国の情報はどれくらい知ってる?」


「何も知らないわよ。アタシたちがそれ調べてどうすんのよ?」

「そうだよな。単刀直入に言うぞ。ある“もの”を持って帰ってくれ。“これ”はイツカとの取引だ」


「こうなるとは思ってたんだよね」

ノエルが机に突っ伏せば

「イツカさんとの取引?」

どういう事?


少し場が混乱する中、扉が開いて軽食と飲み物が運ばれた。


「悪いがメシ食いながら仕事の話は嫌いなんだ。一緒に食おうぜ」

まずはグラスに黄色い果実が浮かんだ水が配られる。


ノエルはそれを手で受け取り一気に飲み干すとおかわりを要求した。

「そんなに水飲んでなかったのか?」

笑いながらレイブが水を注ぐ。


今度は一口味わってからノエルが答える。

「それもあるけどさ、ここの水好きなんだよね。でも今日ちょっと甘いよ?」

「そりゃあれだ。疲れてんだよ。後でちょっと休んでけ」


「私も好きかも。甘い?でも少し酸っぱいような」

「私もおなじね。ノエルはずっと御者席だったから」


「どっちにしろ休んでっていいぜ?まぁ食えや」

そう言ってテーブルの上の料理を差し出した。


「これ何ですか?パンに挟んだ

 ――お肉と野菜?」


どうやら妻とまた会えるようだ。

こんなに早く会えるとは…


だがノエルが心配するように

帰りも不安だ。

すまないが応援を頼みたい。


次回 妻との再会

恥ずかしいが…楽しみにしてくれ。

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