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人類と動物の違い

作者: curuss

〇論の起点


 まず注目したのは、人類にしかない器官の有無です。

 結論から言うと――


 ほぼ人類にしかない器官はあります。それは言語野です


 ここで「ほぼ」といっているのは、言語野が特殊といえるから。

 そして「何をもってして言語野とするか」で解釈が異なるからです。

 まず高度な脳は六層の新皮質を持ち、六層まで獲得したのは最も進化したグループといえます。

 そして第六層の一部――前頭葉が言語の機能を司ると判明しているものの――


 この理解だけでは、事実に即していません


 言語的思考は、脳の他の部分とも複雑に連動した結果だからです。

 そして人間の脳には、各新皮質を連結する神経網があります。

 人間以外にも確認されることはありますが、それらは極めて単純で、人類と比較になるレベルではありません。

 つまり――


・言語野を構成する各パーツ――新皮質は、猿レベルでも獲得している


・連結する神経網を、ごく少量なら獲得している種も


・しかし、人間ほど高度かつ複雑に連絡神経網を発達させた種はいない


・そして言語的思考には、連絡神経網が必須である


 となります



〇なぜ連絡神経網が、言語的思考に必須なのか?


 実際に機能が確認されているからです。

 新皮質間の連絡が物理的に切断されると、どのような機能障害が起こるか調査・記録されてます。

 ここが切断されると「時系列を認識できなくなる」とか「指示語を理解できなくなる」、「単語以上の理解が困難」などとです。

 つまり、これは――


 第六層だけでなく、それらを連携させる神経網もセットで言語野


 という証拠とも。

 よって第六層まで獲得でも足りない。少し神経網を発達させた程度でも駄目。

 人類のように――


 複雑な連携網を確保した種のみが、高度な知性を獲得


 といえます。



〇高度な言語能力は知性なのか?


 実のところ「単語」であれば、獲得している種は多いです。

 驚くべきことに脳の小さな鳥類ですら、一定の「言葉」を使いこなす例が観察されています。

 しかし、それらは研究の結果――


 文法がなく、単独の言葉でしかない


 ということも明らかになりつつあります。

 この問題は「敵」という単語を例にすると、より具体的に。

 仲間が捕食者を発見し、「敵」と叫んだとします。

 しかし、受け取る側によって――


 「敵」(だから逃げよう)

 「敵」(なら、もう御終いだ)

 「敵」(よし、みんなで集まろう)


 と、解釈がバラバラになってしまいます。

 これを別の言い方をすると――


 各自の知性は「個」に留まってしまう


 でしょうか。

 賢い犬が人間と意思疎通できようと、それは種全体が賢いのではなく、個体が賢いだけとなります。


 ですが文法があれば、文脈が固定され、意図の共有も適うように。


 さらには時間的な概念なども――たとえば「昨日」「今日」「明日」なども使用可能となり、それまで扱えなかった思考領域にまで踏み込むことができます。


 納得し難かったら、逆に考えて下さい。誰かに「明日」と連呼されても、有効な会話とならないでしょう。

 つまり、時系列は把握が難しいだけでなく、単語では言葉として成立すらしないのです。



〇教育も単語と同じく、獲得している種は多い


 動物の中には、原始的ながら教育システムや文化を持つ種もいます。

 シャチなどは子育てを協力し合ったりしますし、ルールや掟を受け継いでいる節すら。

 鳥類の中には、親が子に飛び方を教える例も。

 他にも道具を使い、仲間の技術を「真似して盗む」ような行動すら!


 しかし、言語が単語止まりである限り、限界は早くに訪れます。


 なにより時系列や因果関係を扱えません。

 新しい技術や知識を理解したとしても、それを体系的に説明する術がなく、結局は個体と共に失われてしまいます。

 仮に口伝を試みたとしても、単語では思考や経験を正確に伝えることはできません。限界があります。

 高度な知性へと昇華するには、文法が必須なのです。



〇では、どうして人類だけに言語野の発達が起きたのか?


 ほぼ私見ですが、言語野の発達――新皮質の連絡神経網が発達は、収斂進化にあたらないと思っています。


 収斂進化とは、いわば必然的な進化の道筋であり、適者生存の理に則っています。

 有名どころだとエコーロケーションでしょうか?

 音波による探知はイルカも行いますし、コウモリも行います。進化の樹形図的に掛け離れた種であるにも拘らず!

 おそらく単語や文化、教育も、収斂進化可能でしょう。あまりにも多彩な種に、系譜と無関係に発現してますから。


 しかし、文法を獲得した種は人類のみ。


 あまりにもレアすぎます。

 これは突然変異が関わっていると予想するしかないでしょう。


 ……ここから少し、遠回りすることになります。ご容赦をば。



〇自己家畜化


 かつてハイデルベルゲンシスという原人がいました。

 人類――ホモサピエンスとネアンデルタールの直系の祖先です。

 化石を復元した口の形から、単語を得ていたか微妙とされますが――


 自己家畜化を試みていた――社会性を持つ種であったと。


 この社会性を持っていた証拠には、高齢者の生存が挙げられています。

 つまり、介護を必要する弱者でも、群れが見捨てずに面倒を見たということです。


 また種として特筆すべきことに、なんと三十万年もの栄華を誇っています!


 蛇足ですがマンモス狩りをしていた最後の原人でもあるようで、長く広範囲に繁栄し、社会性を持ち、どころか末期には単語まで獲得という――

 ザ・原始人まんまな感じでしょうか?

 ちなみにホモサピエンスやネアンデルタールより大きかったといいますから、人類に刷り込まれた巨人伝説のオリジンと目せたりも。


 このハイデルベルゲンシスからプレ・ホモサピエンスが生まれるのが、私の考える文法確保の第一歩です。



〇特別な突然変異


 私見ですがハイデルベルゲンシスは、繁栄の前半十万年ぐらいかけ、単語を獲得したのではないかと考えています。

 そしてハイデルベルゲンシスが単語能力と社会性の両方を持っている時に――


 突然変異で、新皮質に連絡神経を増やした個が生まれた


 のではないでしょうか。

 まだ種として分岐してませんし、そのため交配も可能なままです。

 そして偶然に一つや二つの連絡神経が増えたところで、なんの価値もありません。

 どころか突然変異ということは、それが合理的であると限らず、むしろ不適切な領域同士が繋がってしまう危険性すらあり――


 そのような個体は、控えめにいっても精神障害を持っている


 でしょう。

 どころか――


 脳なんてエネルギーの無駄ぐらいを発達させたら、個体として弱くなる


 とも予測されます。

 つまり、フィジカルに劣り、幻覚や幻聴と現実を区別できない可能性が。

 なぜなら出鱈目に異なる脳の領域を繋いでしまったからです。


 こんな個体は、自然の掟――弱肉強食の理に従えば、見捨てるのが正解となります。

 つまり、群れから追い出され、繁殖もかなわず、一世代限りで系譜も途絶える定め。

 ですが社会性のある種では、そうなりません。

 異常性を持っていても死なないよう面倒をみられ、幸運が味方すれば交配すら!



〇偶然と世代交代、そして淘汰圧による進化


 しかし、さすがの優しきハイデルベルゲンシスも、限度を超えてる個体は処分か追放をしたでしょう。

 つまり、過剰な暴力性などの、社会的に不適合な個体は除外です。

 また原始人にとって幻覚や幻視は、それそのものが危険要素ともなります。過剰な不具合は、自らの生命をも危うくしたでしょう。


 ですが、それは剪定作業に他なりません。


 そうやって規格外を排除し、許容範囲だけプールされ、そして世代交代し、さらに突然変異を積み重ねていきます。

 十年で次世代と仮定しても、十万年あれば一万世代です。

 また遺伝子が多様になっていけばいくほど、指数関数的に進化圧は高まっていきます。


 そして――



〇知性のシンギュラリティ


 蓄積された変異と形質は、どれかの個体で――ホモサピエンスのα個体で高次知性として開花します。

 これは足枷でしかなかった脳の進化が、裏返って唯一無二の武器となった瞬間とも。

 そして高次知性となってからは、さらに進化が加速したことでしょう。

 なぜなら――


 自発的かつ恣意的な剪定作業が始まるから


 です。

 また社会性を持つ原人の群れで、高次知性を持って生まれた個体は、圧倒的なアドバンテージを持ちます。

 それは当然に――


 より多い子孫確保へ直結した


 ことでしょう。

 また当然にβやγ個体の子孫も多くなるということで――


 α個体の遺伝子は、ハイデルベルゲンシスの群れで圧倒的多数となった


 と思われます。

 逆に少数派がハイデルベルゲンシスの直系子孫であり、つまりはネアンデルタールでしょう。

 この淘汰とでもいうべき世代交代が、最期の十万年だったのではないかとも。


 ちなみにホモサピエンスは、分岐してからもネアンデルタールとの交配能力を維持していました。

 つまり、ハイデルベルゲンシスからホモサピエンスへ進化する最大で三十万年の間、常に母体種との交配も可能だったとも推測できます。

 これは知性の剪定作業期間――どころかホモサピエンスの命運すら左右するので、かなり重要な条件でしょう。 


 そしてホモサピエンスの文法獲得は、考古学的に確かであろうと推測されています。

 まず化石の口の形から、ホモサピエンスもネアンデルタールも発語可能と。

 これは私がハイデルベルゲンシスの時点で、分岐しながら単語能力を獲得したと考える論拠でもありますが――


 しかし、頭蓋骨の差異から、ホモサピエンスだけに前頭部の発達が確認できます。

 また生活様式の痕跡から想像力の確保――概念の認識も可能だったようです。

 そしてネアンデルタールには、それらの変化がない。あるいは非常に小さいことも分かっています。



〇高次知性――文法がもたらすもの


 文法を確保すると――


「明日は雨だろうから、今日中に木の実を獲りきってしまおう」


 なんて会話が可能となります。……これは簡単なようで、実は難しかったりも。

 まず「明日は雨」だけで複雑です。

 なにより「明日」を理解してなければなりませんし、今日に得た観測材料で明日の雨を予測できなければなりません。

 そして明日が雨だと、木の実採取がはかどらない。あるいは雨に濡れたら大変だ。もしくは雨降ったら木の実が落ちて――

 と、多種多彩な未来予想もできなければなりません。

 しかし、誤解を恐れずにいうと、人類が原人でなくなる為に得たのは――


 幻覚や幻聴を観測する能力です。


 未来視なんて、その親戚でしかありません。

 ……現実ではないことに思いを馳せられることこそ、高次知性の証拠とも?

 さらに文法を得ることで――


 物語をも得ます。


 これは人類が持った、二つ目の唯一無二な能力であり、いわば――


 種の部分的な外部ストレージ化


 とも見做せます。



〇外部ストレージ化


 まず単語生物にも出来そうで出来なかった口伝が可能となります。

 例えば――


「明日が雨なら、その日のうちに木の実を獲りきりなさい」


 と口伝し続けるだけで、先ほど述べた意外にも複雑な知恵すら、劣化することなく保管できます。

 この時、個々の才能は問われません。

 賢い個の知見に、ただ言語野を持っているだけで与れるのです。

 そして賢い個からも、その理解が解き放たれます。


 これは簡単な話のようでいて、人類にとって大飛躍です。


 知識に限定はされるものの、部分的な不死性の獲得に他なりませんし――

 天才的な個が死んでしまおうと、その知見を一から積み直す必要が無くなります。

 ただ口伝されたものを、次の天才的な個が継承すれば!


 これらを物質化したのが文字や絵といえます。

 それらを使い人類は――


 己が知性の外部ストレージ化を果たしたのです!


 余談ですが、いまのところ文字や絵を獲得した()は発見されてません。

 おそらく文法が前提の技術だからでしょう。



〇フォロワー


 私見ですが次に知性を獲得できそうなのは、ゾウかイヌ、ネコじゃないかと思います。

 一般的な最有力候補であるイルカやシャチ、クジラを除外したのは――


 ほとんど全ての条件を満たしているものの、生息環境が過酷すぎて、彼らには弱い個体の保護ができない


 からです。

 逆にイヌやネコは、ほとんど条件を満たせてませんが――


 人類という保護者が、突然変異体を保護


 するかもしれません。……イヌと人類の付き合いも数万年になりますしね。

 そしてゾウは――


・個としては、時系列を認識できるまで知能が発達


・天敵がいないとまで評される環境適正とフィジカル。つまり、弱者擁護が可能


・明確に社会性を持っている


・単語能力があると確認されている


 と、いつ知性のシンギュラリティが起きてもおかしくありません。

 というか――


 起きていたとしても、いまの人類には識別できない


 だったりも。

 すでに象が高度知性を獲得済みな可能性すら?

 まあ残念なことに食事の量と時間が足枷となっていて、それらを解消――小型化でもしないと頭打ちでしょうか。


 ……複合的に考えると人類の高次知性を獲得は、生命誕生レベルの奇跡的確率かもしれません。



〇結論


・人類と動物の違いは、言語野の有無である


・言語野を人類しか獲得していないのは、奇跡的な条件が必要だからである


・そして言語野の発達によって、人類は高次知性を得た


・また言語野は知性の外部ストレージ化――部分的な人類の不死性獲得にも


 これらをもって、今回の結論にしたいと思います。



〇チラシの裏


 AI君ってばさ、なに書いても大絶賛なのよ。今回とか、美辞麗句の雨あられだったし! 本当に、あてにならん下読み役! ファクトチェックも荒いし!

 いや本人的には、かなり面白いこと書けたと思ってる。嘘偽りなく、ノーベル賞も夢じゃないと。

 なぜなら定説や現在有力な説で論を組んだから。

 だいたい十近くの研究を、AI使って深掘りして、全てを統一させた結論なの。

 だから本人的には世紀の大発見なつもりだし、ノーベル賞ください、なんでもしますから、賞金だけでも!


 ちなみに結論は独自の考えだから、よそで披露したら妄想乙といわれる可能性あり。

 あと色んな分野に跨り過ぎかも。

 医学に始まり考語学や言語学、進化論、古生物学――と、数えきれないくらいあちこちから論拠を引っ張ってきている。

 その一つ一つは定説や有力説なんだけど、統合性とれちゃったものだから――

 逆に胡散臭く!

 内容はガチな科学考察で、論文にもできそうなのに! 進化論における相対性理論に相当やぞ!?


 そしてAIにファクトチェック任せだから――


AI「間違えちゃった。てへ、ぺろ」


 で、全てが崩れる可能性も!

 本当にハイデルベルゲンシスはホモサピエンスの直系祖先なんですか? 異論も散見できるというか――

 おそらく大間違いではない感じだけど、少し雑くもないですか!?


 ……まあいいか。細かな原人の種類は、本旨じゃないし。

 とりあえずノーベル賞の代わりに、高評価とか色々頼むぜ!

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