【短編】婚約解消を望もうとも、婚約者から言葉を聞かない限りは応じませんわ
「ディアナ・アルヴィエ様、アーレント様から婚約解消のご連絡が来ました。どうか承諾ください。それがアーレント様の望みで、延いてはディアナ様の幸せに繋がるかと存じます」
早馬で婚約解消の書面をもってきた騎士は、そう言い切った。私の幸せ、アーレン様の望みと。
アーレント様は現在王都に突如現れた黒竜討伐に出て、勝利したと聞く。その時に第一王女を守って、英雄扱いだと言うことも耳に届いている。
私より3つ下で彼は現在16歳。
私が14歳で彼が11歳だったか、辺境地に赴任した当初、私を婚約者にしたいと言ってきた。戦う私の姿を見て「幸せにするから」と言って婚約を望んだのが彼だ。
元々アルヴィエ伯爵家は、アーレント様の実家バシュラール辺境領と近かったのもあり、彼とは幼馴染でもあった。
紆余曲折あったが、両親は辺境伯から莫大な金銭をもらったことでアーレント様との婚約を快諾。花嫁修業だからと、辺境地で住むように勧め──というか身一つで追い出された。アーレント様を含めた辺境伯と夫人は喜んで迎えてくれて、早5年。
辺境地での魔物討伐も落ち着き、彼の成人の日を迎えたら結婚の準備に入ろうとした矢先の婚約解消。
1.第一王女が熱を上げて部下に指示を出した。
2.第一王女とアーレント様の婚姻に持ち込めば、出世を約束すると言われて部下を買収した。
3.アーレント様が心変わりした。
4.何らかの事情で婚約解消する事態が発生した。
このどれかが濃厚なのだけれど、まあ私の結論は決まっている。
「そう。ならこう伝えてくださる? 『アーレント様ご自身が本当に婚約解消を望むのなら、本人が書面を持って説明しに来なさい』と!」
「え」
ニッコリと笑顔で微笑むと指をパチンと鳴らして、強制転移させた。「ちょ、でも団長が」と言いかけていたが、騎士の姿は消える。
ふう、と吐息が漏れた。さてどうすべきか。ずっとドアの傍に居た護衛騎士と侍女に視線を向ける。
「エミー。喉が渇いたからお茶を持って来てくれる?」
「はい、かしこまりました」
侍女のエミーは元気よく返事をして、部屋を出て行こうとした。その直後、部屋にノック音が響いた。
「はい」
部屋に入ってきたのは執事長だ。いつもよりも精彩が欠けているような顔をしていた。魔物暴走でも平静を保っていたのに、何があったのだろうか。なんとなく嫌な予感がする。
「失礼します。今先ほど伝令が来たのですが、国境付近の結界に巨大な亀裂が入ったのを確認しました」
「はい!?」
その場の空気が凍り付いた。バシュラール領の隣は死の大地とされ、漆黒の森に瘴気に満ちた場所が続く。大陸の四分の三の領地が漆黒の森を含めた死の大地になっており、そこから溢れる瘴気から魔物が生じる。
長い間、国境付近には強大な結界を張り続けていた。その結界に亀裂が入ったというのであれば、確認と魔術による補強は必須だ。
問題はその対応が出来る者が、一人を除いて王都にいるということ。
「なるほど。だから婚約解消を言い出した?」
「ディアナ様?」
「ほら、婚約者じゃないのなら責任をとらずに逃げろって意味かもしれないでしょう。手に負えない結界の亀裂とかの可能性もあるもの。……ああ、それとも本当に私が邪魔になったのかしら」
「「「後者は絶対にないのでは??」」」
侍女のエミーと執事長と、護衛騎士が口を揃えた。その言葉に苦笑しつつも、エミーの淹れてくれた桃の香りのする紅茶を口にした。
美味しい。やっぱりエミーのお茶は最高だわ。
「ふふっ、じゃあ答え合わせは後の楽しみにしておきましょう」
私は手に自分の背丈と同じロッドを亜空間ボックスから取り出す。漆黒のローブを羽織って令嬢から、第一級大魔術師として気持ちを切り替える。髪も軽く結んで髪留めで簡単にまとめた。エミーが「私の仕事がぁあ」と不満げだったが、時間がないのだ許してほしい。
(さて、亀裂は人為的か、結界の術式が経年劣化しただけならいいのだけれ──っ!?)
刹那、何もない空間から鈍色の弾丸が降り注ぐ。銃弾の弾幕が降り注ぐ中、魔法防御と物理攻撃無効化の付与魔法を展開。
ドドドドドドドド!
部屋の壁は穴が空くし、窓硝子はめちゃくちゃだ。
「あーもう、硝子は高いのよ! 黒の鎖」
「ディアナ様、そんなこと言っている場合ですか!」
私の放った漆黒の鎖が襲撃犯を捕縛していく。エミーは弾丸を全て回避しつつ、いつも通りツッコミを入れる。彼女だけではなく執事長もすでに退避していた。このぐらい出来なければ、辺境地では生きていけない。
(警告なしの空間転移に魔術銃器、襲撃犯は複数でいきなりの発砲……。以前から水面下で仕掛けてきていたカルト集団かしら)
普段から俊敏な魔物相手に戦っているのだ。奇襲であっても遅れを取ることはない。ふと耳を澄ますと屋敷以外にも銃声音が聞こえてきた。領民の殆どは戦闘員並の精鋭揃いだが、それでも弓と違う銃器に手を焼いているかもしれない。
屋敷の襲撃犯を制圧した後、壊れた窓から飛び出す。
「執事長は後の処理。緊急警報を」
「承知しました。お気をつけて」
「貴方も」
***
カルト集団の特徴は全身黒尽くめで、ローブなどのひらひらした服装などではなく、どちらかというと暗殺者のほうがしっくりくる。魔術銃器は錬金術を使った専用の弾を使っているようで、莫大な費用が掛かっているはずだ。支援者は相当な財を持っているのだろう。
(ますます王都の大貴族あたりが噛んでそうね。辺境伯を失脚させるためにしては、やり方が杜撰すぎるけれど……)
「あ。ディアナ嬢!」
聞き覚えのある声に振り返ると、二年半前に入隊したムードメーカーのジョンが手を振っていた。茶髪で、そばかすのあるいかにも好青年といった騎士見習いだ。
「ジョン! 他の騎士、いいえ騎士長はどこ?」
「それが……」
目配せで視線を斜め下に向けたので、目で追うと血まみれの騎士長に気付く。
「騎士長!?」
死にかけているが、まだ息はある。すぐさま治癒魔法をかけて、次は──。
ずぶり。
衝撃と共に、ジョンは殺意なく私の腹部を刺した。
「かはっ」
「やっと、この距離まで詰められた」
「──っ」
目の前に立っている敵──ジョンは薄笑いをしたままで、そこに敵意も殺意もなかった。朗らかに微笑む。
(──ッ、油断した)
殺意も敵意もないから、動くのが遅れてしまう。
どすっ。
胸を貫かれ、血飛沫がジョンに掛かった。
「──っ、あ」
「すみませんね。本当はここの陥落だけだったんですが、第一王女がどうしてもディアナ嬢が邪魔だって追加依頼が入ったもので……。おとなしく死んでください」
しくじった。
これは、完全な致命傷だ。治癒魔法じゃ、間に合わない。
視界がもう。
意識が。
衝撃と激痛で、意識が遠のく。
***
『ディアナ』
私の名前を呼んでくれたのは家族ではなくて、泣き虫の男の子だった。深淵の森の中を彷徨っていて、助けたのが最初。
家に居場所がなかった私は、深淵の森の中に作った秘密基地的な小屋に住んでいた。そこで9歳だったアーレント様と出会って、隣の領地に送り届けてから一緒に居る時間が増えていった。
『兄様が星になってしまったから、これからは僕がもっと頑張らないといけないんだ』
『アーレント様、でもだからといって独りで魔物退治は無謀ですよ』
『でも、僕が頑張らないと領地の人や、父上や母上がいつまでも泣いて、悲しい顔をしてしまう』
(ああ、この子はこんなに小さいのに領主としての心構えが出来ているのね……)
『だから僕が頑張って、領地をよくするんだ』
目を輝かせてこれからのことを語るアーレント様は今も昔も輝いていた。辺境伯として生きることが過酷だと分かっていても、諦めず覚悟を決めた姿に胸を打たれた。私よりも小さな男の子が頑張っているのだ、私も頑張ろうと思えたのだ。
自分の不遇な立場がちっぽけに思えて恥ずかしい。
両親に「もっと美しく生まれたら」とか「愛想のない子ども」「笑顔一つできないのか」と失望と侮蔑の言葉に心がすり減って、引き籠もっていた私に道を指し示してくれたキッカケは間違いなく彼だ。
『では私も微力ながら支えられるように尽力しますね』
『ほんとう? ディアナは、ずっと僕のそばに居てくれる?』
『はい、(臣下として)アーレント様の傍で支えます。貴方の道が少しでも辛くならないように、闇夜を照らす篝火ぐらいにはなりましょう』
私はこの時初めて人のために魔法を使った。光る花を生み出し、深淵の森に明かりを灯す。
『わあ、すごい。すごい!』
『ほ、本当ですか?』
『うん、ディアナは凄いんだね』
『……!』
初めて嬉しいと口元が緩んで微笑んだ。人は嬉しいと口角が上がって、自分も自然と笑えるのだと知った。
『……可愛い』
『え?』
『ねえ、ディアナ。約束。ずっと僕の傍に居てね』
『はい』
幼い頃の他愛のない口約束。
剣の才能は皆無だったけれど元々あった薬草の知識を深め、魔法に磨きをかけた。実家を飛び出して冒険者として実力を身につけ、辺境伯からの推薦を頂き魔術学院を飛び級で昇格。辺境地で本格的に魔物討伐に赴いたのは14歳だったと思う。
『約束通り、支えに来ましたわ。未来の辺境伯様』
『ディアナ!』
辺境伯や夫人、それに使用人の人たちも訪れる度に歓迎してくれたことも嬉しかった。私はアーレント様の補佐として仕えているだけで幸せだったのに──。
『縁談が来ている。伯爵令嬢として最後に家のため侯爵家の後妻に入れ』
両親が無理矢理縁談を組ませようとした時に、辺境伯や夫人が動いて私はアーレント様の婚約者としての立場を用意してくれた。辺境伯に嫁ぐからと相当な額を実家に贈って、私の籍を遠縁の騎士長と養子縁組することで実家と完全に縁を絶ちきった。
契約婚約。そう思っていたし時期が来たら、正式にふさわしい令嬢がアーレント様の奥様になる。だから覚悟していた。
でも──。
『ディアナ。今度は僕……俺が約束を守りたい。君とずっと一緒に居たいんだ。……っ、愛してる。俺が成人したら結婚してほしい』
『──っ』
私の一番好きだった白いアネモネの花束を差し出して求婚してくれた。アネモネの花言葉には「はかない恋」とか「見捨てられた」という意味もある中で白い花だけは「希望」という前向きな意味が込められている。
辺境地と伯爵家の領地に咲く花だ。『この花を見る度に“頑張ろう”って思えるの』と、アーレント様に話していたのを覚えていてくれたのだろう。
『私、アーレント様より三つも年上なのよ?』
『俺が好きになったのはディアナだったから、年とか身分とか関係ない』
出会った時と同じように目をキラキラしていて、今も昔も眩しい。お日様のような笑顔に、瞳の輝きに、私は生かされてきた。
『本当の本当に? 私、夫人のように剣を手にとって戦えないわ』
『あんなに凄く綺麗で優しい魔法を使うのに? ディアナは母上だって負けないすごい力を持っているじゃないか。俺、もっと大人になって隣に立てるように強くなるから、だから……ディアナは、俺と一緒に幸せになることを諦めないでほしい』
幸せになって良いと言ってくれたのも、一緒に歩いて行こうと手を差し伸べてくれたのも、アーレント様だけだった。
嬉しかったけれど、臆病な私はアーレント様の気持ちを受けきれずにいた。
本当に私が妻になっても良いの?
もっと広い世界を見て、私ではなく別の素敵な令嬢が現れたら──いらないと言われない?
いつもどこか不安だった。愛しているという言葉は本当だと分かる。
大切だと言う気持ちも、傍に居たいという思いも。
でも私には覚悟が決まらなかった。私は私の価値を一番疑っている。だからいざとなったらアッサリと死を受け入れてしまうんじゃないか。
アーレント様に好きな人が出来たら、縋ることなく、笑顔で送り出してしまう気がした。
私は愛されずに育った人間だから愛される思いに、幸福に、窒息しそうになる。怖がりで、臆病で、弱虫で、すぐに逃げようと考えてしまう。
アーレント様、私はとっても卑怯な人間なのですよ。傷つく前に逃げてしまう。自分の命を軽く扱いがちな駄目な人間なのです。
そう、思っていた。
胸を刺された瞬間までは──。
『ディアナ』
死の淵でアーレント様の声を聞いた瞬間、死にたくないと心の底から思った。
いやだ。
生きたい。
死にたくない!
アーレント様と一緒に生きたい。
彼の隣を歩きたい。
「お帰りなさい」も「答え合わせ」もまだ。
『ディアナ、約束だ』
(──っ、約束)
死の淵だろうと呼び戻すのは、いつだって彼の声だ。記憶の中にあるアーレント様の笑い声。手を差し伸べてくれる辺境地の人たち。それらの、彼らへの未練が私を現実に引き戻す。
***
「──っ、ぐっ」
「なっ、今ので意識を保って……いや、それどころか生きているなんて、ありえない」
パキンと、身代わりの魔法を掛けていた髪留めが壊れた。あれは花祭りの日に、アーレント様から頂いた物だ。ふわりと長い髪が顕になる。
(即死は免れたけれど……)
ジャンの刃を握る。
胸、腹部の血が止まらない。かといって騎士長の治癒魔法を止めると彼も死ぬ。結界の亀裂もミシミシと嫌な音を立てていた。
このままだと私が出血多量で死ぬ。
だからといって治癒魔法を今止めたら騎士長が死ぬ。
結界の亀裂を放置すれば領地が滅ぶ。
そこからは選択の時間だ。どうすべきか、なにを優先するか。
「この場所を地獄に変えたい。消したい相手もいる。恩を着せたい! 様々な事情と欲望が渦巻いた結果です。いまさら何をしたって変わらない!」
「そ……う」
王都の安全な場所から手駒だけを派遣させて、自らの欲望を満たそうとしている。その考えにも腹が立ったし、そんな連中の好き放題されるのにも我慢がならなかった。
(辺境地に……私だけでも残っておいて良かった。……義両親がいたら、きっと止めたでしょうから。……それにアーレント様も)
辺境地に来て魔物討伐として共に戦えた日々が、なんだか懐かしい。穏やかな時間を、家族の温かさを教えてくださった辺境伯や夫人には感謝しかない。この領地の人のために恩返しが出来る。
何を捨てて、何を拾うか。いつだって残酷な現実を突きつけてくる。
そのたびにこの辺境地の人たちは覚悟してきた。でもその理不尽を私は許せそうにない。
だから、私は──。
大地に手を突いて、周囲の魔素をかき集める。
「……この世界には……大きく分けて……魔術と魔法の力がある。魔術は複雑な命令を……術式や演算によって作り上げ、そこに……自身の魔力を注ぎ構築。……では魔法は?」
「急に何の話です? 気でも狂いましたか?」
ジョンは困惑していたが、なにかを察して私から距離をとった。そんなことをしても意味は無いのに。
「魔法は……周囲の魔素を……自分の魔力として変換し、無尽蔵に……魔力供給させることが……出来る点と、術式や……演算なしに感覚で世界……を書き換えるだけの出力を持つ。…………最大級魔の奥義」
「なんだ……大気が、雪?」
「……最大級……魔法、奥義──虹の……祝福」
ペキペキパキ……。
雪のように降り注ぐ光の粒に人や結界などの術式のみ反応し、接触すると結晶化する。建物や木々は特に変化は無い。そのことに気付いたジョンの表情が強張った。すでに足が結晶化したことに気付いたのだろう。まあ、気付いただけでどうにもならないけれど。
「──っ、まさか魔法!? そんな馬鹿なっ!」
「私は……いつだって……魔法を使っているわよ。魔術だって……言った……覚えはない……もの」
「そんなわけない。魔法を扱う者は十二大賢者として名を馳せた。君は──」
「……私は……十三大賢者に……なり……たい……なんて、一度も……思って……いない……もの」
「ありえないっ、こんな結末ありえな」
ジョンは顔を歪めるも、全身が結晶化した。これで生き証人も捕獲完了だ。
辺境地の空に降り注ぐ七色に煌めく雪。それは圧縮した魔素を可視化したもので、接触部分から一瞬で全体を結経化する。身体の傷を癒す対価に触れた者の時間を停止させる。結界も同じだ。
もっともそれなりの時間がかかるが、全部を掬い上げるのだからしょうがない。
(誰も……死なせ……ないし、諦め……ない選択……)
私自身の結晶化もだいぶ進んでいた。傍に居た騎士長は結界を張っているので、時期に目覚めるだろう。彼には今回の状況を正確に伝えるためにも、結晶化してしまうと困る。騎士長は私の養父で、アーレント様の師匠だ。助けないなんて選択肢は最初からない。
全部を助ける。
そんな我が儘を通すため私は魔法を極めた。
実家では役に立たないと言われていたけれど、辺境地では役に立ったのだから頑張った甲斐はあったと思う。
「……ふう」
大きく息を吐く。
(魔物暴走だったら……何とかなっただろう……けれど、単なる補填じゃ……王都から戻るまでに……間に合わない。これで時間を稼いで……私の結晶化の……解除は……魔力が戻る……まで……35,063.628055556時間?)
思考がもう……。
(そのとき……アーレント様が……独り身じゃ……なかったら、……文句を言って……ああ、でもその前に……エミーの紅茶を…………………………)
そこで私の意識は途切れた。
**アーレントside**
幼い頃、ディアナが魔術師ではなく大魔法使いだと知ったのは偶然だった。魔法の花を見せてくれた時はとっても可愛くて、手を離さないようにしようと先手を打った。
ずっと一緒。傍にいて欲しい。初めて恋を知った。
彼女はどんどん強くて美しくなっていく。数千のイナゴの群れを一撃で屠ったその姿が、目に焼き付いて強烈に憧れた。誇らしくて、でもディアナの魅力に気づいたのか、ディアナに声をかける人が増えて焦った。
王国随一の魔力量と技術を持つ大魔法使い。
葡萄酒のような深紫色の長い髪、空色の綺麗な瞳、白い肌に小柄な姿は普通の令嬢と変わらないのに、彼女の黒いローブに黒のドレス。虹色のカラスたちを従えて、空の色を変えるほどの巨大な魔法陣を何度も見た。
魔法を人の為に使いたいと微笑んだ姿も、窓辺で本を読みながらお茶をするのが好きなところも、集中すると岩みたいに動かない変わったところも全部好きだ。
誰よりも強いのに、誰よりも優しくて自由で気ままで、どこか達観していた。まるで舞台の外から世界を見ている傍観者のようで、それが酷く嫌だった。
傍に居て自分の輪の中に入ってほしい。
自分だけを見て、笑っていて──。
周囲を全力で牽制しつつ、必死でディアナにアプローチをして、意識して貰うまでに数年かかった。
ディアナは大魔法使いだけれど、それを知っているのは辺境伯と俺だけ。周囲には隠蔽魔法で魔術だと思わせている。この力を表に出せば、間違いなく彼女は王族に取られてしまう。
それなら辺境地が隠れ蓑になろう。彼女が自由に生きられるように、笑っていられるように、ありとあらゆる手段を使って守ろう。
そうあの日、プロポーズをした時に誓ったのに。
絶対に何があっても守ると言ったのに。
結局、俺は守られる側になってしまった。俺の手の届かない場所で、辺境地まるごと救ったのだ。
***
ディアナが魔法を使った翌日。
王の間に着くなり「早々に辺境地に戻る」と告げた。しかし国王は玉座に座りながら第一王女に視線を向けるのが見えた。嫌な予感しかしない。
ここには宰相と大勢の大臣や臣下たちが揃っていた。今回は王都襲撃の功を労うという名目で集まるように事前に言われていたのだろう。本当に根回しだけは超一流だ。
「アーレント、犠牲者が一人とは僥倖であった。令嬢一人の犠牲は悲しいものだが、落ち込んでも始まらない」
(俺の言葉は無視か。……というか勝手に殺すな)
「おお、そうだ。我が娘と婚姻を──」
「なに解釈違いなこと言ってんだ?」
「ひっ」
怒りで国王の胸ぐらを掴んでいた。「これで娘と結婚するのも」とかなんとか言い出したのが悪い。しかも第一王女がそれに便乗して「式を挙げましょう」だの、「婚約解消などはすぐにできますわ。相手だって貴方の幸せを願って」だの言い切ったのが更に悪い。俺に殺されてもしょうがないと思う。
「アーレント」
「父上、間違っているとは思っていません」
「いいから、その手を離せ」
「……はい」
父は静かに告げた。その圧は凄まじく、渋々手を離す。周囲は不敬な態度に息子を諫めた──と思ったようだが、それは違う。俺以上にディアナを貶める発言は両親の逆鱗に触れたのだ。
「ごほっごほっ、辺境伯。貴様の息子はどのような教育をしている!?」
「はははっ! 未来の娘をそこまで馬鹿にするのですから当然の反応でしょう。今、胸ぐらを掴んで反撃に出ていなかったら腕を切り落としていたところでした!」
(そう父上はディアナを実の娘のように大切にしている)
以前、「嫁にやりたくない」と言い出し、「いやウチに嫁ぐのだからね? 俺の奥さんになるんだから!」と叫び返したら、そこからは「じゃあ結婚式に父親役をする」とかの発言で、騎士長が「いやそれは自分の役目なんですが?」とこれまたディアナを大事にしている騎士長が反論して決闘したエピソードは、辺境地はもちろん社交界でも有名だ。それを王が知らないはずもないと言うのに。
「へ、辺境伯!?」
「ああ、もう! こんなことになるのなら、やっぱりわたくしも領地に残っていれば良かったわ! あの子が大丈夫だからと言うから!」
「夫人までっ」
「国王よ、我らバシュラール領は帝国と同盟を結び独立する。命を賭してこの国を守ろうとした者に対しての侮辱、ひいては辺境地に残った我が義娘を軽んじた発言を断じて許しはしない!」
(いや、まだ嫁じゃない。嫁にしたいけれど、すぐに籍を入れて、妻にしたいけれど!)
「ま、待て。そんな勝手が許されるとでも思っているのか!?」
両親があまりにも激高したせいで、俺の怒りは不完全燃焼してしまう。いや面倒な王家とのやり方は両親に丸投げして、一刻も早くディアナの傍に向かう。
「アーレント様」
第一王女が駆け付けようとしてきたので睨み付けたら、卒倒したのでそのまま放置して王の間を飛び出した。
本当は真っ先に愛馬に乗って駆け付けたかったのに、黒竜の血を浴びた時の呪いと毒の回復に時間が掛かったのもある。王家が追撃を恐れて情報を遮断し、王命で王都から出ることが出来ないように画策していたのも──いや言い訳だ。
「腕とか足とかもがれようと駆け付けるべきだった!」
「いや迷惑だろうが」
全速力で馬を走らせる中、従者のロイドの言葉が突き刺さる。
「騎士長がディアナを抱きかかえて結晶化していたら、俺、もぎる自信しか無い」
「そんな自信は捨てろ。というか相変わらず斜め上の考えが怖い!」
「だって俺が婚約者なんだぞ。絶対に許せない──っ、やっぱり王都を殲滅して、憂いを立ってから向かうべきだったか」
「こわいこわいこわい」
怖いのはディアナの評価だ。ここで一気に俺への評価が下がったらと思ったら怖すぎる。
「うっ……ディアナが今回のことで俺を捨てたらどうしよう。やっと異性として意識してくれたって言うのに……。なによりディアナの洗練された戦いを、一番近くで見ることができないなんて……くっ。ああ、護衛騎士や騎士長が背を預けて戦っていたらどうしよう。それで騎士長の器のでかさにディアナが惚れちゃったら……あああああああ」
「相変わらず情緒がアレだな!」
「よし決めた。騎士長と護衛騎士を削ぐ」
「いや削ぐなよ!? 怖いな」
三つしか違わないのに、俺が一緒になってほしいと我が儘を言って、結婚だって待ってもらって──。やっと結婚指輪とウエディングドレスを準備して、式の予定やら招待状の準備をしていた矢先にこれだ。
***
「ディアナ!!」
辺境地で雪が積もり始めた頃、俺は結晶化したディアナを見つけることができた。結晶化してもディアナは美しいままだった。そのフォルムは巨匠の作り上げた石像よりも神々しく、神話の一ページのように幻想的な領域に思えた。
「ああ、ディアナ」
そっと頬に触れようとして、ロイドに全力で止められた。
「すとーーーーっぷ!!」
「なんだよ」
「逆ギレ止めろ、めちゃくちゃ怖いから!」
抱きついて止めるとブチ切れた顔でロイドを睨み付ける。だが従者としての役割を全うすべく、睨み返した。
「──ってか、ディアナ嬢に何する気だよ!?」
「キスだ」
「は」
「この手の場合はキスで魔法が解除されると書いてあった。それなら婚約者である俺がしても、いやむしろ俺しか許さん」
とにかく今はディアナ成分が足りなくて、死にそうなのだ。抱きしめるのは確かに危ない。だからこそのキスという考えに至ったというのに、まさかロイドに邪魔されるとは思わなかった。
「まさか、お前が内通者……」
「いや、その発想おかしいだろう! だいたいキスで目覚めるとか都合の良い展開なんかあるわけないだろうが! 魔法による結晶化は脆いんだって聞いているだろう!?」
「ぐっ……」
正論過ぎて、その場に崩れ落ちた。
「内通者と言って悪かった」
「いやそこは素直に謝るのかよ。……いいけど」
結晶化した状態というのは石像よりも厄介らしい。たしかにうっかり力を入れすぎて結晶を砕いたら目も当てられないし、俺の心が死ぬ。確実に。
ふと、ディアナから少し離れた場所に見習い騎士のジョンがいたことに気付く。そして驚愕したような、強張った顔をしているのを見て色々察した。
「よし、コイツはこのまま砕いて殺しておこう」
「待て待て待て待て! 勝手に自己完結して殺そうとするな! もうすぐ騎士長の自動治癒と結界が解けて、意識が戻るはずだろうし!」
「それを待たずとも、この状況を見れば分かるだろう」
「すまん、全然わからん」
「この騎士見習いが間者で油断しまくった騎士長が刺され、その刺された騎士長に気をとられてしまった俺の嫁が、このクソ野郎に刺されて、さらに結界が綻んでいる状態で選択を迫られた。それらを鑑みて、この辺り一帯を結晶化することで自分の傷と結界の修復を同時に行った。騎士長はそのことを知らせるために俺の嫁は、結界と自動治癒魔法を掛けていた──ってことだろう。子どもでも分かる!!」
「わかるか! そしてサラッとディアナ嬢を嫁扱いするな。まだ婚約者だからな!」
「くっ」
こんなことなら王都に行く前に、結婚届を教会に提出しておけばよかった。いやいざという時のために書類にサインはしてある。今すぐに提出したら──。
「怖いこと考えてないで仕事しますよ!」
「きゅい!」
「「ん??」」
唐突な鳴き声に俺とロイドが振り返ると、蜂蜜色のウサギが二足歩行をしてなんだか憤慨していた。ぷりぷり怒っている姿を見て、涙が溢れた。
「ディアナ!」
「きゅ」
「え!?」
「ディアナ! 魂の一部は別の器に入れていたんだね!」
ディアナの魂の一部であるウサギを抱きしめると、ポンポンと頭を撫でてくる。「きゅい」と額にキスをしたのち、ウサギは俺の腕の中から消えて騎士長の元へ走り出した。
「きゅいい!」
後は頼んだわ。と言うように片手を上げて挨拶をする。
待って。そう言おうとするもウサギは光となって、騎士長の結界を解除して同時に残った魔力で高位治癒魔法が展開。
自分の回復よりも他人を優先する。騎士長だってのがすごく、とっても、かなり腹立たしいが、それがディアナだ。
(……いいよ、それでも。自分を犠牲にして命を投げ出すような頃よりはずっといい。生き残ろうとしてくれた。俺がディアナの生きたいという理由になれたのなら、幾らでも待つ。そして同じようなことが無いように、強くなるよ。君が目覚めるまで)
***
鐘の音が聞こえた。祝福の教会の鐘だ。
そこで結婚式を挙げている人たちがいた。見覚えのあるメンツで、その中に辺境伯や夫人がいる。花嫁はベールで顔が見えないが、幸せそうだ。新郎の笑顔を見て口元が緩む。
(そう、なったのね。でもそれならよかった)
意識が引っ張り上げられ──夢が覚める。
「んん……?」
見知らぬ天井に、ふかふかのベッド。とても幸せな長い夢を見ていた気がする。ぬくぬくで幸せだと思った瞬間、その隣に寝ている男性に固まった。しかも上半身が裸だ。余計に困惑する。
(誰、え、ほんと誰!??)
背中を向けているので顔が見えないが、引き締まった身体は騎士だろうか。がっちりとして年齢的には二十歳過ぎの男性だ。アーレント様たちの一族はみんな黒髪だが、この男性は白髪だし、がたい的にも騎士長に引けを取らない。
夢の続きだろうか。いやどう考えても違う。
(なんで知らない人と同衾しているの!??)
結晶化が解除された後、私を保護してくれた人だろうか。だとしてもなんで一緒のベッドに眠っているのか全く訳が分からない。そっとベッドから抜け出して、部屋を出るとそこは辺境伯の屋敷と似通っていた。
(ここって辺境伯邸……よね? なんだか違和感が……)
「ああ! お目覚めになられましたか、ディアナ嬢!」
「執事長!?」
髪が更に白くなって、しわも増えているが間違いなく執事長だった。見知った顔を見た瞬間、安堵して座り込んでしまう。
「まだ結晶化が解けて数日しか経っておりません。アーレント様を呼んで参りますので──」
「駄目」
「え?」
(婚約者がいるというのに、不貞を……っ。辺境伯や夫人に顔向けできない。なによりアーレント様を傷つけてしまうわ!)
もしかしたら私が眠っている間にアーレント様は別の方と結婚して、不要になった私には別の騎士をあてがうように命じたとしたら。
(いいえ、アーレント様はそんな不義理なことはしないわ! でもそれならあの状況は一体??)
ぐるぐると思考がまとまらない中、見覚えのある青年が見えた。アーレント様の従者であるロイド様だ。以前よりも大人っぽくなっている。
「お! ディアナ嬢。目が覚めたのか。いやーよかった、よか」
「ロイド様! 今すぐにその腰に携えている剣を貸していただけないでしょうか!?」
「ふぁ!? え、え、何いきなり!」
「目が覚めたら見知らぬ殿方と同衾していたようでして、私は身に覚えはありませんがこの責任は取るべきだと思うのです。腹を切って詫びなければアーレント様や辺境伯様たちに申し訳が立たず」
「こわいこわいこわい! なんでそう言う所は四年前に目覚めた騎士長と同じな感じなのかなぁ。あれかな、遠縁でも同じ反応は正直怖すぎる!! 騎士長、ディアナ嬢が目覚めるまで結婚を延期するとかいっているんで、間違っても死のうなんて考えないでください」
ロイド様から剣をお借りしようとするけれど渡して貰えなかった。ぐすん。でも騎士長が私と同じ口上だったのはなんだか嬉しい。
それに私が夢で見た養父──騎士長が結婚とは嬉しい報告だ。
(──なんて浸っている場合ではないわ! 今はそれよりも自分の不始末を何とかしなきゃ!)
剣がなければ作れば良い。そう思い立った私は自分が魔法使いだったことをすっかり失念していた。
「私ったら、魔法で剣を作ればよかったわね」
「それ絶対に駄目なやつ!」
「そうでございます!」
「……ディアナ?」
「!?」
低い声で私を呼ぶ。
背丈が高い美丈夫がバスローブ姿で廊下に佇んでいた。しかも白髪はとても綺麗で、どこか辺境伯の若い頃に似ている。
「ディアナが起きている。動いてる」
「え?」
「ディアナ。ああ、ディアナ、ディアナ!!」
「ひゃ!?」
気付けば彼の腕の中に居て名前を呼ばれている。見えないほど速かった。私を抱きしめる温もりは温かくて、驚くほど優しい。
(速っ、そして近い!)
「目が覚めたらベッドに居なくて、俺、心臓が止まるかと思った。どうして起こしてくれなかったんだ?」
石榴色の瞳が私を射貫く。その言葉で彼が誰かが気付いた。成長して大人になって──こうも変わるだろうか。
「……アーレント様?」
「そうだよ、ディアナ。君が目覚めるまで領地を何とかしなきゃって、独立して色々あったけれど」
(え? 独立?)
「王国は周辺国と手を組んで攻めようと画策して」
(ええ!?)
「教会が先にブチ切れて結界を書き換えたおかげで、王都は瞬時に魔物の襲撃に遭って戦争どころではなくなったんだ」
(怖っ! 教会ってあのほわほわした法王様を怒らせたってこと?)
「一年も経たずに魔物襲撃に対応できなくなって、独立国に助けを求めてきてね」
(戦争を仕掛けようとした国に頼るって……)
「当時王家だった奴らを市井に落として、西の要塞都市から一生出ないことを条件に、王都を奪還したのが去年」
「去年!?」
「そう。で、父上と母上が今は王都で魔物の掃討を請け負っている」
「お二人が……」
まるで私が大魔法を使ったときのよう。あの時の襲撃を思い出して言葉に詰まる私に、アーレント様は抱きしめる力を強めた。その温もりと逞しい胸板に衝撃を受けた。
記憶の中にいるアーレント様とは全く別。大人の男の人だと嫌でも意識させられる。
「そんな顔をしてないで。あの時とは全く違うから」
「アーレント様」
「もう怖がることも、嫌なことも全部終わらせたから、安心してうちに嫁いでほしい」
コツンと額を合わせて顔をグッと近づけてくる。視界いっぱいに大人びたアーレント様がいる。
最初は泣き虫で、一生懸命な男の子だった。
小さな次期領主様。
明るくて懐いた弟であり、恩人であり、仕えたいと思う男の子。
私を臣下でも、姉でも、同僚でもなく、一人の女性として見るようになった男の人。幼さが薄れて精悍な顔立ちになって──。
私が意識を失う前に見た最後のアーレント様は、私より少し身長が高かったぐらいだ。でも今は私の体がすっぽりと覆われてしまうほど大人になって、知らない人のよう。それに髪も変わって雰囲気も全然違う。
大人の男の人として意識した瞬間、顔から火が噴くほど熱くなる。なにより執事長やロイド様が──。
(──って、いない!?)
「ディアナ。よそ見しないで」
アーレント様は少し屈んで頬にキスをする。次は鼻で唇に触れる。ちゅ、ちゅっと軽いキスから深いものになって、激甘なキスに翻弄されてしまう。
(ひゃああああ……! し、心臓が保たないわ)
「答えを聞かせて」
「わ、私も答え合わせしたいことがあるわ」
「なに?」
あの時、どうして婚約解消の連絡を入れたのか。そう口にしようとして言葉を呑み込んだ。彼がそれを望んでいないことは今目の前の姿を見て分かる。
「やっぱり婚約解消はアーレント様の意思じゃなかったってことよね」
「当たり前だよ。あのクソ王女とその取り巻きが画策していた。もう二度とディアナには関わることはないから、安心して」
「あ、はい」
目が笑ってなかった。これ以上深く聞いたら駄目な奴だと察する。よく見ると彼自身、沢山の傷跡があった。私が結晶化した後も戦い続けてきたのだろう。髪だってそうだ。ふと彼の頬に手を当てた。
「アーレント様。すっかり大人になってしまいましたね」
「ええ、今は俺のほうが年上ですよ?」
そう嬉しそうに笑った彼に私も微笑む。
その笑顔に幼い彼の面影を見た気がした。とはいえ騎士長並の背丈に筋骨隆々な姿に心臓が早鐘を打つ。
「お帰りなさい。アーレント様」
「うん、ただいま。今度こそ結婚式を挙げよう。ね」
どこまでも甘々な声を耳元で囁く。そんな高等テクニックをどこで覚えてきたのか。その瞳は「逃げないよね?」と訴えかけている。
逃げられる気がしない。
「はい」
コツンと額をくっつけて答えると、彼は満足そうに笑った。この日、私の道を照らしてくれた恩人で、一生仕えようと思っていた人は誰よりも愛おしくて大事な旦那様になったのだった。
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