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精霊と歩む少女 ―古の名を継ぐ者―【主人公視点での物語】  作者: アインス
第2歩 仲間を求めて

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救出作戦① 未明の出発

「やっと静かになったね」

アリアの足音を遠くに聞きながらノエルが口を開いた。


「アリアには悪いけど、イツカの呼び出しは()()()かしらね?」


「オロディアに残した奥さんの事?…無事だといいね」


「何言ってんの?無事だから迎えに行けって話じゃん!」

「えっ?そうなの?」


「多分そんなところでしょうね。ソファはまだこの国のハンターが信じられない?」



分からない。

私には分からない事が多すぎる。


私はこの国にある村で育った。

そこで同い年のデイルとマウロと出会い、旅の大人たちに聞かされたハンターたちの物語に憧れて、ここで一緒にハンターになった。


――初めのゴブリン戦。

――小さな成功。

――そして、予兆もなく現れたオーガ。

――逃げ場を探す間もなく迫る巨体。

――恐怖で足がすくんだ、自分。

――そのとき森の奥から現れた“彼”。


後でギルドの酒場で聞かされた彼の名前が()()()だ。


その後すぐに起きた敵軍との戦闘。

私たちは理由も分からないままギルドの依頼を受けて戦いに参加した。

聞かされた敵軍の数は5000人。

正直初めて聞く人数で、それが多いのか少ないのかすら分からなかった。

ただ対する私たちは100人程度と聞いて、勝てる訳がないと思った。…誰だってそうでしょ?

どうしようか迷ってる私たちに「一緒に来る?」と軽く声を掛けてきたのがセレナだ。

彼女は戦いを見るのも経験になるからと私たちを連れ出した。


セレナ連れられた先は完成間近の砦。

私は同じくギルドからの依頼を受けたドワーフたちと一緒になって砦の建築を手伝った。

その時私に治癒魔法以外の魔法の使い方を教えてくれたのがノエルだ。

まだ私の属性や魔法について、精霊について。聞きたいことは山ほどあるけど、私はこの2人を信じてる。


「…どこまでトリップしてんの?」

「信じられるかどうか、この数日で色々起こり過ぎたから考えてたんじゃないかしら?」


口は悪いけど、なんだかんだ私を心配してくれるノエルに、いつだって落ち着いた口調で導いてくれるセレナ。


「ごめん。ちょっと色々考えちゃった」


「…あぁ、デイルとマウロだっけ?」

「デイル君は…残念だったわね」


一緒に村を出てハンターになったデイルとマウロ。


2人はオロディア軍を作戦通り打ち破った夜に、一緒に見張りになった先輩ハンターたちと本陣へ忍び込んだ。

そこで背走する本陣の混乱の中で囚われた女性たちを庇い、デイルは戦死した。


彼の最後を看取れたのは運が良かったってイツカさんが後で言ってた。

その時の私には意味が分からなかった。


デイルが私に告げた最後の言葉。

「生きろ」


生きる為には力がいる。

無くさない為には力がいる。


私は力を求めて、手を差し伸べてくれたノエルに従い、精霊ヤクモに出会えた。


デイルの最後の言葉。

「ソファを頼む」


これは残されたマウロに向けた言葉。

彼はその言葉を受け止め、この国にある“道”という修行場に行く事を決めた。

ノエルが言うには、命の心配はなくて、必ず強くなって帰ってくるらしい。


こうして一緒に村を出た3人は、数日でバラバラの道を歩んだ。

「誰だって通る道だよ。嬢ちゃんたちは()()が他より早かったかも知れねぇがな」

これもイツカさんの言葉。


――私たちには抗える力がなかった。



「…そろそろ帰ってきなよ~」


「あ、ごめんごめん。

 私ノエルとセレナは信じてるよ」


「あら?それにしては随分考え込んでたわね」

そう言ったセレナは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「そんなんじゃないよ。本当になんて言うんだろ…信じてるし、感謝してるの」


「こらぁ~。ソファを苛めるのはアタシの役目!」

「あら?そうなの?」


苛めていい訳じゃないけど…


「もういいから!…っとピエールの奥さんの話でしょ?」


「あ、ちゃんと聞いてたんだ」

「戻ったみたいね。じゃあ、彼が戻ったらどうするか。今のうちに決めておきましょ?」


「え?一緒に行くんじゃないの?」


私の答えにノエルとセレナが顔を見合わせて笑った。


「そう。それでいいのよ」とセレナ。


「迎えに行きますか~。ウチの運転手兼、荷物持ち兼、素材剥ぎ取り係兼、見張りの奥さんをさ!」


なんか雑用係みたい?

ピエールも十分強かったのに?


「あっ。ピエールじゃん。

 イツカの用事は終わったの?

 突っ立ってないで座んなよ~」


ノエルの言葉にハッとして振り返ると、開けっ放しの扉からピエールが顔を出した。


「す、すまない。覗くつもりはなかった。っと、今アリアと凄い勢いですれ違ったんだが…」


「ほっといていいよ~。すぐ戻ってくるだろうしねぇ。…飲む?」


展開について行けない様子のピエールだったが、ノエルが差し出したグラスを手で制し頭を下げた。


「どした…「すまない!」


「すまない。少し話を聞いてもらえないだろうか?」


「時間外労働はしないんだけどねぇ~」

軽口で応じたノエルをセレナが制す。


「私たち、ちょっと着替えてすぐ戻るわね。その間に話をまとめられる?」

ピエールはセレナの言葉の意味が呑み込めず、怪訝な表情を向けた。


「ホントにすぐ戻るわよ?それとも一緒に来る?…でも時間ないんでしょう?残念」

彼が答える間もなくノエルを連れて彼女が部屋を出た。

私はどうすれば?とキョロキョロしていると入り口でセレナが手招きしているのが見えたので素直に従った。


外に連れ出された私たちに、セレナが手を差し出した。

掌には色の違う丸薬?が六つ。


「眠気覚ましと酔い覚ましよ」

「苦いんだよねぇ~コレ」

そう言いながらもノエルは丸薬を受け取り鼻を抓んで飲み込んだ。


苦いんだ…。

確かに酔ったままじゃ駄目だよね。

私もノエルを真似して飲み込んだ。

…にがっ。



戻ってすぐにセレナが口を開いた。

「お待たせ。話していいわよ」


私たちはまだ苦さで口を開けない。


「あ、ああ。すまない。まず謝らせてくれ」

ピエールはセレナの様子を伺うが、彼女は目で続きを促した。


「妻の事なんだが…順を追って話す。

 イツカさんとの話は、妻の事だった。

 生きてる。無事だと」

ピエールの声には少しづつ力が入っているように感じた。


「コードからの伝言で、

 迎えに来いとの事だった。

 場所も聞いている。で…、」

「もういいわよ!場所どこよ?」

ノエルがピエールの言葉を遮って前のめりになる。


「あんたねぇ。顔に出てんのよ。“申し訳ないが来てくれないか?”ってね。来ないかもって思ってるワケ?」

「来て…くれるのか?」

彼は驚きの表情を浮かべ訊ねた。


「あら?お願いして、“ダメ”って言っても説得するつもりだったんでしょ?時間の無駄よ。時間ないんでしょ?」

「場所教えてください」

私たちの意見はもう決まってる。


「って言っても地図なんか持ってないから、動きながら聞きましょ。はい!出発!どっち行くか案内しなさいよ」

言葉より早くノエルが席を立つと、私たちもそれに続き慌ててピエールもすぐに追ってきた。


私たちが館を出たのは、雲の向こうに月が見え隠れする夜だった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――



騒がしい足音とともに


「お待たせっ!!」

山のように盛られたルベラの実を手に、離れの扉を開けたアリアは立ち尽くした。


「…ヤクモぢゃぁあぁぁん」



ピエールだ。

ファニーは無事…感謝を

まだ会えていないが…感謝を


すまない。

代わりに感想やレビューを送ってはくれないだろうか?

…夫が今から向かうとファニーにメッセージも…

すまない。


次回…まずは作戦会議じゃないのか?

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