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ローファンタジー風恋愛物語、第2話です。
上手くはれているかはわかりませんが、ちょっとした伏線回になっております。
やっとテーマを全面に出すことができました。
春チャレンジ2025に向けて学校をテーマに書いたものになっております。
今のところ上中下とエピローグで完結させる予定です。
作者自身まだ学生ですので、至らぬ点も多々あるかと思いますが、何卒よろしくお願いします。
リクエスト等感想で受け付けております。
白い雲、爽やかな風、真っ青な空。
有り体にいうならそんなところ。
廊下の窓から見える旧校舎が日光を反射して、壁が白く輝いている。
普通なら気持ちのいい朝なのだが、今の俺はそんなことをかんがえている余裕はなかった。
全ては昨日の帰り際のことだ。
『私、天使なんだよね』
優羽は、あんな冗談をいうやつじゃない。
からかう意図はあったかもしれないけれど。
AAI、なんて意味深な言葉も頂戴したし。
ローマ字読みにすると、ああい、になるけど、それでは意味が通らない。
「AAI……えーえーあい………」
口の中で呟いていると、前を歩いていた女子生徒が急に振り返った。
すごい剣幕だ。
踵を鳴らして近寄ってくる彼女に狼狽していると、女子生徒は俺の胸ぐらを掴み上げた。
ツヤツヤの金髪が揺れる。
見目に合わない暴挙に出た彼女に、俺は思わず頬を引き攣らせた。
「あんた、AAIのこと知ってるの!?何者よ!」
俺を宿直室へ引っ張っていった彼女は、髪を振り乱して叫ぶ。
顔の引き攣りを加速させた俺は、努めて冷静に返した。
「ここ、いいのか?」
簡素な部屋の中はホコリをかぶっていて、とてもじゃないが人が泊まる環境には思えない。
「いいのよ、もう使われていないのだから」
折りたたみベッドの上に腰掛けた彼女は、改めて口を開いた。
「急にごめんなさいね。私は2年の宮愛花。あなたは?」
「風見旭です。えと、なんでこんなことを?」
「あなたがAAI、なんて呟くからよ。関係者には見えないけれど、なんでそんな言葉を知っているの?」
関係者、とは。
一体なんの関係者なんだよ。
だいたいこんなことになったのも優羽のせいだ。
心のなかでここにいない相手に悪態をつく。
俺が返事をしないことが不満なのか、女子生徒、改め宮先輩はさらに俺を問い詰めた。
「どこで、その言葉を知ったの?」
「友達から聞いたんですよ」
「ハァ!?」
綺麗な顔を精一杯歪ませた宮先輩は、深くため息をつく。
その顔のまま立ち上がると、俺に詰め寄った。
「いい?分かっていないようだけど、AAIのことは人に知らせてはいけないの。あなたのオトモダチは、そのしきたりを破ったのよ。それがどういうことか分かる?」
分かるはずもないだろう。
そもそもAAIですらなんのことか分かっていないのだ。
「いや………」
「あら、そう。じゃああなたに一つだけ忠告。あなたのオトモダチ、いなくなるかもしれないわよ」
「待ってください、AAIって、どういう……」
何もなかったかのように宿直室のドアノブを回した宮先輩は、俺の問いかけにも応じずに部屋を出ていった。
『いなくなるかもしれないわよ』
その一分だけがやけに頭の中に響いて、なんだか気持ち悪かった。
廊下にでると、もう始業の時間が近いらしい、多くの生徒が歩いている。
その中には優羽の姿が。
いつもと変わらぬ様子で、アイスの棒をくわえながら歩いている。
彼女が、いなくなる。
気がついたら一緒にいた、と言うくらいの幼馴染なのだ。
いなくなることなんて、想像もできなかった。
「どうしろっていうんだよ……」
気持ちのいい朝の廊下の中、俺は頭をかかえた。
閲覧ありがとうございました。