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汚れた世界で見つけた答え

人は生まれる環境を選べません。それでも、自分の力で未来を切り開くことはできます。この作品では、そんな主人公の成長を描いています。どうか最後までお付き合いください。

人は生まれる環境を選べない。俺が生まれ育ったのは、まさに「どうしようもない環境」だった。


父は元暴力団員、母は水商売。「凌央りお」と名乗る俺に向けられる視線は、いつも冷たかった。誰かの物がなくなれば真っ先に疑われ、悪質ないたずらが起これば「どうせあの子がやったんでしょ」と決めつけられる。

理不尽――それが俺の日常だった。


「凌央とは友達になっちゃダメよ」「父親がアレだから、将来ろくでもないことをするわよ」

親の罪を背負わされ、幼い俺はいじめに耐える日々。反撃すれば、すぐにこう言われる。

「ほら、やっぱり暴力団の子は危ないわね」「親と同じだわ」

どんなに殴られても耐え続けたのは、そんな言葉を浴びたくなかったからだ。


俺は「俺」として見てもらったことなど一度もない。誰もが見ているのは、暴力団員だった父の影だけだった。守るどころか母を水商売に追い込み、暴力と威圧で支配する父の存在が、何よりも嫌いだった。


小学6年生の時、両親が不法な仕事で捕まり、俺の生活は一変した。母方の祖母の家に引き取られ、そこで暮らすことになったのだ。祖母はいつも優しく、俺を温かく迎え入れてくれた。それでも――心のどこかで、深い孤独感が消えることはなかった。


「優しい人がそばにいるのに、どうしてこんなに孤独なんだろう」

そんな思いが、心に澱のように積もっていった。周囲の冷たい視線や、俺自身が抱える罪悪感が、どうしても消えないのだ。祖母に甘えることもできず、自分の気持ちを誰かに打ち明けるなんて、考えたことすらなかった。何を言っても、きっと「両親のせいだ」「俺が悪い」と思われるだけだろう――そう考えると、相談する気になれなかった。


それでも、自由だけはあった。祖母の家では、父の支配や暴力に怯える必要もなくなり、自分の心の声に耳を傾ける時間が増えた。けれど、その自由はどこか空虚だった。孤独という鎖が、いつも心に絡みついていたからだ。頼れる人もいない中で、俺はただ、自分の内側に壁を作り続けていくしかなかった。


そんな俺の状況は、中学に進んでも変わらなかった。いや、むしろ悪化したと言っていい。いじめはますます陰湿さを増し、日常がさらに苦しいものになっていった。ある日、トイレの床で頭を足で踏みつけられた瞬間、俺の中で何かが切れた。汚く、臭い、最悪な場所で――それまで積み重ねてきた我慢が、完全に限界を超えたのだ。


「美しくあれ」が俺のポリシーだってのに……こんな汚れた世界で踏みつけられて、耐えられるか!

その瞬間、心の奥底で何かが弾けた。これまでの我慢が限界を超え、俺の中に眠っていた強さが目覚めたのだ。


「おい、てめえら。やっていいことと悪いことがあんだよ!」鋭い目つきでいじめっ子たちを睨みつけ、力強く立ち上がった。その姿に圧倒された彼らは、一瞬たじろいだ。


「なんだよ、お前。急に強気になりやがって!」いじめっ子の一人が虚勢を張るが、俺の決意は揺るがない。


「お前らの顔も名前も――俺は一生忘れないからな」

その言葉には、これまでの苦しみと怒り、そして新たな決意が込められていた。


人は、自分がしたことを忘れる。いじめた側は笑い話のように過去を語るか、やがて忘れる。だが、いじめられた側は違う。笑い声、怒鳴り声、その時の光景――全てが鮮明に残り続ける。俺は死ぬまで、この記憶を抱えながら生きるだろう。


だからこそ、俺は変わる。この理不尽な世界で、俺自身の強さで立ち向かうことを選んだ。そして、同じように苦しむ人々を救うための道を歩み始める。


汚れた世界で見つけた答え――それは、自分自身の強さと、他者を守る勇気だった。



最後までお読みいただきありがとうございます!

今回の話では、凌央が自分の強さに目覚め、理不尽な世界に立ち向かう決意を描きました。彼の成長の始まりとも言えるエピソードです。いじめや偏見に苦しむ中で「汚れた世界でも美しく生きる」というテーマを感じ取っていただけたなら幸いです。


次回は、転校生・紗奈が登場します。清楚でおとなしい外見の紗奈ですが、その裏には彼女の家庭環境や性格が色濃く影響しています。白黒はっきりした彼女の性格が、学校の空気をどう変えるのか。そして、彼女がいじめに立ち向かう姿に、凌央がどのように心を動かされるのか――。


紗奈との出会いが、凌央にとってどんな転機になるのか。

ぜひ次回もお楽しみに!

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